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表立って載せるほどではない小噺と、あとがき。 その他キャラ設定などなど、徒然なるままに書き連ねるページ。 

病院(小噺)

 ベッドの横に置いたいすに、前後ろ逆さまに座りぼけっと外を見ていた少年は、毛布の固まりから聞こえてきたうめき声に視線をそちらに移した。
 毛布の固まりからひょこっと顔をのぞかせた少女は、寝起き特有のどこをみているのかわからない視線で天井あたりを見つめる。
「おそよう」
 少年言葉に視線を移し、
「あ~、おそよう」
 同じように返事を返した。
「どうよ?」
 少女の前髪をかきあげ、額に手を置く。
「さがったみたいだな」
 わずかに安堵の含んだ声でそういい、しかし次の瞬間には意地悪く笑っていた。
「夏風邪は馬鹿がひく」
「馬鹿言うな」
 夏風邪をひいて熱をだしていた少女はむぅっとふくれた。
「もうちょっと、寝れ」
「……そういわれてもねぇ」
 時計を見る。今の時刻は四時だから、かれこれ五時間近く眠っていたことになる。寝れない。
「何かお話して?」
「ガキか、おまえは」
 上目遣いでいった少女の言葉を、少年は鼻で笑った。
「ひどっ!彼女に対してその仕打ちはどうなのよっ!」
 少年は軽くため息をつき、
「まぁ、暇だからな」
 話し始めた。

 *

 恋人が病気で入院した少年がいたんだ。ちょうど、俺らと同じくらい。少年は、毎日毎日病室に通っていた。
 ある日、少年が病院に行くと見たことのない女の子がいたんだ。壁に背を預けて、ぼぉっと天井を見てな。
 少年は迷子かと思って、少女に声をかけた。
 少女は驚いたように少年を見て、それから嗤ったんだ。「あなた、あたしが見えるのね」ってな。
 少年は何を当たり前のことを言うんだ? と問いかけた。少女は答えなかった。
 代わりに少女が問いかけたんだ。
「あなたはどうしてここに?」
「恋人の見舞いに」
「そう、あなたの恋人は入院しているのね」
 それから少女は、恋人の部屋番号と名前を言った。
 少年はわずかに驚き、知っているのか? と聞いたんだ。
 少女は淡々と言ったよ。
「知っているわ。あたし、ここにずっといるから」
 それから、少年の前に立って歩き始めた。少年は黙ってついていき、ついた場所は恋人の病室だった。
 病室にはいると、恋人は二人の姿を見て微笑んだ。
「あら、二人一緒だったのね」
「知り合いなのか?」
「ええ」
 恋人は頷き、少し微笑んだんだ。
「でもよかったわ」
 そういって少女の髪に手を伸ばし、まるで子猫にするみたいに撫でた。少女は特にそれをいやがらずに、むしろ甘えているようだった。
「だれも、彼女のことを知らないんですもの。私の幻覚かとおもったわ」
 少年はそのとき、さらりと怖いことを言う、と思ったんだ。
 何せ、恋人は病気の治療のために強い薬を使っていたし、自由を愛する人だったから無機質な真っ白い壁だけを見つめる日々に耐えられるとは少年にも思えなかったんだ。
 少年は、自分には見えるから安心するようにいって、続けて
「きっとみんな、おまえを楽しませようと思っているんだよ」
 そうやってフォローした。
 けれども恋人は少し頬をふくらませた。少年はそこで、恋人が少しやせたことに気づいた。
「だけど、彼女がそれじゃぁかわいそうだわ」
 少女は首を横に振り、言った。
「いいえ、構わないわ。いつものことですもの」
 二人とも、その言葉の意味はわからなかったんだ。

 それからしばらく、少年が見舞いに行くと少女も一緒にいるという日々が続いた。
 その間にも恋人はどんどん弱っていった。
 そして、

 そして、桜が散る日に死んでしまったんだ。

 少年は嘆き悲しんだよ。
 恋人の形見を抱きしめて、ずっと部屋に閉じこもるんだ。
 そして、ついには、いるはずのない人と、つまり誰もいない空間へと話しかけるようになったんだ。
 そこまできて、これはまずいと思ったんだろうね。少年の両親は少年をカウンセラーの元に連れて行った。
 そこでも少年は要領を得ないことばかり言って、カウンセラーを困らせた。
 そしてある日、手に負えないと思ったのか精神科の病院に入院させられた。奇しくもそこは、恋人が入院していた病院だったんだよ。
 もっとも、病棟自体は違っていて同じ敷地にあるというだけなんだけどな。
 それでも少年は、空中へと話し続けていた。

 少女は、……例の少女な?
 少女は少年の元に訪れた。
 少年は少女へ言ったんだ。
「あいつの元へ逝かなくちゃ」
 少女は答えた。
「どうして?」
「あいつは、一人に耐えられるような人間じゃない。だから……」
「それはあなたのエゴよ。耐えられないのはあなたの方じゃない?」
「それでも」
 少女は嗤ったんだ。そして、言った。
「そう、なら、止めないわ」

 そして少年は、その日の夕方……、病院の屋上から飛び降りた。
 余談だが、病院側は責任を問われたりと色々大変だったらしい。

 少女は、かつて少年だったものの頭の辺りに立って、謡うように言ったんだ。今まで無口だったのが信じられないくらい、饒舌にな。
「あたしね、あなたと同じ人間ではないのよ。そうね、陳腐な言い方だけれども“死神”というやつ? あたしの姿が見えるのは、もうすぐ死にそうな人だけなのよ。わかる? つまりあなたがあたしに話しかけた時点で、あたしはあなたが死ぬってわかってたの。あなたの恋人もね、あたしの姿が見えたから。かわいそうに」
 かけらもかわいそうとは思っていなさそうな口調で言ったよ。
「そうそう、それからね。あなたは死んで彼女と同じところに逝くっていってたけど、無理よ。この死神の仕事はね、あなたたちのいう“地獄”なのよ。わかる? 昔から言うでしょ、大罪を犯した人間や自殺した人間は地獄に堕ちるって。ね? あなたもあたしたちの仲間入りよ。あなたは彼女の元へ逝くことは出来ず、ただ延々と繰り返される地獄の儀式を繰り返すの。ご愁傷様」
 そこまでいって、少女は眉をひそめた。
「何? あたしがどうしてこれをやっているかって?」
 それはまるで、見えない何かと、さしあたって言うならば少年と会話しているようだったよ。
「自殺じゃないわよ。あなたみたいな小さな人間と一緒にしないで。あたしはね、元々心の臓を患っていてね、入院してのたのよ。あたしは、結構早い段階に自分が死ぬということを知っていたわ。だけれども、あたしだけが死ぬなんて悔しいじゃない? だから、あたしは他の入院患者を殺したの」
 悪びれもせず、少女は続けていた。
「点滴を入れ替えたり、生命維持装置のコードを抜いたり。そうやって次々とね。中にはそう簡単に死なない人もいたけれども。……もっとも、そんなに殺す前にあたしも死んじゃったんだけれども。そして、今に至るというわけ。わかる?」
 少女の耳にいくつかの人の足音が聞こえてきた。
 それは医者と看護婦……今では看護士だったか? 彼らは少女に目もくれず、素通りしていった。一人の看護士は少女の中を通り抜けていったよ。
 少女はそんな彼らと、少年だったものに冷たい視線を一度送った。
 そのままどこかに歩き出して、途中で足をとめて少年だったものに言ったんだ。
「ねぇ、考えたことはないかしら? 日常的に事故や事件は起きて、一日に多くの人が死ぬけれども、それは全て仕組まれたことだと。例えば、地球上に人が増えすぎたと思った神様が、間引きをしていると、思ったことはないかしら?」
 そして、今度こそどこかに向かって歩き出し、その途中で消えたんだよ。

 *

「……それ、病気の彼女に聞かせるにはどうよ?」
 聞き終わって一番、少女は言った。
「そう?」
「……ねぇ、作り話、よね?」
 少女は怖いのか毛布に顔半分を隠して聞いた。
 少年はいすの背に頬杖をつき、窓の外を見るようにして言った。
「さぁ?」
「……さぁって……」

 こんこん、

 ドアをノックする音がして少女の母親が入ってきた。
「ごめんね、病気なのに一人にして。……一人で大丈夫だった?」
 少女の母親は少年に目もくれず入ってきて、あろうことに少年が座っているはずのいすに何のためらいもなく座った。
 少年は頬杖をついたままだった。
 少女は凍り付いたように二人を見比べた。

 少年は、うっすらと嗤った。

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死神の話。まとめたいけど方向性がまとまらないのだった。
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