表立って載せるほどではない小噺と、あとがき。 その他キャラ設定などなど、徒然なるままに書き連ねるページ。 

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結婚しないの?

調律師後日談的な話なので、そのつもりで読んでね。
本編終了から四年後のお話。
  **


「付き合って四年経つんだし、結婚したらどう?」
「……急に呼び出して、何を言うのかと思ったら」
 姉・雅の言葉に、龍一はうんざりと呟いた。日曜日の十時なんていう早い時間に、甘味処に呼びつけられたと思ったらこれだ。
「円さんまで、なんなんですか?」
 雅の隣でわらび餅をのんびり食べている、恋人の姉に問いかけると、
「いや、そうだなーっと思って」
 のんびりとした言葉が返ってきた。
「そうだなーじゃないでしょ」
 呆れた、と龍一の隣の沙耶が呟いた。
 自分の家族と恋人が仲良くしてくれるのは嬉しいし、恋人の家族と自分の家族が仲がいいのも悪くない。だけど、この姉二人が仲良すぎるのは正直迷惑だ。まさか、二人で結婚をそそのかしてくるとは。
「言いたいことはいろいろあるんだが、俺はまだ学生だし」
「卒業したら卒業したで、まだ研修医だし、とか言うんだろ、どうせ」
「……いや、そうだけど」
 だって、事実だし。
「半人前なのに、結婚申し込むなんてありえないだろ」
 あとなんで、こんな話を恋人の前でしなきゃいけないんだよ。呼び出すならせめて、俺だけを呼び出せよ。
「そんなこと言って、あと何年待たせるつもりだ?」
「最短で四年ってところかしらね。あらやだ、沙耶、いくつになっちゃう?」
「今の円姉よりは若いよ?」
「……あんた、いやな子ね」
 勝手に自滅している円はさておいて、
「待たせるってなんだよ」
「待たせてるだろ? 四年制大学なら今年もう社会人なのに」
「そうだけど……」
 本当、この姉は嫌なことばっかり言ってくるな。
「あの、別にあたしは……」
「あら、沙耶。結婚したくないの?」
「そんな話はしてないでしょ?」
「だけど、学生で結婚とか」
「学生でも自分たちで生計を立てられるなら、別に何の問題もないじゃない。ねぇ、沙耶? どうせ、あんた貯金たくさんあるでしょう? 友達もいないし、使う機会もなかったんだから」
「……あるけどね」
 沙耶の言葉に、微妙に顔をしかめてしまう。
「ちょっと」
 それを見咎めて、沙耶が声をかけてくる。
「この手の話で、そういう顔はしないってなったじゃない」
「そうだけど」
 どんなに頑張っても年齢差は縮まらない。お互いに、7年の隙間に卑屈になる瞬間がある。でも、それに関しては不満を言わない、と決めた。
 とはいえ、やっぱり気になるんだけど。
「ごめん」
「そうよー、仕方ないじゃない。この子、高校の時からうちの手伝いしてたし、卒業してすぐに働いてたし、残念ながらうちの仕事って給料良いし」
「ああ、やっぱりいいんだ」
「なり手がいないから」
「なるほど」
 いや、雅が沙耶の仕事、お祓い稼業をすんなり受け入れてくれているのは助かるんだけど、そうじゃなくって。
「だけど」
「ねぇ、龍一くん。年齢と立場が逆だったらどう思った?」
「え?」
「別に結婚にそこまで疑問をもたなかったんじゃない?」
 確かに、自分が年上で稼いでいて、沙耶が年下で学生だったらここまで抵抗しようとは思わなかった、気がする。養えばいいや、と思った。
「それって、男女差別じゃない?」
 下手な男よりも男らしい生き方をしている円に微笑まれ、言葉に詰まる。
「どうなんだ、龍?」
 待たせてる? 男女差別? ああ、もう! 好き勝手いろいろいいやがって!
「帰ろう、沙耶」
 言って立ち上がる。これ以上、ここで話を続ける気にはなれなかった。
 伝票に手を伸ばそうとすると、
「いいわよ」
 円に止められた。
「呼び出したのはこっちだから」
 綺麗に微笑まれ、またいろんな葛藤が胸中をかけめぐったが、
「ごちそうさまです」
 かろうじて、それだけ口にすると、逃げるように店から出る。
「あ、ちょっと、龍一」
 残された沙耶は慌てて立ち上がり、
「えっと、あんまりいじめないであげてください」
 姉二人に向って頭をさげる。
「それじゃあ、また、連絡するね。ごちそうさま」
 荷物を持つと、龍一のあとを追った。
「あらやだ」
 二人が出て行くのを見送った後、
「いじめてるように思われてたみたい」
 心外だわーと円が呟く。
「心配してるのに」
「ねぇ?」
「しかし、龍はいまいちはっきりしないな」
 と雅がぼやいたところで、彼女のケータイが鳴る。
「お、噂の愚弟からだ」
「あら、なぁに?」
「話はわかったけど、仮に納得したところであんたらのいる前でプロポーズとか絶対しないからな! だそうだ」
「あら」
 円は楽しそうに笑うと、
「意外と、うまく刺さったのかしら?」
 同じような顔をした雅と、思った以上にうまくいった首尾に共犯者同士頷きあった。

「龍一」
 店から少し離れたところで、ケータイをいじっていた龍一に声をかける。振り返った彼は、思っていたよりも怒ったような顔をしていなくて安心した。
「ねぇ」
「沙耶は?」
 話しかけようとしたところを遮られる。
「沙耶は、どう思った? さっきの話」
「どうって、あたしは、別に……」
 どっちでもいい、という言葉を言いかけて、慌てて飲み込んだ。その通りなんだけど、これじゃあ誤解を与える。
「ちょっとだけ待って。今、まとめる」
 自分の考えを口にするのが、あまり得意ではない。彼といるようになって、そう気付いた。今までは、聡過ぎる姉と兄が察してくれていたから気がつかなかった。
「ん」
 彼はちゃんと、自分が言葉にできるまで待っていてくれる。
 自分の中で一度考えを整理すると、
「あのね」
 彼をまっすぐ見て話を切り出す。
「正直、自分の人生に結婚とかが入り込んでくるなんて想定してなくて……。こうして龍一と付き合ってなんだかんだ四年も経っていること、今でもやっぱりどっか他人事っていうか、実感がわかなくて。今の状態も、あたしからしたら怖いぐらい幸せだから」
 そう思う一方で、
「あと、金銭的な話は別に全然問題じゃないな、って思う。龍一が気にするのもわからなくもないけど、別に気にしなくていいよっていうのは、思う。年上だからとかそういうのじゃなくって、好きだから。一緒にいられるなら、そこはネックにならないかなって。そんな風にいろいろ考えたら、あたしには選べないなって思う。円姉たちのはやくっていうのはよくわかんないけど、どっちにしてもあたしは幸せだろうなって思うから」
 待たされてるという感覚がよくわからない。結婚を身近に捉えられない。それでも、
「だけど、もしも結婚するのならば、あなたとがいい」
 ちょっと照れ臭かったけれど、はっきりと言葉にして伝える。
 龍一は沙耶の言葉を飲み込むような沈黙のあと、
「そっか」
 ふぅっと息を一度吐き、呟いた。
「わかった。ありがとう」
 柔らかく微笑む。ようやく、顔が緩んだことに少し安心する。
「ひとまず、この話は一旦置いておいていい?」
「うん」
「ありがと。……まだ昼前だし、どこか寄って帰ろうか。せっかく日曜日なんだし」
 行こう? と差し出された片手に、素直に自分の手を重ねる。
「ねぇ、大丈夫?」
「うん」
 思っていたより力強く頷かれた。
「つまり、あとは俺のプライドが問題なんだってことはわかった」
 それからちょっとおどけた調子で、
「しかし、この問題は意外と根深いのでですね、いろいろ一旦忘れてください。今日のことは」
 付け加える。
「わかった」
「よっし、じゃあ、どこ行こうか。どっか行きたいとろある?」
 切り替えたのか、いつものように彼は言った。
 
 二ヶ月後、プライドの問題が片付いた彼から、改めてプロポーズされるのだがそれはまた別の話。
 
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