表立って載せるほどではない小噺と、あとがき。 その他キャラ設定などなど、徒然なるままに書き連ねるページ。 

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不甲斐ない僕はまだ受け入れられなくて。

調律師とひとでなしのコラボもの。
両方とも完結後の時間軸なので、そんな感じで。

永遠の友達4の続きで、葬儀のあと。

死にネタ注意

**
 この場所には、何度か来たことがある。
 だけど、ここはもう、知っている場所じゃない。
「……ありがとう、来てくれて」
 マンションの一室。ドアを開けてくれた手は、彼女のものじゃない。
「こんにちは、龍一さん」
 ちょっとやつれた、彼女の旦那。
 このドアが、彼女の手で開けられることは、もう、ないのだ。

「ごめんね、美実は夕方に帰ってくるから、その前に」
「あ、はい」
 部屋の中は、前と来たときと大して変わらない。
 なのに、なんだか全然違う気がする。
「とりあえず」
 どうしたらいいかわからず、立ち尽くしていると、後ろにたった隆二がゆっくりと言葉を発した。
「お線香あげさせてもらえます?」

 見よう見まねで手をあわせると、
「ありがとう」
 龍一が小さく微笑んだ。弱々しく。
 この人、こんな笑い方をする人だったろうか?
「……マオちゃんに、渡したいものがあって今日は来てもらったんだ」
 言って差し出されたのは、小さなクッキーの缶。
「開けても?」
 頷かれたので開けると、そこには手紙と写真と、ブレスレットが一つ入っていた。
「あ、これ」
 そのブレスレットには見覚えがある。いつだったか、沙耶とお揃いで買った物だ。自分の分は、とっくの昔に壊してしまったけれども。
「沙耶が、マオちゃんにって」
 写真はかつて沙耶と撮ったものがいくつか。手紙を開く。
 だいぶ、弱々しい筆圧で書かれた手紙に、ざっと目を通すとすぐに閉じた。
 ああ、これは、ここで読んだらだめだ。
 泣いてしまう。
 最期の、手紙なんて。
「……確かに、受け取りました」
 言うと、龍一は曖昧な表情で頷いた。
 頷いたまま、彼は床に視線を落とす。
 何かを躊躇うかのように、そのまましばらく黙っていた。
 マオは何かを言いかけて、結局やめた。
 待っていた方がいい。
 今は、彼が話すのを。
 そして、
「……ごめん」
 床を見たまま、ゆっくりと彼が言葉を紡ぎ出す。
「もう、会うのは、これで最後にして欲しい。会いたく、ないんだ」
 言われた言葉に心臓がぐっと掴まれて、でもどこかでやっぱりなと思っている自分がいた。
「本当に、申し訳ないっ。マオちゃんたちのことが、嫌いになったとかじゃなくて……」
「変わらないから」
 言葉を引き取る。
 彼は驚いたように顔をあげた。
「あたしたちは、変わらないから。だから、会うのが、辛い。思い出すから」
 言うと、彼の顔が泣きそうに歪んだ。小さく頷く。
「ごめん……」
「……こちらこそ」
 出会った時から、この人は大人になって、年をとっている。だけど、こちらは変わらない。変えられない。
 年をとらない。
 死なない。
 通常の時間の流れから、逸脱した存在。
 出会った時のころのこと、失ったものがまだあったころ、それを思い出すのがつらい。そして、変わらないこちらがきっと、憎い。
 この人はきっと言わないだろうし、そこまでは思ってないのかもしれないけど。
 でも、そう思われても仕方がない。
 素直にそう思える。
「ごめんなさい」
 かき乱してしまって。
「……神山さん」
「ん?」
 急に名前を呼ばれて、それまで傍観者に徹していた隆二が視線を龍一に向ける。
「どうして……、神山さんは平気だったんですか?」
「は?」
「大切な人の最期を看取らずに、逃げだせたんですか?」
 待って。
 待って、この人は、何を言い出すの?
「俺は、ちゃんと見てたのに、医者としても、夫としても、みてたのに。なのに、後悔ばっかりで、もっとなんかできたんじゃないかって、すっごく思ってるのにっ、なのにどうしてあなたは、そばにいてあげなくて平気だったんですか? どうしてっ」
「龍一さんっ!」
 大声を出して、立ち上がって、言葉を遮る。
 だって、そんなことを言ったら、そんなことは、隆二が、隆二を、傷つけてしまう。
「マオ」
 軽く左手を引っ張られる。
 振り返ると、隆二が小さく首を横に振った。
「いいんだよ」
「だって」
 何が、いいの?
 そんな顔をしているくせに。
 傷付いているくせに。
 隠せてないよ、隆二の、馬鹿。
 もう20年以上一緒にいるのに、あたしが気づかないわけないじゃない。あなたの、気持ちに。
「いいんだ」
 そう言いたかったけれども、隆二が重ねてそういうから、何も言わずにまた座る。
 ことをおおきくするのが、隆二の本意じゃないことがわかったから。わかってしまったから。
 わからなければ、怒ることもできたのに。
「君の言うとおりだよ」
 何にも考えていなさそうな、いつもの顔で隆二は続ける。
「俺はひとでなしなんだ」
 傷付いてる、癖に。
 どうして、そうやってまた自分のことを傷つけるの?
 龍一は、何も答えなかった。
 
 そのまま、気まずい空気のまま、さよなら、と挨拶して部屋を後にする。
 最後まで彼は俯いたままだった。
 隆二を傷つけたことは許せないけれども、できれば、なるべくはやく、前みたいに笑って欲しい。
 そちらの方が、沙耶も嬉しいだろうから。
 そしたら、会わないことにも納得できるから。
 マンションのエントランスをでたところで、
「マオ」
 優しく、名前を呼ばれた。
 隣の隆二を見ると、くしゃりと頭を撫でられた。
「えらい」
 何が、とも言わずそれだけ彼は言う。
 自分を褒める。
「……それは、隆二でしょう」
 挑むようにして告げると、何が? とでも言いたげに彼は笑った。
 嘘ばっかり。
 そんな顔、普段はしないくせに。
 しっかり、傷付いてる癖に。
 いい加減、あたしにはちゃんと、傷付いた顔を見せてくれてもいいのに。
「隆二のそういうところは、あたし、嫌い」
 隆二は答えない。
 重ねて何か言ってやろうと、口を開きかけたところで、
「マオちゃん!」
 背後から声をかけられて振り返る。
「ああ、よかった、間に合った」
「円さん」
 慌てたように走ってきたのは、円だった。
「龍一くんに、今日来るって聞いてて。きっと、あの子がいろいろ言っただろうから。大丈夫?」
 この人は、昔と変わらずに保護者だなと思う。もう大学生になる子供がいる大人を捕まえて、あの子だなんて。
「はい」
 しっかりと頷く。
「隆二に、言ったことは許せないけど」
「……いや、だから別に俺は」
「……何言ったの、あの子は」
「いや、俺はいいんだってば、本当に」
「隆二がどう思ってても、私は、許さないけど」
「……グレードアップしやがった」
「だけど、あたしは、平気です」
 円をしっかりと見て、
「本当は、沙耶とこうなるかもしれないってこと、覚悟してたから。沙耶とは最期までちゃんと、友達でいられたから。会えたから。それがちょっとずれてやってきただけだから。大丈夫。龍一さんの方が、もっとずっと傷ついてて、悲しいだろうから。だから、あたしは大丈夫」
 円はしばらく黙っていたが、
「……そう」
 小さく頷いた。
 納得していないだろうな、と思った。
 自分が、隆二の言っていることに納得していないように。
 だけど、それでも円は何も言わない。
 おとなだから、はなしをここでおさめよう。
 お互いに。
「訊いても、いいかしら?」
 円が隆二に問いかける。
「こんなことになったけど、一海との契約は、継続してもらえるのかしら?」
「それは仕事だから、関係ないだろ」
「……そう、ならいいの。どうぞ、今後ともよろしく」
「こちらこそ」
「……円さん?」
 割って入った誰かの声。
 円が振り返り、
「あ、美実」
 呟く。
 円の肩越しに見える、彼女によく似た、女性が立っていた。
 ああ、大きくなったな、と思う。
 悲しいぐらい、驚くぐらい、大きくなった。
「おかえり。はやくない?」
「お父さん、心配だから。円さんもでしょう?」
「……まあね」
「あ、ごめんなさい。お話中だった?」
「ん、ああ、そう。ちょっと知り合いで。あとから行く」
「はーい」
 美実は、彼女の娘とは思えないぐらい明るく言うと、マオたちにも会釈してマンションの中に入っていった。


「ただいまー」
 玄関から聞こえてきた声に、はっと我に返った。
 ひっぱりだしてきていた人形を、リビングのソファーに置く。
「ただいま」
「……おかえり」
 帰ってきた娘は、自分を見て一瞬なんだか、ものすごく呆れた顔をした。それが、似ていて困る。
「……あれ?」
 自分の部屋に行きかけた美実が、こちらにやってくる。
「これ、きらりんじゃん、なつかしー」
 自分が置いた人形を抱え上げた。
 少しくたびれた、布でできた人形。
「まだあったんだ?」
「沙耶の部屋に」
「ああ、そっか。お母さんの友達が作ってくれたんだもんね、これ。そりゃあ、捨てないよね」
 なんとなく、ひっぱりだしてきてしまったそれを、娘は懐かしいと言って笑う。
「……あ、そっか」
「ん?」
「これ、くれた人に似てたんだ」
「え?」
「さっき、下で円さんに会って。なんか知り合いと立ち話してたんだけど、それが似てたの。きらりんをくれた人に」
 人形の頭を撫でながら、美実が言う。
「……覚えてるんだ?」
「んー、小さかったからうすぼんやりとだけどねー。まあ、でも、似てたってだけだよ。だって、その人、私と同い年ぐらいだったもん。別の人じゃない? ねえ、っていうか、これ、私の部屋に飾っててもいい?」
「え、あ、うん」
「やったー。懐かしー」
 弾むように言うと、人形を抱えたまま、今度こそ美実が自分の部屋に向かう。
 あの人形はそうだ。マオが考えたキャラクターだとかで、隆二がわざわざ美実のために作ってくれたんだ。まだ、美実が小さかったころに。
 ああ、そうだ。あの時自分は、彼になんて言った?
「……何が、友達だと思ってる、だよ」
 あんなことを言って、何が。
 さっき下で話していたといった。
 ならば、まだ間に合うだろうか?
 今なら、まだ。
 勢いつけて立ち上がると、駆け足で玄関のドアを開けて。
「あっぶないわねー」
「……円さん」
 丁度、玄関の前まできていた円に嫌な顔をされた。
「円さんっ、神山さんたちはっ?」
「もう帰ったわよ」
 そんな。
 でも、まだ追いかければ間に合うはず。
 外に出たところを、
「どこに行くの?」
 右手をつかんで止められる。
「っ、謝らないとっ」
 酷いことを、言った。
 間違いなく。
 どうしようもないことをっ。
「一時の感情で傷つけて、一時の感情で謝って、それでまた元どおり、あなたはあの人たちに会えるの?」
「っ、それは」
 呆れたように言われた言葉に、返事ができない。
 また、いやになることがないとは、言い切れない。
「少し、頭を冷やしなさい」
 ため息まじりに、円が言う。
「あなたが傷付いているのも、悲しんでいるのもわかるし、それは当然のことだと私は思う。だけど、だからって誰かを傷つけていい理由になんかならない。他人を振り回すのはやめなさい。落ち着いて、冷静になって、改めて謝ろうと思ったら、その時に謝罪しなさい。そっちの方がいいでしょう?」
「だけど……」
「大丈夫、あの人たちは気が長いんだから」
 ゆっくりと円が笑う。
「あなたがたっぷり悩んでからでも、遅いなんてこと、ないわよ」
「あれ? まどかさーん?」
 奥から美実の声がして、円はそちらに返事をすると、部屋の中に入っていった。
 龍一はゆっくりドアを閉めると、そのまま扉に背中を預ける。
 円の言う通りだ。わかってる、そんなこと。
 いつまでもこのままここに立ち止まっていてはいけないし、それを理由に誰かを巻き込んでいい理由もない。
 だけど、だめなんだ。
 進めない。
 こうなることはわかっていたし、覚悟もしてきたはずなのに。
 ちっとも動けない。
 覚悟なんて、できていなかった。
 隆二を罵る資格なんてない。
「……ごめん」
 昔の自分の方が、きっともっとしっかりしていた。
 彼女に初めて会った、高校生の自分の方がよっぽど。
「ごめん、沙耶……」
 心配させたくないんだけど、まだ自分は動けない。
 不甲斐ない自分が、情けない。
 それでも、


 君にここで、笑っていて欲しかった。


 **

私は、書いていて楽しかった。
需要とかは知らない。
この時代の龍一のことを考えるのが最近のはまりごと。
SURFACEの「さぁ」を聞きながら。
 
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