表立って載せるほどではない小噺と、あとがき。 その他キャラ設定などなど、徒然なるままに書き連ねるページ。 

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永遠の友達4

永遠の友達3の続き。
調律師とひとでなしのコラボもの。
両方とも完結後の時間軸なので、そんな感じで。

ちなみに、永遠の友達シリーズはこれで終わり。

 ***
 縁側に座って落ち着きなく外を見ていたマオだったが、その音に気づくとぴょこっと立ち上がった。
「猫かよ」
 背後からの声を無視して、そのまま庭に降りようとして、
「靴!」
 怒られて、玄関にまわる。
 道路に出ると、近づいてきていた黒い車が家の前にとまった。
「沙耶!」
 車に向かって手を振ると、
「マオ」
 微笑みながら、友人が車から降りてくる。続いて小さな女の子。
「美実ちゃん、こんにちは」
「こんにちは!」
 思ったより元気良く返事をされて、ちょっとだけ驚く。
「大きくなったねー」
「もう3歳だからね」
「そっかー」
 自分で言ったものの、普通に会話できたことに安心した。
「車、どうしたらいいですかね?」
 運転席から龍一が問いかけると、いつの間にか後ろに立っていた隆二が、
「庭に停められるもん? 広さ的に」
「大丈夫かと。いいんですか?」
「うん」
 そんな二人の話を聞きながら、
「とりあえず、入って~」
 沙耶と美実を案内した。

 連絡は継続的にしていたが、なかなか会う機会はなかった。そんななか、まとまった休みが取れたという龍一とともに、沙耶たちが家族で遊びにきたのだった。
 娘である美実は、この前会った時はまだまだ赤ん坊だったのに、気付いたら自分で話せるようになっていた。
 驚くとともに、それにちょっと心がざわつく。
 だってそれは、それだけ時間が経ったということだから。
「おいしー」
「ほんとー? よかったー」
 クッキーを食べて嬉しそうな顔をする美実に笑いかける。
「もー、ぼろぼろこぼして」
 言いながら世話をする沙耶は、前よりも確実に年をとっている。
「おねーさんは、ママのおともだちなの?」
「そーだよー」
「そっかー!」
 母親によく似た顔で笑う。
 あんまり笑わない彼女と似た顔で、満面の笑顔を見るのは変な感じだ。
「おじさんはー? パパのお友達?」
「おじ……」
 そのままの笑顔で隆二に問う。おじさん、の言葉に隆二が少しショックを受けた顔をする。
「美実、おにーさんでしょ?」
「うーん?」
 なんだか美実が不思議そうな顔をする。
「んー、まあ、隆二はおじいちゃんだからねー」
「お前うるさいよ」
「ともだち?」
「知り合い」
「しりあいは、ともだちとちがうの?」
「違うだろ。友達のおまけっていうか」
「……隆二、もうちょっと子供と話す感じで」
「……無茶言うなよ」
「あ、わかった! パパとママみたいに、ふーふなの?」
「違うから!」
「……何がわかったというんだそれ」
「……お二人とも、そこで怖いトーンにならないでください」
「むずかしー」
 口をへの字にして、美実がうなった。 

 そんな感じでわいわい話をして、なんだかんだで盛り上がって過ごせた。
 夜になって眠くなったらしく、あくびをした美実を龍一が抱き上げると、
「沙耶。今夜は俺が美実見てるからさ」
 言って、それを見ていたマオに微笑みかける。
「二人でゆっくりしなよ」
「……そう? ありがとう」
 沙耶はうなずくとマオに視線を移し、
「いい? マオ」
 穏やかに尋ねてくる。
「うん」
 マオはしっかりと頷いた。

 マオが使っている隣の部屋に、並べた布団の上に座り込む。
「前と一緒ね」
 沙耶が微笑む。
「そうだね」
 以前、沙耶が泊まりに来た時も、同じように二人で夜話をした。
 あの時と、気持ちは何も変わってない。
 でも、
「……でも沙耶はお母さんになったね」
「……うん」
 沙耶が困ったように笑う。
 何もなかったフリをして、今日を過ごすのはできる。だけど、今日を逃してしまったら、この話をする機会はもうない。
 そんなことになったら、きっと後悔する。
 だから、確かめておかなければならない。
「嫌じゃない? 変わらないあたしと会うの」
 尋ねた声はちょっと震えていた。
「そんなことあるわけないよ。だって、友達だもん」
 沙耶が微笑む。どこか困ったように。
「マオは? あたしと会うの、平気?」
 そのまま尋ねられる。
 平気かってきかれたら……、
「……本当に嫌にならないって言ったらうそになるかな。嫌だなって思う時は、やっぱりあるよ。寂しいし、不安だし。でも」
 沙耶の目をしっかり見つめると、
「だけど、だからって会わないでいたら、絶対もっとあとで後悔するから」
 はっきりと告げる。
 そのあと、
「……って先輩が言うし」
 ちょっとおどけて続ける。
「……そっか」
 沙耶が苦笑する。
「それじゃあ、それには従うしかないね」
「でしょ?」
 そしてお互いに笑いあう。
 ああ、前と同じように笑えた。よかった。
「神山さんとは仲良くやってる?」
「もちろん。喧嘩とかもするけど、だいたい仲良いよ。沙耶は?」
「ちゃんと仲良くやってるよ」
「ぶっちゃけ、どうなの? 龍一さんって」
「どうって?」
「父親として?」
「えー、そういうの聞くの? そうだなー」
 困ったように笑いながらも、沙耶が話はじめた。


 キッチンのテーブルで、もくもくと針を動かしていた隆二だったが、足音に気づくと顔をあげた。
「あれ、どうした?」
 龍一が困ったような顔をして立っていた。
「いや……、なんか赤裸裸なガールズトークがはじまっちゃって。あの二人、襖隔てた隣に俺がいること忘れてるみたいで」
「ああ」
 苦笑すると、隆二は向かいの椅子を勧める。
「なんか飲むか? とはいってもコーヒーと、あー、どぶろくならあるんだが」
「……なぜにどぶろく」
「いや、マオが飲んでみたいとか言い出して」
「え、いいんですか? 年齢的な……。……いや、いいのか?」
「それ、俺も悩んだんだけど、もういいかなーと思って。よくわかんないし。まあ、結局おいしくないって残されたんだが」
「……なるほど」
 言いながらも、隆二はどぶろくをグラスに注いだ。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
「……今、いくつだっけ?」
「30ですね」
「……まじか」
 聞かなきゃよかった。
 見た目年齢がいつのまにか逆転している。個人とここまで親しく付き合ったのは久しぶりで、時の流れを改めて意識した。
 自分にとっては一瞬だったけど、周りを見回して怯えるには十分な年月が。
 なんだか憂鬱になって自分の酒を飲む。
「沙耶、楽しみにしてました。今日のこと」
「それはこっちも」
 カレンダーに大きな丸をつけていた。
「ちょっとどうなるかと思ってたけど、まあ楽しそうでよかったよ」
「そうですね」
 つまみがわりに、ぬか漬けとらっきょうをだしてくると、もう一度針を手に持つ。
「これ、もしかして自家製ですか?」
「そうだけど?」
「……さすがですね」
 なんだかしみじみ呟かれた。何が。
「……しょうもない話、してもいいですか」
「……してもいいが、返事するかどうかは知らん」
 むげに断るのもどうかと思ってそう答えると、苦笑された。
「それでもいいです。話させてください」
「ん」
 一度針を置くと、別の布をとって裁断をはじめる。
「沙耶と結婚したの、俺がまだ学生だったときで。姉がいつまで待たせるんだ、籍ぐらいさっさと入れろ、って言われてうるさくって。あー、あと円さんも」
「あー、あの人はうるさそうだな」
 切った布をさっきまで縫っていた布に重ねる。うん、いい感じだ。
「二人で生活しはじめて、喧嘩したりもしたけど、まあ楽しくやってて。幸せで。だけど、途中から沙耶の具合があんまりよくなくなって。龍が、記憶だけじゃなくて、体も食らうようになって」
「ん……」
「沙耶を助けたくて医者になったのに、俺全然役に立たないし。本当、どうしようもないなって思ってて」
 苦笑する龍一に、なんて言えばいいのかわからずに、手元の布に意識を向けた。
「だから、俺、美実が生まれる前、妊娠したって言われた時、……反対したんです。堕ろせって。怖かったから。沙耶がいなくなるんじゃないかって。もしも、沙耶と引換に子どもが生まれても、俺は絶対その子を愛せないって、そう思ったから」
 ひどいですよね、と龍一が曖昧に笑う。
 なんて答えるのが正解なのか、隆二にはわからない。だけど、一つだけ言えることがある。
「そりゃあ、普通だろ」
 だいたい、そもそも、なんでそれに悩んでいるのかがあまりよくわからない。
「人が死ぬのは、怖いに決まっているだろ。それも、自分の身近な人が。それで仮に新しい命が生まれたところで、それはその人じゃない。他人は他人の代わりにはなれない。それを怖いと思うのは、普通のことだろ。自分の子供だからって無条件に愛せるならば、誰も苦労しないだろ」
 思ったままを答えると、龍一はなんだか驚いたような顔をしてから、
「……うん、貴方ならそう言ってくれるかな、って思ってました」
 ちょっと泣きそうな顔をして、微笑んだ。
「だから多分、この話をしたんだと思います」
「……なんだかよくわからんが。まあ、納得したならよかった」
「はい、ありがとうございます」
 なんだか龍一は晴れ晴れとした顔で頷いた。
 つくづく、変な少年である。もう少年じゃないけど。
 気を取り直して、手元に視線を落とす。
「ところで、さっきからずっと裁縫してますけど、何を作ってるんですか?」
「星っコきらりん」
「え?」
「星の国のお姫様きらりんは、女王様になる試験のために地球にやってきました。小学生の女の子、星野夜の家に居候しながら、女王様になるために108つ、人間のお願いごとを叶えるのです」
 手をとめずにすらすらと答える。
 洋服まで着せ終わった。あとは髪の毛か。ということで、エメラルドグリーンの刺繍糸を厚紙にぐるぐる巻き、髪の毛を作り始める。
「……それは、アニメかなんか?」
「マオが考えたんだよ」
「はい?」
 適当にまとめた刺繍糸を頭部に縫い付けていく。
「いや、なんか詳しいことはよくわかんないんだが。あいつが考えて、漫画? にして、それをいんたーねっと? に載せたら人気が出た、とかで?」
「ツイッターとか?」
「いや、知らんけど」
「あ、はいそうですよね」
「で、なんかよくわかんないけど、人形とか作ることになって。なんか、売れてるらしいんだけど」
「……神山さんが」
「俺が。……まあ、あいつにできるわけないし」
 などといっている間に髪の毛も無事はやしおわり、一応細かいところは残っているものの、だいたいの形が完成した。
「上手ですし、手早いですね」
「そうか?」
 机の隅に座らせる。まあ、なかなか可愛いんじゃないか。
「そういうスキル、本当すごいですね」
「そうか?」
 あとは明日仕上げよう、と決めて、針と糸を片付ける。
「これ、あれらしいんだ」
「あれ?」
「プレゼント。いらんかもしれないけど、娘さんに」
「……ああ」
 微笑む。
「ありがとうございます。喜ぶんじゃないかな、美実」
「だといいけどな。というか、なんでそれを俺が作るのかっていう話だけど」
 きゅうりのぬか漬けを口に運ぶ。うん、こっちもだんだんいい感じになってきた。
「ところで、さっきの話ですけど」
「どれ?」
「美実が、友達かどうかって訊いていたくだりです」
「ああ。あれがどうした?」
 どうしたっていうか、と龍一はなぜかそこで一瞬口籠り、グラスの中身に口をつけてから、
「俺は友達だって思ってますよ」
 そのままの勢いで告げた。
 言われた言葉を理解するのに少し時間が必要で。
「……そりゃあ、失礼」
 答えた言葉はちょっとそっけなかったかもしれない。
 だって、意外だったし。
 でも、
「……ありがとう」
 それはちょっと嬉しかった。
「いいえ」
 龍一はわずかに微笑んだ。
 そのまま、とりとめのない話を続けた。

 翌々日。
「それじゃあ、ありがとね」
「ううん、またね。美実ちゃんも」
「うん、お人形、ありがとー」
「大事にしてね」
「うん!」
 帰る3人を見送る。
「楽しかった」
「あたしも」
 微笑んで頷きあう。
 またね、って言ったけれども、次があるのかどうか、わからない。
 それでも、またね、と言って別れたい。
 手を大きく振って、離れていく車を見送る。
 その姿が消えても、しばらくマオは動けなかった。
「マオ」
 呼ばれて振り返る。
 なんだかとても優しい顔で隆二が微笑んでいた。
「大丈夫か?」
「……うん」
 ちょっとためらったものの、しっかり頷く。
「100パーセント大丈夫っていったら嘘になるんだけど、大丈夫」
 後悔しないように生きていくと、決めたのだ。
 一緒にいる時間は、いつかくる別れのための準備期間なのだと、彼が言っていたから。別れの時に悔いたりしないように。悲しいのは避けられないとしても、悔いがないようにするのだと、彼が言っていたから。
「友達だから」
 できるだけ笑って言うと、
「そっか」
 優しく頷かれる。
 この話をするときの彼は、いつもよりもずっとずっと優しい。痛いぐらいに。
「友達だもんな」
「うん」
 それに。
 とんっと、跳ねるようにして一歩近づく。
「あたしには、隆二がいるから大丈夫」
 にっこりと笑うと、
「お互い様」
 ぽんっと頭を軽くたたかれた。
「……さて、コーヒーでも飲むか」
 そのまま、くるっと背中を向けてしまう。照れてしまったのだろう。
 長生きしているのに、こういうところはこの人は本当に変わらない。人じゃないけど。
「飲むー!」
 だから自分も同じように、ちょっとバカっぽく答える。
 沙耶は永遠に自分の友達で、隆二は永遠に自分の同居人だ。それは絶対に変わらないのだから。
 
 
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