表立って載せるほどではない小噺と、あとがき。 その他キャラ設定などなど、徒然なるままに書き連ねるページ。 

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往生際が悪いから。

フリーワンライ企画参加作品

お題
バレンタインの予行練習
魚と星空
夢のまた夢
さらさら
おふとん恋しい

時間60分
**

 もうすぐ、バレンタインだ。
 今日日、バレンタインという日を選んで、わざわざ告白しようとする女子は少ないだろう。それでも、意中の相手にチョコレートぐらい渡せたらいいな、とは思う。告白は、しなくても。
 しかしまあ、困った事に、
「大学、休みなんだよなぁー」
 大学の友人である彼に、私がチョコレートを渡すには、わざわざ呼び出す必要があるわけで、
「それができたら苦労しないつーの」
 今日何度目かわからない溜息をつくと、アドレスを呼び出したところでとまっているケータイを、ソファーに放り投げる。その後、自分も一緒にソファーに倒れこんだ。

 語学が一緒の、男の子。別に特別かっこいいわけでも、何か目立つわけでもない。さらさらの髪の毛には、よく寝癖がついている。それぐらい、ちょっと抜けている。
 だけど、みんなでいるときに、ちょっと寂しそうな顔をするところが気になって。多分それは、顔の作りとか光の加減の問題だったんだろうけれども気になって。じっと見ていて、いつか好きになっていた。じっとみていたものを好きになるなんて、鳥かなんかか、私は。刷り込みか。
 でも駄目なのだ。好きになって、しまったのだから。
 バレンタインの日に、いきなり呼び出したら怪しまれるだろう。そう思ったから、その前から何度か遊びに呼び出す練習をしていたのだ。言わば、予行練習。驚くなかれ、夏頃からの練習だ。
 彼だけ呼び出すんじゃなくて、最初は何人か友達で集まって……と涙ぐましい努力をしていたわけだ。
 最初のころは、彼はお金ないんだよなーとかぼやきつつも、でてきてくれていた。しかし、最近はあんまり反応がよくない。
「あー、今日はちょっとやめとくよ」
 ここ最近、ずっとそれだ。
 もしかして、カノジョができたんじゃないか。そう思って、彼と仲がいい男子に尋ねたところ、
「いやむしろ、別れたばっかりだろ」
 衝撃的な答えが返って来た。
「カノジョ、いたのっ!?」
「確か、五年ぐらい付き合ってて」
「五年もっ?!」
「同棲してたけど」
「同棲っ!?」
「最近フられたって言ってたけど」
 なんと……。まったく、知らんかったわ。全然そんなそぶりみせなかったのに。
「え、っていうかなに、お前、あいつのこと好きなの? マジで?」
 男子がなんか言っているけど、スルーする。
 淡白だから恋愛に興味ないかと思っていたのに、そんなことになっていたとは。知らんかったわ。っていうか、好きな男の恋人の有無も知らんかったのか、私。
 自分に打ちひしがれながらも、いやいや、しかし、カノジョと別れたのならば尚更付き合い悪く意味なくね? と思い直す。
 あれだろうか、カノジョにフられて、無気力になっちゃったのだろうか。恋なんてする気がなくなって、おふとん恋しいよー、めそめそ、的な。
 そんなキャラにも思えないけど。
 なんて思っていたある日、学校帰りの商店街で彼を見かけた。魚屋で魚を買っていた。
「夕飯、魚なの?」
 話かけると、彼はちょっと驚いた顔をしてから、優しく微笑んで首を横に振った。
「プレゼント」
「プレゼントぉ?」
 魚を?
「ミザリーに」
 誰だよ!
 怪訝な顔をする私の前に、彼はケータイを差し出す。画面に表示された一枚の写真。綺麗な黒猫がこちらを見ていた。
「これ、ミザリー。かわいいでしょ?」
 そういう彼の、瞳がきらきらしていた。今まで見たなかで一番。少女漫画の、星が飛び散る瞳みたいな。星空みたいな。
 上手く言えないけれども、すごく綺麗で、嬉しそうな笑顔だった。ちょっときゅんっとして、あとちょっと不愉快だった。猫相手に、そういう顔、するんだ? みたいな。莫迦みたいな、嫉妬だけど。
 いや、まあ、確かに猫、可愛いけれども。
「最近飼い始めて。猫缶だけじゃ嫌がるから、魚」
「あ、そう、なんだ?」
 我が侭な猫だなぁ!
「私、猫好きなの! 今度、見に行ってもいい?」
 気をとりなおして、精一杯可愛い声で言ってみたところ、
「あー、ごめん。ミザリー、やきもちやきだから」
 はぁぁぁ? 真顔で何言ってんの?
「あ、遊びもごめん。あんまりミザリーを一人にしたくないから、しばらくパス。ごめんね」
 言いながら彼は魚を受け取り、足早に去って行く。
 ちょっとまって。
 っていうことはなに? 最近、付き合い悪かったのは猫のせい? 猫のため?
 ああ、そう、猫以下ですか! 私は猫以下ですか!!
 ああ、思い出しただけで悲しくなってきた。
 溜息。
 チョコ渡すのに呼び出して、猫がいるからって断られたらもう立ち直れない。だって、猫に負けるなんて!
 そんな、もう何回目かわからない思考回路。延々とループしている。
 普段の私だったらもっとぐいぐい行くのに、いけるのに。思ったよりも、猫を優先されたことが、心にキテいるみたい。しんどい。
 ケータイをあと少しいじるだけで、彼に電話が繋がるのに、私にそれをする勇気は無い。
 ああ、まったく、こんなんじゃ、告白なんて夢のまた夢だ。
 テーブルの上に置いたチョコレートは、きっと明日、私のお腹に入るのだろう。
 溜息。
 ああ、嫌だ。
 めんどくさい男を、好きになってしまった。
 だけど諦める気がない自分が、本当に嫌だ。
 
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