表立って載せるほどではない小噺と、あとがき。 その他キャラ設定などなど、徒然なるままに書き連ねるページ。 

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アンタレス

フリーワンライ企画参加作品

お題
蠍座
泣いたことさえ嘘にした
小さな約束
寝ぐせが直らない
猫の涙
 **

「だから髪はちゃんと乾かせと、昨日の夜あれほど言ったのに」
 鏡の前で、必死に寝癖を押さえつける俺を見ながら、ミザリーがめんどくさそうに言った。
「うっせーなー」
 いいながら、ぺたぺたと残り少ないワックスでどうにか見られる程度にする。
「今日は、デートだったか」
「なんだ、その嘘情報は」
 バイトだよ。ふつーに、バイトだよ。学校が春休みだからふつーにバイトだよ。
「なんだ、残念だな」
「なにが」
「蠍座は最下位だ!」
 蠍座は、俺の星座だ。
「ご丁寧にどうも」
「ラッキーメニューは、ラム肉の香草焼きだ」
「絶対喰えないな、それ」
 っていうか、
「なあ、自称地球を亡ぼしにきた大魔王さんよ、毎朝テレビの星座占いチェックするなよ」
 なんか、しらけるだろ。
 俺の言葉に、自称地球を亡ぼしにきた大魔王こと、黒猫のミザリーは不満げににゃん、っと鳴いてから、器用に前脚でリモコンを押し、テレビを消した。
「君のためを思ってチェックしてたのになぁ!」
「そりゃあ、どうも」
 この喋る黒猫ミザリーは、少しまえに俺がなりゆきで拾った黒猫で、自分のことを地球を亡ぼしにきた大魔王なのである。恐怖の大魔王だ。1999年はとっくの昔に過ぎたつーの。
 なんだかなりゆきで、ここ数ヶ月一緒に暮らしているが、別段今のところ地球を亡ぼす気配はない。幸いなことに、うちでずっと猫をやっている。
 って、それもどうかと思うけれどもな。
「なぁ」
 やっぱり跳ねてきた寝癖をもう一度押さえつけていると、ミザリーに名前を呼ばれた。
「蠍の火を知ってるか?」
「アンタレス、だろ」
「……なんだ、知ってた!」
「お前、それ、昨日読んでた、銀河鉄道の夜だろ?」
 付き合っていたカノジョがうちに置いていった、絵本。それを昨日、どこからか見つけてきたミザリーが読んでいた。
「それ、俺だって読んだわけ」
 そのなかに、蠍座の話がでてくる。真っ赤に燃えるアンタレスの話。それは、毒で生き物を殺して来た自分の生き方を恥じた蠍が、他者の幸せを初めて祈り、燃やした命の光だ。……と、俺は解釈している。
 ミザリーは、俺が知っていたことが不満なのか、つーんと拗ねている。子供か。
 ようやくどうにかなった髪の毛を見て一つ頷くと、ジーンズに財布とケータイをつっこむ。
 ふっと、思いついて、ミザリーに問う。
「……お前さ、地球を亡ぼしたら次はどうするわけ?」
 ミザリーは困ったように少しの間口をつぐみ、
「そしたら、次の星にでも行くかな」
 何かを振り切るかのように早口で言った。
「ふーん。それって、惑星に限らず?」
「……まあ」
「それじゃあ、さ」
 俺はミザリーの緑の瞳をじっと見つめ、
「その時は、アンタレスは選択肢から外してくれよ」
 ミザリーは、俺の真意をはかるかのようにしばらく黙っていたが、
「……まあ、考えておく」
 小さく呟いた。
「頼むよ」
 まあ、例えミザリーが約束を破ったとしても、
「俺には確認する術がないけれども」
 地球が亡びる時には、俺ももう、生きてはいないから。
 ミザリーは俺の言葉を聞くと、
「はやく行かないと遅刻するぞ!」
 なんだか怒ったかのようにそう言って、ふんっと鼻をならし、座布団の上に丸まった。
「あー、本当だ。じゃあ、いってくる」
 俺の言葉にミザリーは返事をしない。座布団の上に丸まったまま。
 俺は足早に部屋を後にすると、バイト先へと急ぐ。
 猫も、泣いたりするのだろうか。
 丸まる前のミザリーの、緑の瞳はなんだか泣きそうに歪んでいた、ような気がする。そんなこと、ミザリーは認めないし、例え認めたとしても嘘泣きだとかなんだとか適当なことを言うだろうけれども。
 地球を亡ぼしに来た恐怖の大魔王が、泣いたことなんて認める訳が無い。
 地球が亡びるとき、それは俺とミザリーの別れの時でもある。そんな未来の話を俺がしたから、というのは自惚れだろうか。
 ミザリーが望むのならば、地球が亡びてもいいと俺は思っている。それでも、できれば俺は、俺の命は、ミザリーの幸いのために使われればいいのに。ミザリーが一人にならないように。
 アンタレスのように。蠍のように。真っ赤に燃えて。
 
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