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表立って載せるほどではない小噺と、あとがき。 その他キャラ設定などなど、徒然なるままに書き連ねるページ。 

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寂しい夜に黒猫を

フリーワンライ企画参加作品

お題(全部使用
冬遊び
きみ(人称変更可)専用膝枕
雨の音
恋をする理由
何度言えば信じてくれますか
明け方の街

時間60分
「だから、何度言ったらわかるのかね! 私は!」
「地球を亡ぼしにきた恐怖の大魔王なんだろ。もう何回も聞いた」
「だったら! それ相応の扱いをしたらどうかね!!」
「だから、丁重にもてなしてやってんだろ」
 ほらほら、と喉を撫でると、膝の上でソイツは気持ち良さそうに目を細めた。散々人の手を堪能し、喉を鳴らしてから、
「そういうところが! 駄目だと言っているのだ!!」
 はっと、気づいたかのように叫んだ。
「そういうところが、恐怖の大魔王っぽくないって言ってんだよ」
 大体、恐怖の大魔王ってお前さ、
「猫だし」
「猫じゃない!」
 あぐらをかいた俺の足に収まっていた黒猫が、立ち上がるとシャーっと吠えた。
 朝から降り続いている雨の音が、より一層強くなったのが、効果を煽っているといえば煽っているかもしれない。
 だけれども、残念ながら、どこからどうみても猫です。喋って、自分のことを恐怖の大魔王とか言い出すことをのぞけば。

 俺が、自称恐怖の大魔王こと、黒猫のミザリーと出会ったのは、三カ月程前のこと。大学の友人達とオールで遊んだ日、始発が動き出す前に歩いて帰ることにして、三駅先の自宅を目指していた時のことだ。静かな明け方の街をだらだら歩いていると、
「たのもー!」
 声がした。
「たのもー!」
 最初はシカトした。だって、こんな時間に街にいるやつなんて、碌な奴じゃないだろうし。
「たのもー!」
 っていうか、道場破りかよ。見た事無いけど。
「おい、そこの人間!」
 偉そうに言われた次の瞬間、すねに何かがぴた! っと当たった。
 なんだよ……。
 しぶしぶそちらをみると、黒猫が足に右足にまとわりついていた。何この、図々しい猫。
「ふん、やっと足を止めたな!」
 そうして、その図々しい猫はそう言った。
 今でこそなんの違和感もなく受け止めているが、初回は相当驚いた。顔にはでなかったが。俺は、驚くと無口無表情になるタイプなのだ。
 最初は、誰かが腹話術でもしているのかと思ったが、周りには誰もいない。正真正銘、この猫が喋ったのだ。
「おい、人間!」
 ほら、喋ってる。
 なんてこったい。
「……酒は、飲んでないはずなんだが」
 怪しい薬もやってないと思うのだが。
「人間、おい! ちょっとこの体勢疲れるからどうにかしろ!」
 猫が偉そうに言う。
 まあ、そりゃあ、俺につかまっているとはいえ、二本足でたっていれば疲れるだろうな。
 少し悩んでから、猫を抱き上げた。目線の高さに。
「おお、視線が高い!」
 猫が嬉しそうに言う。それはよかったね。
「なに、あんた」
「私は、ミザリー!」
 猫はどや顔で答えた。
 ホラー系猫?
「私はだな、地球を亡ぼしに来た恐怖の大魔王なのだが」
「猫なのに?」
「猫じゃない!」
「いや、猫だろ、どうみても」
「これは地球人の心を操る為に、懐柔しやすそうな動物の姿になっているだけだ!」
「じゃあ、猫じゃないか」
「猫じゃないー!」
 猫は大層ご不満のようだった。
 散々俺の事を罵倒してから、
「まあ、そんなわけでだな。この姿で地球を亡ぼすパワーを手に入れるまでにはもう少し時間がかかるのでだな。喜べ人間、その間、貴様に私の世話をさせてやろう!」
「もう少し慎み深くいた方がいいぞ?」
 こんな五月蝿い猫、普通なら置いて帰るぞ。
 言いながらも、家に向かって歩き出す。
「おや、素直じゃないか」
 意外そうな猫。
「別にいいよ、猫飼うぐらい」
 普通の猫より手かからなさそうだし。
 今回のカラオケは、五年付き合っていたカノジョにフられたの俺の、慰めパーティだった。つまり、そうは見えなくても俺は傷ついていたのだ、あの日、それなりに。
 ちょっと猫とか飼ってもいいかな、寂しいし、と思える程度に。
 一緒に住んでいた恋人の代わりに、猫を連れて帰ることにしたのだ。
 腕の中の塊は、温かい。
「ふーむ、人間。なかなかに感心だな」
「なにが」
「私に対する態度がだよ! このまま良き僕を勤めるならば、私が地球を亡ぼした暁には、貴様のことだけは助けてやろう」
「……そりゃどうも」
 今から思うと、そうとう病んでいた。喋る自称魔王の黒猫を連れて帰っているのだから。
「ところで、人間」
 黒猫が再び口をきいたのは、家についてからだった。
「名前は、なんというのかね?」
 それを今更訊くのはちょっと躊躇うのだがな、とでも言いたげな口調で問われた言葉が、なんだか可愛かったのは覚えている。

 まあ、そんなこんなで、なんだかよくわからないままなし崩し的に、この自称恐怖の大魔王な黒猫は俺の家に暮らしているのである。
 普通の猫っぽく。変なところで爪研ぐなとか、餌に我が侭言うなとか、俺に怒られる普通の猫として。ごろごろだらだらするだけで、地球を亡ぼす気配が見えないが、いいのだろうか。いや、別に亡ぼして欲しい訳じゃないのだが。
 ふと気づくと、いつの間にか、外の雨の音が聞こえなくなった。やんだのだろうか、そう思って外を見ると、
「うわっ、雪じゃねえか」
 雨はいつの間にか雪にかわっていた。
「雪!」
 俺の言葉に、ミザリーは嬉しそうに膝からおりると、窓際に向かって行く。
「つ、つもるかな!」
 なんだか、そわそわした様子で言った。
「つもったら、一緒に雪遊びしてやってもいいぞ! 冬の遊びだ!」
 偉そうに言う。
 しっぽがそわそわしてんぞ、おい。
「いい事教えてやるよ、猫はこたつで丸くなるんだ」
「この家にこたつはないじゃないか」
 まあ、確かに。こたつに限らず、暖房器具がそもそもないんだがな。寒いな。
 思わずミザリーを抱えると、ぎゅっと抱きしめる。一応猫なので温かい。
 不満そうにミザリーが、猫っぽく鳴いた。
 俺の手からするっと、抜け出すと、あぐらをかいた俺の膝の上で丸くなった。
「まあ、仕方ない。こたつの代わりにここで我慢するとしよう」
「へいへい。さーせんね、こんな枕で」
 偉そうな猫に適当に返事をしながら、手を伸ばし教科書をとる。遊んでいる場合じゃない、そろそろ試験がはじまるし、勉強しないと。
 膝の上でミザリーが片目をあけた。
「テスト勉強等しなくても、地球は滅びるんだぞ。遊んだ方が得だ」
「それな、1999年7月のお子様のうち何人かが、同じことして酷い目にあったはずだぞ」
「ふん」
 ミザリーはなんだか偉そうに鼻をならした。嫌な猫。
 それから、ゆっくりと目を閉じる。
 静かになったので、また教科書に向き直ったところで名前を呼ばれた。今度はなんだよ。
 視線をおろすと、ミザリーは目を閉じたまま、
「それにな、この枕はなかなかに快適だぞ」
 ゆるく呟くと、わざとらしい寝息をたてだした。
 ……なんだこいつ。
 呆れて小さく笑うと、今度こそ勉強を再開する。

 この小さな黒猫は、自分のことを地球を亡ぼす恐怖の大魔王だという。それが嘘か本当かは俺は知らない。
 ただ、この風変わりな黒猫は俺の膝の上でまどろんでいる限り、地球を亡ぼすことはないだろう。そのことはわかっている。地球を亡ぼして枕がなくなることは、俺にとってもこいつにとっても、良い事ではないからだ。
 この小さな黒猫は、自分のことを地球を亡ぼす恐怖の大魔王だという。それが嘘か本当かは俺は知らない。もしかしたら、これは全部、傷ついた俺の心が見せている、救いようのない幻なのかもしれない。
 ただ、俺の身が今後破滅に向かうであろうことは、うすぼんやりとわかっていた。自称恐怖の大魔王の黒猫に惚れてしまったなんて、まともな人間の価値観からしてみれば、最低の末路だからだ。
 でも、どうしても放っておけないのだ。この黒猫を。別に猫なんて好きじゃなかったのに。もしかしたら、魔王の魔法にたぶらかされているだけかもしれない。それぐらい、理由なんて見えない。
 でも、それでいいのだ。
 そして、それを後悔なんてしていないのだ。
 
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