表立って載せるほどではない小噺と、あとがき。 その他キャラ設定などなど、徒然なるままに書き連ねるページ。 

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永遠の友達2


「永遠の友達1」の続き。

調律師とひとでなしのコラボもの。
両方とも完結後の時間軸なので、そんな感じで。


***

 ようやく、目的の駅についた。
 慣れない路線で終始緊張していたから、軽く息を吐く。安堵。
 荷物を抱えて電車を降り、改札に向かって歩いていると、
「沙耶ー!」
 名前を呼ばれた。
 改札の反対側で、大きく手をふる友人に、
「マオ!」
 軽く手をふりかえした。

 いつだったかの約束どおり、沙耶はマオ達の家を尋ねて来たところだた。
 改札を出ると、嬉しそうなマオと、のんびり待ち合いの椅子から立ち上がった隆二が出迎えてくれた。
「久しぶりー! 迷わなかった?」
「うん。でも一人で新幹線乗るのはじめてだから、どきどきした」
「ほんと? でも大丈夫、隆二は未だに一人じゃ乗れないから」
「……流れでバカにすんなよ」
 マオの隣に来た隆二が、嫌そうに呟く。
 それから、
「鞄、持つよ」
 沙耶が肩からかけた旅行バッグに手を伸ばしてきた。
「え、でも、重いですよ?」
 さすがに遠慮してそう言うと、
「俺をなんだと思ってんの?」
 隆二がふっと笑う。
 ああそうか、そういえば彼は、ひとでなしだった。
「ありがとうございます」
 力の強い彼に、素直に鞄を預ける。彼は一つ頷いてから、 
「代わりにそれ、持って来て」
 マオを指差して言うと、
「あたし荷物じゃないんだけどっ!」
 マオがむすっと膨れて怒る。それでも直ぐに、にぱっと笑うと、
「行こ」
 左手を出して来るので、素直にそれと手を繋いだ。

 沙耶の鞄を持った隆二の後ろを、マオと二人のんびりとついていく。
「ちょっと歩くんだよねー、ごめんねー」
「ううん」
 車も少ない道を、ゆっくりと歩いて行く。それがなんだか楽しい。
 歩きながら、マオが色々教えてくれる。
「ここがねー、図書館。そこがね神社でねー。あっちにいったとこにスーパーがあってね」
 マオのメールにでてくる場所を、実際に見ることが出来て嬉しい。
 忘れないように、と目に焼き付けた。
「そして、ここが我が家なのです!」
 マオがそう言って示したのは、古民家だった。
 ぎしぎし言う門をあけて、中にはいる。小さな庭を横目に、隆二があけた玄関の扉から中に入った。
 玄関はいって右側にキッチンが、左側に和室をふすまで四つに区切られた部屋がある。四つの部屋のうち、手前の右側にテレビと赤いソファーが置かれていた。左側には何もない。
「沙耶、こっちの部屋使ってー」
 言いながら歩くマオ。そのあとについていく。
 奥の左側の部屋に案内された。本棚とタンスが置かれている。
「俺のもの、結構おいてあって悪いけど」
 沙耶の鞄を部屋の隅に置きながら、隆二が言う。
「いいんですか?」
「当面必要なものはのけてあるし。玄関近い部屋をお客様に使ってもらうのも悪いだろ」
「ありがとうございます」
「いや。俺、なんか適当に夕飯の買い物してくるから、そいつの面倒見といて」
「だから、なんでそういう扱いなの!」
 ふくれるマオを見て小さく笑うと、隆二はさっさと出て行った。
「……なんか、ちゃんと生活してるんだね」
 思わず呟く。
 生活感のない二人だから、大丈夫なのだろうかと思っていたのだが。
「ちょっと安心した。いつも神山さんがご飯作ってるの?」
「そう。美味しいんだよ。隆二はね、機械さえなければすごいからね!」
 褒めてるんだか、けなしているんだか、微妙なラインのことを、それでも嬉しそうにマオが言った。
「あ、それで隣の部屋があたしの部屋なのー」
 右側の襖をあけながら、マオが自宅紹介を再開した。

 隆二の作った、確かに美味しい夕飯を食べ、お風呂に入って戻ってくる。しかし、今日日まさか五右衛門風呂とは。はじめてなので、ちょっとドキドキしたのは内緒だ。
 テレビのある部屋に戻ってくると、マオが隆二になにかこそこそ話かけていた。
「だから、それ、俺じゃなくて本人に訊けよ」
「……うん」
 なんだかちょっとテンションが低いけれども、どうしたのだろうか。そう思いながらも、
「お風呂、先に頂きました」
 声をかける。
 マオが、ちょっとびっくりしたように振り返った。
「……どうしたの?」
「あ、あのね」
 マオが困ったように隆二に視線を向ける。
「いや、自分で言えよ」
 隆二は冷たくあしらうと、手元の本に視線を落としてしまう。
 むーっとマオは一瞬隆二を睨んだものの、
「あのね」
 意を決したように話かけてきた。
「沙耶、今日ね、一緒に寝てもいい?」
 早口で言われた言葉に、びっくりする。
 おどおどと伺うような瞳に、
「もちろん」
 微笑んで頷く。
 すると、ぱぁぁぁっと一瞬でマオの顔が明るくなった。
「お風呂、はいってくる!」
 言うが早いが、ソファーの後ろの襖をあけると、ソファーの背を乗り越えて自分の部屋に入って行く。
「だから、そっから出入りするなつってんだろ! 危ないから!」
 叱る隆二の声を気にせず、またソファーの背を這い上がって戻ってくると、
「ごめんなさーい」
 部屋から持って来たパジャマを持って、ばたばたとお風呂場にむかって駆けて行く。
 小さく舌打ちしながら、隆二はマオがあけたままの襖をしめた。
「悪い」
 それから沙耶の方を見て、そう告げる。
「あ、いえ、全然」
 むしろ、
「なんであんなおっかなびっくり言われたのかっていう感じです」
「あー、あいつ、変なところで臆病なんだよなぁー」
 隆二が独り言のように呟いた。

 あてがわれた客室で、持って来た本を読んで待っていると、
「おまたせ!」
 テンション高く、マオが戻って来た。
「おかえり」
 笑いながら顔をあげて、一瞬、どきりとする。
 パジャマ姿のマオに右手の先がなかった。知ってはいたけれども、義手を外しているところ、初めて見た。
 沙耶の視線に気づいたのか、マオはちょっとだけ困ったように笑ってから、言い訳のように、
「お風呂とか寝る時とか外さなきゃいけないから。普段、家では基本外してるの。……外してるの見せるの、隆二以外は沙耶が初めて」
「……そっか。痛かったりはしないの? 大丈夫?」
「平気。……たまにすっごくイヤになるときがあるけど、もう慣れたよ。あの時のこと思い出したりもするけど。でも平気」
 いつものように笑った。
 それから、
「まってね、あたしのお布団持ってくる!」
 隣の部屋の襖をあける。ベッドの上に敷いてある布団をひっぺがそうとする。
「手伝おうか?」
「だいじょうぶー」
 言葉とおり、片手で器用にそれらをまとめると、ひきずりながらも持って来た。
 沙耶用に用意された布団の隣にそれを敷くと、満足げに笑った。
「ドラマで見た、修学旅行みたい! 好きなひととか言い合うんだよね?」
「……さあ? あたし、行ったことないからわからない」
「そうなの? じゃあ、沙耶も初めてなんだ、一緒一緒!」
 少し卑屈になって答えた言葉も、マオはさらっと笑って流した。多分、何も考えていないんだろうけれども、それに救われる。
「んー、でも沙耶と二人じゃ、好きなひとの言い合いっこできないね。知ってるもん。龍一さんとは、仲良くしてる?」
「してるよ。ありがと」
「それはよかった」
「マオも、ちゃんと神山さんと仲良くしてる?」
 まあ、仲良くしているのは今日十分見たけれども。 
「してるよー。見たでしょー?」
 くすくすと笑いながらマオが答える。
 それから、
「あ、でも、一個ね、困っててね」
 笑顔を引っ込めて、真面目な顔をした。
「ん?」
「右手のことなんだけどね」
 左手で軽く、右上腕部を撫でながら話し始める。
「……うん」
「あたしね、本当、今はもうあんまり気にしてないの。今となっては、あたしよりも隆二の方が気にしているの。あの時、もっと早く助けにいってれば、って隆二が思っているの、なんとなくわかるから、困ってるの。もう、あたしはそんなに気にしてないのに」
「……それは、困っちゃうね」
 自分が気にしていないことを、自分以上に他人に気に病まれたら居心地が悪い。
「ね? 本当は隆二に気にしなくていいよって言ってあげたいけど、そうすると隆二もっと気にするだろうし。隆二は気にしてないフリをしているから、気にしていることあたしが気づいているの、知りたくないだろうし。難しいなぁー」
 軽く溜息をつく。
 なんて言葉をかけるか迷っている間に、
「ま、それはいいや! 沙耶は最近どんな感じ?」
 あっさりとマオが話題をかえ、その話はなんとなく流れた。
 
 布団に寝転がって、いろいろとたわいもない話をしていたが、気づいたらマオは寝てしまった。
 沙耶は、なんとなく寝付けずに、隣で眠るマオを見る。
 仲良くすればするほど、会えば会う程、思うことがある。
 いずれ、自分はこの子よりも先に死ぬ。それはほぼ、確定的な未来だ。
 老いない彼女は、いつまでこうやってあたしと一緒にいてくれるだろう。いずれ会ってくれなくなるのかもしれない。
 かつてマオから聞いた、神山隆二の話を思い出す。老いない彼が、人間の恋人から逃げだした話。
 同じことを、彼女もするかもしれない。それは、仕方がないことだと思う。残されるのはマオの方なのだから、辛い思いをするのはマオの方だから。
 けれども、本当に会えなくなるまで、できれば会いたい。
 あたしが死んだらきっと彼女は泣く。
 ごめんね、泣かせてしまって。
 でも本当に、出来れば今後も会いたい
「大事な、友達だから」
 小さく呟く。
 こんなに仲良くできる友達なんて、はじめてだから。
 そのまま、しばらくマオの寝顔を見つめる。
 マオの寝息が聞こえる。
 しーんと静まり返った家。
 外の音がしない。
 自分の自宅ならば、車の音なんかがずっとするのに。
 そう思っていると、かちゃかちゃと、音がした。それから水の音。……台所?
 隣のマオを起こさないように、そっと布団から抜け出すと、台所に向かう。
 行ってみると、想像どおり隆二が一人、ダイニングテーブルで文庫本を片手にコーヒーを飲んでいるところだった。
「あれ、起こしちゃった?」
 沙耶の姿をみて、意外そうな顔をする。
「あ、それとも、眠れない? あいつ寝相が悪いから」
「あ、いえ。ちょっと、お話があって。いいですか?」
「俺に?」
 不思議そうな顔をしたものの、自分の向かいの椅子を勧めてくれる。
 そこに座った。
「なんか飲む? って、コーヒーしかないけど」
「大丈夫です、ありがとうございます。……あの、マオの、ことなんですけど」
「うん?」
 不思議そうな顔をする彼に、少し躊躇いつつ、先ほどのマオの話をした。ゆっくりと、誤解を与えないように気をつけながら。
「差し出がましいかもしれませんが、でも、マオはきっと、言わないだろうから」
 そう話を締めくくる。
 隆二はいまひとつ感情の読めない顔で、黙っていたが、
「……そっか」
 ゆっくりと呟いた。沙耶の顔を正面から捉える。
「ありがとう。急に気にしないのは無理だけど、心にとめとく」
「はい」
 気ぃ使わせてたか、と小さくぼやいた。
「二人だけで、お互いこの距離で心地いい関係を築けていると思うんだけど、でも二人だけだから、言えないこともあるんだよな」
 それは沙耶に言っているというよりも、独り言に近い言葉だった。受け流すか少し悩んでから、
「……神山さんも何かあるんですか? マオに言えないこと」
 そっと問いかける。
「ずるい話だよ」
 もしかしたら、聞いて欲しかったのかもしれない。隆二はあっさりと話し始めた。
「ずるいこと考えている。俺がマオに置いていかれることはあっても、その逆はない。万一、俺が消えたら、マオは食事をとれず消えることになる」
 マオが現在、存在するために使用しているエネルギーは全て神山隆二から供給されているものだ。他人のもので代用はきかない。だから、隆二が消えれば、マオも消える。
「そのことに安心しているんだ」
「安心?」
「俺は置いて行かれる側のままでいられる、ずっと。置いていく側の気持ちをわからなければ、俺はずっと被害者面をしていられる。悲しいとか寂しいとか言っていればいい。どっちがいいとかじゃないけど、俺にとってこれは大きなことなんだ」
 そこで彼は小さく微笑んだ。どこか困ったように。
「俺は一生、俺を置いていった人を責めていれば済むんだから」
 その言葉を受け止めて、沙耶は小さく溜息をついた。
 なるほど、ひどいことだ。ひとでなしだ。それは間接的に、マオの死を望む言葉だ。
 だけれども、それが彼にとって重要なことであろうことも、なんとなくわかった。以前聞いた恋人のことはもちろん、その他にも大勢、彼よりも先に亡くなった人がいることだろう。悲しくて、寂しくて、詰りたいことだってあったろう。どうして置いていったのか、と。それが悲しいことも、寂しいこともわかる。
 でも、置いていく方だって、好き好んで置いていっているわけではない。残される人のことが心配で、きっと泣いてしまう友人のことが心配で、つらい。
 そんなこと、彼がわかっていないはずがない。いくらひとでなしとはいえ、そこまで鈍くもないし、考えが及ばないわけでもない。わかった上で、彼は悲しい寂しいという。そうすることで、この永遠に折り合いをつけているのだろう。
 置いていった人の気持ちまで抱えて、永遠を生きろというのは、酷過ぎる。
「……それは、マオには言えませんね」
 沈黙の後、ようやくそれだけ口にした。
「だろ?」
 澄ました顔で、隆二がコーヒーに口をつけた。
 確かに、置いていった人の気持ちまで抱えて、永遠を生きろというのは、酷過ぎる。それでも、
「あの、」
「ん?」
「変なこといいますけど。こんなこと、あたしに言われることじゃないと思うんですけど」
 この機会に、彼にこれは言っておきたい。
「あたしが死んだら、マオはきっと泣くだろうから。そのときは、よろしくお願いします」
 頭を下げる。
 わざわざ言わなくたって、彼ならばちゃんとマオをフォローしてくれるだろう。ひとでなしだけれども、マオには優しいから。本当はちゃんと、優しいから。
 それでも、心残りになりそうなこと、言っておきたかった。今すぐではない。それでも、その時は確実にくる。
 確実に、自分はあの子を置いていくことになる。
「……うん」
 小さく彼は頷いた。困ったように微笑んで。
「……あいつ、ちゃんとわかってんのかね」
「何をですか?」
「自分が人間じゃないこと。大道寺さんが人間なこと」
「……ああ」
「時々、心配になる」
 マオがいないからか、神山隆二はいつもよりも素直に心境を語ってくれている。
「そう、ですね」
 マオはいつだって同じように、楽しそうに笑いかけてくれる。屈託なく。人間と幽霊の差なんて、ないかのように。覚えていないけれども、きっと最初からそうなのだろう。
「知識としてはわかっているでしょうけど」
「感覚として理解はしてないよな」
 隆二が軽く肩を竦めた。
「ちゃんと理解して、意識して、目をそらさないでいてもらわないと。じゃないときっと、あいつも後悔する」
 俺みたいに、と小さく言葉が転げ落ちる。それから、
「そしたら泣くだろ、あいつ。誰が慰めると思っているんだ」
 面倒くさそうに、当たり前に呟かれた言葉に小さく微笑んだ。
 ああ、マオが泣いたら慰めるのは、彼にとって当たり前のことなのだ。それならば、やっぱり大丈夫だ。
 そのことを再確認する。
「マオのこと、心配ですけど。でも」
 隆二に微笑みかけると、続けた。
「マオには神山さんがいるから大丈夫ですよね」
 笑顔を向けたものの、
「……は?」
 返って来たのは間抜けな声と顔だった。
「え?」
 それに思わずびっくりしてしまう。
 なんでそんな顔をするのだろうか。変なことを言ったつもりはない。事実の確認のつもりだったのに。
「……あ、いや」
 彼はなんだか困ったように首筋に手をやると、
「今まで俺にはマオがいるから大丈夫とは言われたことがあったけど、逆はなくって。あ、マオには俺しかいないからっていう言い方はされたことあるけど。そっか」
 なんだか、照れたように笑って続けた。
「マオには俺がいるから大丈夫なのか」
 再確認したかのように、笑う。嬉しそうに、柔らかそうに。
 なんだか少しずれている。やっぱり彼はひとでなしだ。だけど、とっても優しいひとでなしだ。
「ええ、マオには神山さんがいるから大丈夫です」
 微笑むと、念をおすようにもう一度告げた。

 そのまま少し話をしてから、また布団に戻った。
 隣の布団で眠るマオの、豪快な寝相に苦笑すると、ずれた布団をかけ直す。
 この子には、神山隆二がいるから大丈夫。
 だから、
「明日は何しようか」
 今は未来のことなんて考えないで、楽しもう。
 明日は何をしよう、どこに行こう。どこに連れて行ってくれるのだろう。
 きっと楽しい明日のことを思って、ふふっと笑うと、目を閉じた。
 
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