表立って載せるほどではない小噺と、あとがき。 その他キャラ設定などなど、徒然なるままに書き連ねるページ。 

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永遠の友達1

調律師とひとでなしのコラボもの。
両方とも完結後の時間軸なので、そんな感じで。

 **
 三カ月に一度、研究所でマオの検査をするために上京している。大体いつも一拍二日。研究所の宿泊施設で落ち着かないながらも泊まっている。ついた日の午後と、二日目の午前に少し検査。それが終わったら、帰る前に買い物なんかをするのがいつものパターンだった。
「さて、どうする?」
 今回も無事検査が終わり、隆二がマオに尋ねると、
「あのね、今日はね、沙耶とお買い物行く約束してるの! 今、電話してみるね!」
 ケータイ片手に嬉しそうに微笑まれた。
 は? 勝手になにいってるんだ??
 思っている間にも、マオは沙耶に電話をかけはじめている。
「……そういうことは先に言えよ。別にいいけどさ」
 隆二が呟いた言葉は、嬉しそうなマオの耳には届かなかった。
 
 沙耶と龍一と合流し、軽くお昼を食べたあと、駅前のファッションビルにやってきた。
 なんだか楽しそうに服を選んでいる沙耶とマオを、龍一と隆二は通路からぼんやりと眺めていた。
 初対面ではないものの、間に沙耶もマオも挟まないなんてことは初めてで、なんとなく気まずい。
「……悪いな、せっかくの日曜なのに付き合わせて。デートとかだったんだろ?」
 沈黙に耐えられなくなって、隣の龍一にそう言うと、
「それはまぁ、そうなんですけど」
 彼は別段否定もしなかった。素直だな。
「でも、俺は別にいつでも沙耶に会えますし。それに、沙耶のああいう楽しそうな顔見るの、好きなんで」
 彼の視線は、マオのワンピースを水色とピンク、どちらにするか真剣に選んでいる沙耶に向けられている。女子特有のきゃっきゃした空気がそこにはあった。確かに、沙耶のああいう顔はあんまり見ないかもしれない。
 それにしても、
「……ああ、そう」
 なにこいつ、のろけ?
 さらっと照れくさいことを言い放つ、隣の少年を見る。対外変わってるな、こいつも。
「……正直、最近どうなわけ。大道寺さんのあれ」
 結局ワンピースは水色に決めたらしい。今度は同じ柄のスカートを見ている。これは沙耶の分のようだ。
 マオと楽しそうに話している彼女は、なんでもないように見えるが、体内に龍を飼っていてそのせいで結構厄介なことになっていることを知っている。あれは見た感じ、あまりいいものではない。
「俺はそこまで詳しくないんですけど、でもまぁ落ち着いているみたいです。仕事、セーブしてるのもあるだろうけど」
「そっか」
 なら、まあいいのだが。これは沙耶の身を案じているのが半分、万が一沙耶がマオのことを忘れたら落ち込むマオを取り繕うのが大変だなーという気持ちが半分だ。
「そちらは? どうなんですか?」
「ん?」
 なんの話かわからず、龍一を見ると、
「沙耶に聞きました」
 言いながら、龍一は右手を軽く振った。
 ああ、その話、ね。
「あー、うん、どうなんだかなー」
 沙耶はピンクのスカートに決めたらしい。レジに向かうのかと思いきや、マオは上にかかっている帽子が気になるようだ。左手を伸ばすマオに代わって、これ? と沙耶がとってあげた。ありがと、とマオが左手でそれを受け取る。さっき選んだワンピースを右腕にかけてはいるが、その右手は動いていない。
 一条の一件で、欠損した右手。
「装飾義手ですか?」
「ああ。実用性はない」
「筋電義手は、あわなかったとか?」
「そこはほら、ひとでなしだから」
「ああ……」
「あいつ、見た目を一番気にしてるから、霊体に戻ったときも使えるっていうのが一番いいんだ。普通のだと、戻ったときに外れてしまうから」
 研究所の特注品は、見た目を補う意味しかもたない。そこら辺は霊力使って動かせるもんでも作れよ、と思っているのだが。
「しかし、詳しいな」
 義手についてなんて、マオのことがあり、慌てて調べるまで知らなかったのに。
「専門ではありませんが、授業で多少やったので」
「今は……、大学生?」
「はい、医学部で」
「あー、なるほど。そういう……」
 レジに並ぶ沙耶を見る。おおかた、彼女のためなんだろう。こいつは多分、そういう人だ。
「……なにか?」
 含むところを感じとったのが、龍一が少し嫌そうに問いかけてきた。
「いいや」
 なんていうか、これはそうだな。
「羨ましいなと思って」
 素直に思ったことを口にする。そうそう会うわけでもない、奇妙な縁と距離感のこの少年になら思ったことを素直に言ってもいいかな、と思ったのだ。
「は?」
「大切な人と一緒にいる時間を守るために努力しようと、決意する勇気と行動力が」
 自分にはなかった。かつて自分がやったのは、逃げ出すことだけだ。
 龍一が、変なものを飲まされたかのような顔をする。
 そういえば、この少年はどこまで自分の事情を知っているんだっけ? 沙耶を介しての付き合いが殆どだからよくわからないが。
「……コメントしにくいこと、言いますね」
 しぼりだすようにして龍一が呟いた。
 それに思わずちょっと笑った。
「俺はただ、そうするより他になにも思いつかなかったからこうしているだけです。それに」
 龍一は小さく微笑みながら続けた。
「今は、どうなんですか?」
 一瞬、何を言われたのかわからなかった。
 龍一の視線が、こっちに向かってくるマオに向いたことで意味を察した。
 そういうところが、本当、自分がひとでなしなところだ。
 マオは茜とは違う。マオがいなくなったら困るけれども、それは茜に対する想いとは違う。自分が好きなのは今も昔も、これからも、茜だけだ。それでも、確かにマオは大切だ。
「今は逃がしてもらえないんだ」
 マオは茜とは違う。マオは茜のように、逃げ出す自分を許さない。もしも逃げ出しても、地の果てでも、地獄の底までも追いかけてくるだろう。
「なるほど?」
 龍一が楽しそうに笑った。
「おまたせー!」
 紙袋を持った沙耶とマオが近づいてくるから、話はそこで終わった。

 そのあと、夕方まで買い物したり、クレープを食べたり、沙耶とマオは楽しそうに過ごしていた。龍一と隆二は、二人並んでそれについていく。黙々と。
「マオ、そろそろ駅行かないと」
 時計を確認して声をかけると、マオの顔が一瞬で悲しそうに歪んだ。
「……もう?」
 いや、そんな顔すんなって、しょうがないだろ、自宅の方終電はやいんだから。
「また今度ね」
 そんなマオを見て、沙耶が困ったように笑いながら言った。
「……うん」
「今度は、あたしが遊びに行ってもいい?」
 沙耶の質問に、一瞬でマオの顔が楽しそうに華やいだ。
「え、来てくれるの?」
「うん。……いいですか?」
 俺に確認するのおせーよ。
「もちろん」
 別に反対もしないけど。
「……マオの友達だからな」
 恐らく、唯一の。
 付け加えると、沙耶が微笑んだ。
「友達だもんね!」
 新しい約束に機嫌はなおったのか、マオが嬉しそうに笑った。

 ホームまで見送りに来てくれた、沙耶と龍一を残し、新幹線は動きだした。
 ぎりぎりまで大きく手をふっていたマオだが、駅が見えなくなるとすぐに寝息をたてはじめた。はえーよ。
 マオが抱えた鞄がずり落ちそうになったので、とりあげると足元に置いた。
 中にちらりと見える。いつか、自分がマオととったような写真シール。沙耶とマオが楽しそうな顔でうつっている。沙耶もはじめてだったらしいが、楽しそうだった。おまけ的に龍一と隆二もいる。
 あの写真シールの機械には、学生っぽい子達が友達同士で何組も来ていた。そういう、友達とのコミュニケーションツールなのだろう。
「……友達ねぇ」
 小さく呟く。
 さてはて、こいつはどこまでわかっているんだろうか。大道寺沙耶が人間で、自分が半分幽霊であることを。いつかくる別れのことを。
 細かいことを気にしないで、思うままに生きるのは、マオのいいところだが、そのままだと少し心配だ。
 別れは避けられない。
「……そうなったら、お前、泣くだろ」
 誰が慰めると思っているんだ。
 少しは意識して、覚悟しておいて欲しいものだ。悲しみが避けられないものだとしても、多少は軽減させて欲しい。
 自分の要求が、随分と我が侭でひとでなしなことはわかっているが、それでもそう思わずにはいられない。
 それと同時に、マオは最期まで彼女と過ごせるといいな、とも思っている。自分のように逃げたりせず。
「ま、そのうち考えればいいか」
 今わざわざ考えることではない。
 そう結論付けると、自分も少し眠ろうと目を閉じた。
    23:27 | Top
 
 
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