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表立って載せるほどではない小噺と、あとがき。 その他キャラ設定などなど、徒然なるままに書き連ねるページ。 

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葬儀

ひとでなしと調律師のコラボもの。
どちらも完結後の話。寧ろ20年ぐらい経ったあとのお話。

死にネタ注意。


**
 円は通夜の弔問客の中に、意外な姿を発見した。
 意外も何も、連絡したのは円自身だが、まさか来るとは思わなかった。
 隣の従弟にそっと耳打ちすると、焼香を終えさっさと帰ろうとするその背中を追いかけた。
「神山さん」
 外に出たところで名前を呼ぶと、神山隆二は立ち止まり振り返った。
「ああ」
 円の顔を見ると、小さく肩をすくめる。一言も、お悔やみの言葉を発しないのが、とても彼らしいと思った。
「ご無沙汰しています」
「こちらこそ」
「マオちゃんも」
 彼の肩辺りで、泣きそうな顔をしている幽霊に微笑みかける。
『……円さん、連絡してくれてありがとう。この格好でごめんなさい』
 言ってマオは、自身の白いワンピースを軽く引っ張る。
「ううん、来てくれてありがとう」
 本当に意外だった。彼女が実体化しているときならばともかく、幽霊の期間にわざわざ来ないだろうな、と思っていたのだ。
「沙耶も、喜んでると思う」
 言うと、マオの顔がくしゃりと歪んだ。
 あ、泣くかな、と思ったけれども、意外にも彼女はそのまま耐えた。
「もう帰るの? 龍一君に会っていかなくていいの?」
「あー、いやだって、無理だろ」
 困ったように首筋に手をやると、隆二が苦笑いする。
「あのさ、あの女の子。あれ、大道寺さんの……、じゃないな。今なんだっけ」
『榊原だよ』
「の、娘だろ?」
「美実? ええ」
「似てるよな、すぐわかった」
「本当、困っちゃうぐらい」
 沙耶の娘は若い頃の沙耶にそっくりだ。今はもう大学生になったが、高校の時は沙耶と同じ瀧沢に通っていたため制服が一緒で、どきりとすることが何度かあった。
「だけどさ、見えないんだろ?」
「……ええ」
 話の流れがなんとなくわかって、円は小さく息を吐く。
「あの子がいる前に、俺がのこのこ出て行く訳にはいかないだろ」
 出会ったときと変わらない、二十代前半の青年の容姿を保ったままの隆二が続ける。
「今はもう、娘のあの子の方が外見年齢は近い。榊原さんとの知り合いって言ったって、信じてもらえないよ」
「そう、ね……」
 最初に会ってから二十年以上、その分自分は年を取った。それは円だけに限らない。
「悪い。あの少年にはよろしく言っといて」
 今更もう、少年っていう年でもないけどね。そうは思ったものの、そこにはつっこまずに円は頷いた。
 出会った時と変わらない、十代後半の少女の容姿を保ったままのマオが今にも泣きそうだったから。殊更に、彼女と自分との違いをアピールするつもりにはなれなかった。
「わかった。今日は本当に、ありがとうございました」
 頭を下げる。故人の姉として。
『……円さん』
 震える声に首を傾げる。
『本当に、連絡してくれてありがとう。今日、来れてよかった』
「……うん。マオちゃんは、沙耶の友達だからね」
『……うん』
 マオはこくり、と頷くと、隆二の背中にしがみつくようにして顔を隠してしまう。
「っと、そろそろ戻らないと。また、連絡するね、マオちゃん」
『うん……』
「今度はまた、こいつが実体化している時に」
「ええ、待ってる」
 それじゃあね、と片手を振ると、部屋に戻った。


 住宅街をのんびり歩いていた隆二は、
「マオ」
 背中にしがみついたままの、マオに声をかける。
「もういいよ。よく我慢したな」
 そう言うと、
『……うん』
 マオの小さな返事が返って来た。
 そのまま黙って歩いていると、やがて小さな嗚咽が聞こえてくる。
 本当によく我慢したと思う。絶対に途中で泣くと思っていたのに。
 円から連絡を受けた隆二が告げたときに少し泣いただけで、そのあとはここに来るまでの電車の中でも泣いていなかった。
 マオなりに、なにか思うところがあってだろう。
 彼女の具合がもうずっとよくないのは知っていた。マオもそれはわかっていて、覚悟していたと思う。
 でもまさか、はじめてマオにとって身近な人が亡くなるというのが、彼女だとは思わなかった。喪失の痛みはいつになっても慣れないのに、いきなりでかすぎるだろ、と密かに隆二はマオを案じていた。
 思ったよりは、気丈に振る舞っているけれども。
 これからも永遠にあり続けるのならば、同じことを繰り返すことになる。そのことはさすがにマオもわかっているのだろう。
「なー、今日は歩いて帰ろうと思うんだけど、どう思う?」
 背後の嗚咽が少し収まったところでそう声をかける。
『……遠いよ』
「知ってるよ。でも、ひとりじゃ俺、電車乗れないし」
『なれなよ。そろそろ』
 背後の声に少し呆れた色が混じり、それに少し安心する。
『……それに、来る時乗ってたじゃん』
「緊急事態だったから。それにマオに訊いたじゃん、全部」
『……隆二は本当、隆二だね』
 くすんっと鼻をすすりながら言われた言葉に少し笑う。
「ああ。だからこれからも頼むよ」
 少しの間のあと、
『ん』
 マオが小さく返事をして、隆二の首筋に回している手に力をこめた。

 **

こういうのわざわざ載せるなよな、という気もしつつ。
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