表立って載せるほどではない小噺と、あとがき。 その他キャラ設定などなど、徒然なるままに書き連ねるページ。 

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悪夢

ひとでなし本編完結後の話なので注意。

**
 ここは、どこだろう?
 どこだかわからない。ただ暗い場所に隆二はいた。
 視線の先、僅かな光が見える。そちらに向かって歩き出す。
「……?」
 視界の先に、人影。目を凝らす。
 肩より少し長い綺麗な黒髪、線の細いシルエット。見覚えのある柄の、着物。
「茜っ」
 名前を呼ぶ。叫ぶ。
 人影は振り返る。隆二のよく知っている笑顔を浮かべて。
「茜っ」
 駆け出す。
 手を伸ばす。彼女の右手を掴み、
「あかねっ」
 その瞬間、彼女は白い骨となり、闇の中へと崩れ落ちた。
 喉の奥で悲鳴があがる。
『りゅーじ』
 背後から舌足らずな声で呼ばれて振り返る。少し離れたところに、ふわりふわりとマオが浮いていた。
「マオっ」
 手を伸ばし、マオの右手を掴もうとするも、
「っ!」
 その手は宙をきった。
 マオの右手が、消えた。
『いやっ!』
 悲鳴をあげるマオに近づこうとするも、思ったように体が動かない。ほんの少しなのに、手が届かない。
「マオっ!」
「助けてっ」
 悲鳴はいつの間にか肉声に代わり、実体化したマオに手を伸ばす。ようやく左手が届こうとしたその時。
「やっ……」
 マオの目が驚いたように見開かれ、くたりと体が崩れ落ちる。慌てて受け止める。
「マオ……?」
 おそるおそる声をかける。返事はない。
「マオ? マオっ!」
 マオの背中に刺さった、刃物。赤い何かが白い衣服を染めていく。
「あの時、わたしを殺しておけばよかったのに」
 声がして顔をあげる。
 一条稔が、血まみれの状態で笑った。

「っ!!」

 声にならない悲鳴をあげて飛び起きた。
 真っ先に飛び込んできたのは、なんだか騒々しいテレビの音だった。
 手に触れる、慣れた感触。赤いソファー。
 辺りを軽く見回して、事態を理解する。
 ああ、よかった夢か。
 誰も見ていないのをいいことに、両手で顔を覆うと盛大な溜息をつく。
 ろくでもない夢を見させやがって。絶対、お前のせいだ。と、寝る前まで読んでいたホラー小説に何となく八つ当たり。ひらいたまま落ちていたそれを乱暴に閉じると、ソファーにおいた。
 時計を見る。夜中の三時。
 マオは今、実体化期間中だから、マオ用にあてがった部屋で寝ていることだろう。あれは夢だから大丈夫。何も気にすることはない。そうだな、珈琲でも飲もうか。
 見ていないテレビを消すと、台所に向かう。
 向かおうとして、
「……まあ、念のため」
 言い訳するかのように小さく呟くと、方向転換。マオのいる部屋に向かう。
 まあ夢だからなんでもないんだけれども、一応。
 寝ているだろうから、そっと襖をあける。
 随分と豪快な寝相で眠りこけているマオがそこにはいた。
「……なにやってんだか」
 安堵と呆れが混じった溜息をつくと、小さく呟く。
 それからそっと近づくと、毛布をそっとかけなおした。
 規則正しい寝息に、それでもやはり安心する。
 そのままなんとなく佇んでいると、
「……りゅーじ?」
 名前を呼ばれた。
 枕に頬をのせたまま、マオの目がうっすらと開く。
「ああ、悪い。起こしたか?」
「んー。どーしたの?」
「いや、別に。寝相悪いな、お前」
「んー」
 口は開いたものの眠そうなマオに小さく笑いかけると、
「起こして悪かったな、おやすみ」
 軽く頭を撫でて立ち去ろうとする。その手を、
「りゅーじ」
 マオが掴んだ。
「ん?」
 振り返ると、思ったよりも真剣な瞳がそこにあって驚いた。
 ぎゅっと、寝起きとは思えない力強さで手を握られる。
 ベッドに横になったまま、それでもはっきりとした口調で、
「あたしはちゃんとここにいるから、大丈夫だよ」
 マオが告げた。
「大丈夫」
 もう一度そういうと、にっこりと笑う。
 それに、なんて言葉を返していいのかわからなくなる。
 隆二が固まっている間に、マオの瞳はまたとろんっと眠そうに閉じられ、隆二の手を掴んでいた腕もすとんっとベッドの上に落ちた。
 それで漸く、呪縛がとけたかのように動けるようになった。
 なんとなく溜息を一つ。
 まったく、なんでバレたんだか。妙なところで鋭い。
 再び夢の中にはいりこんだマオの頭をそっと撫でると、
「おやすみ」
 小さく呟いて、今度こそ部屋を後にした。

 **

 いつも見慣れた部屋の中。テレビの前、赤いソファーに隆二が一人座っていた。
 マオはそれを、どこか上の方から見下ろしていた。
 だらりとソファーに腰掛けた隆二は、片手にもった本を読んでいるように見えた。
 いつもどおりに見えた。
 でも、それでも何故かマオには隆二が泣いているような気がしたのだ。
 だから、隣にいこうとする。上手いこと言えないし、元気にしてあげられるかわからないけれども、それでもせめて隣にいたいと思った。それぐらいしかできないから。
 それなのに、何故だろうか。
 体が上手く動かない。ちっとも隆二のところに行けない。
 手を伸ばす。届かない。
『りゅーじ』
 声をかけても隆二はこちらを見ない。
 どうして?
 隆二がひとりぼっちで悲しんでいるのに、どうして隣にいけないの? 一人にしないと約束したのは、こんな隆二が見たくなかったからなのに。
 なんで。
 そこまで考えて、気づいた。
 どうして隣に行けないのか。
『……隆二っ』
 どうして隆二が一人なのか。
『ごめんなさいっ』
 あたしが約束を破ってしまったから。一人にしないという約束を破ってしまったから。あたしが消えてしまったから。
『りゅうじっ』
 絶対に一人にしないって言ったのに。

「ごめんなさいっ!」

 自分の叫び声で目が覚めた。
「……あれ?」
 マオは体を起こすと、辺りを見回す。
 そこは見慣れた自分の部屋だった。色々あったあと引っ越して来た、かつて隆二が茜と住んでいた家。そこに一部屋もらった自分の部屋。
 よく覚えていないけれども、なんだかとっても嫌な夢を見たことを覚えている。その証拠に、なんだか泣いていたみたいだ。頬が濡れている。
 目元を袖で拭う。
 枕元のケータイに手を伸ばすと、夜中の三時だった。
 隆二はどうしているだろうか。
 この時間ならきっと、本を読んでいるか、本を読んだまま寝ているころだろう。
 実体化しているときに夜中に起きていると怒られるから、このまま、また寝た方がいい。そうは思うものの、このままじゃどうにも寝付けそうになかった。
 ちょっと悩んでから、ベッドから降りる。
 毛布を半ば引きずるようにして抱えると、ソファーのある部屋に移動した。
 ソファーの部屋に行ったら、案の定隆二は本を読んでいるところだった。
 足音で気づいたのか、隆二は顔をあげると、少し意外そうな顔をした。
「どうした?」
「……ここで寝てもいい?」
 怒るかな、と思いながらきいてみる。
 隆二は少し考えるような顔をしていたが、
「今日だけな」
 ふっと小さく笑うと、ソファーから降りて、マオに場所をあけてくれた。
 妙に優しいから、もしかしたら嫌な夢みたことバレてるのかもしれない。そう考えるとなんだか不満だが、仕方ない。背に腹は代えられない、というやつだ。
 ソファーに横になる。
 振り返った隆二が、毛布をちゃんとかけてくれた。
「寒くない?」
「うん」
「なら、いいや。特別だからな」
 言って隆二はマオの頭を軽く撫でると、
「おやすみ」
 言ってまた、本に戻った。
 その後ろ姿を見る。
 ちょっと手を伸ばすと、その頭に手が届いた。
 いつもしてもらうみたいに軽く隆二の頭を撫でる。
「マオ」
 呆れたように名前を呼んだだけで、隆二は振り返らない。
 でもそれでいい。
 すぐそこにいてくれるなら。
 今度はちゃんと眠れそう。
 手をおろすと、
「おやすみなさい」
 呟いて、瞳を閉じた。
 


**

終わったところではじまるものがたり。
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