表立って載せるほどではない小噺と、あとがき。 その他キャラ設定などなど、徒然なるままに書き連ねるページ。 

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電話帳の三番目

ひとでなしと調律師のコラボ小説。
Stray catDog days
ひとでなしの父の気がかりの最初のころのマオが、調律師の連載終了後ぐらいの沙耶に会いたいな、と思うお話。
多少ネタバレになるので、本編未読でネタバレ気にする方はお気をつけ下さい。

あとなんか、ノリだけで書いたのでノリで読んでね。


 **
「沙耶に会いに行きたいの」
 実体化したあと、やりたいことリストを作っていたマオが、突然そう言った。
「……さや?」
 聞いたことあるようなないような名前に一瞬隆二は悩み、
「ああ、あの、マオが家出したときの」
「そー」
 うんうんっと大きくマオが頷く。
 拗ねたマオが家をでてふらふらしていた時に声をかけてくれて、仲良くなったという女性。大道寺沙耶。エミリにちょっと近い仕事をしていて、幽霊が見えるらしい。
「びっくりするかな? でも沙耶ならきっと、実体化したこと喜んでくれると思うの」
 あの人なら、まあ、会っても害はないだろう。
「ま、いいんじゃん? 暇だし。行くだけ行ってみるか」
 軽く結論つけると、
「うん!」
 嬉しそうにマオが頷いた。


 一海直純は、一仕事を終えて一海の実家に戻るところだった。
 そういえば、この辺りは以前沙耶が住んでいたところだな。
 龍が暴走した一件以来、引っ越してしまったけれども。
 そんなことを思って歩いていると、なんだか不審な人物を見つけた。見た目は普通の男女だが、二人とも明らかに人じゃない。
 別にまあ人の危害を加えないのならば、直純のかかわるところではないんだが。
 そう思いながら、なんだかぶーたれている女性と、それを宥めている男性をちょっと離れたところから眺める。
「だから引っ越しちゃったみたいだし、仕方ないだろ、諦めろ」
「でもぉー」
「行き先わかんないんだから」
「だってぇ」
 なんだかむくれた様子の女性は、さらりと爆弾を放った。
「沙耶に会いたかったんだもん」
 明らかに人ではない者の口から発せられた、妹の名前に心臓が跳ねる。
 これはどうしたものか。そんなに悪い人にも見えないが、人は見かけによらないし。
 少し悩んだ後に、
「あの」
 意を決して声をかけた。
「お探しなのは、大道寺沙耶ですか?」
「……そーだけど」
 直純を見上げた女性が不思議そうな顔をする。
「ん? なんか、あの煙草のおねーさん似てる?」
 ついでになにか呟いていた。さては円のことだな。
「あなたは?」
 女性と直純の間に一歩、割って入るようにしながら男性が問いかけてくる。それはこっちの台詞だっつーの、とは思いつつも、
「沙耶の兄です」
 告げた。


「へー、訳ありっぽいのは知ってたけど、実体化したのねー」
 と、円が暢気に呟いた。
 直純はあのあと、沙耶が昔助けた幽霊だということを聞き、ついでに円と面識があるというので円を呼び出した。四人で入った甘味処。
 一人で餡蜜を美味しそうに食べるマオを、なんだか微笑ましそうに円は見ている。
「おねーさん、髪の毛切ったの、すごくいいね」
 餡蜜から顔をあげたマオが笑う。
「あら、ありがとう」
 うふふっと円も笑い返した。
 女性陣二人を見ている分にはなんだか微笑ましい。
 男性陣二人は、それを少し呆れてみていた。
「ええっと、それで沙耶に会いたいんだっけ?」
「そうなの!」
「マオ、スプーンを振り回さない。……見てのとおりの訳ありだから、迷惑ならはっきり言ってもらっていいから」
「……迷惑、ではないんだけれども」
 円が頬に手をあてて、小さく息を吐く。
 ちらりと視線を向けられて、直純は軽く肩を竦めてみせた。
 会わせることになんら問題ない。が、果たして彼女のことを沙耶は覚えているだろうか。万が一忘れていたときのことを考えると、素直に引き合わすわけにもいかない。
 従姉弟同士、目で会話していると、
「ごちそうさまでした」
 マオが餡蜜を食べ終わってしまった。
「んっと?」
 そして二人を見る。
 どう答えたものかと思っていると、
「マオ」
 隆二が口を開いた。
「顔と髪に黒蜜が付いてる」
「えっ」
「触るな。べとべとするから。ほら、手洗って来い」
 と、トイレの方を指差す隆二に、
「うん」
 慌てたようにマオは立ち上がり、そっちに消えて行った。
 黒蜜ついてたか? なんて直純が思っていると、
「じゃあ、そういうことで」
 隆二も立ち上がり、何故か店外に消えていった。
 これは……。
「内緒話は今のうちにどうぞ、ってことよねー」
 円が呟いた。
「だな。それじゃあ、するか、内緒話」
「そーね。で、どーする? 会わせる?」
「ぶっちゃけ、覚えてるかどうかで言ったら、忘れてる可能性の方が高いよな」
「そこよね。まあ沙耶も最近落ち着いたし、前みたいに忘れていたからって取り乱したりはしないだろうけども」
「あの子の方がいい気はしないだろ、忘れられてたら」
「そーよねー。予め沙耶に聞いてみて覚えていたら会わせる?」
「仮に忘れていた時、なんていって諦めてもらうわけ、あの子に」
「んー、いっそ、説明しちゃう? 沙耶のこと」
「勝手に?」
「向こうも訳ありなのは見たままだし、沙耶の龍のことは見えていたみたいだし、悪くはないんじゃないかしら? わざわざ言いふらさないでしょ」
「それも、まあ、そうか」
「そういうことで、説明してあげて、直」
「俺がかよっ」
 などと言っていると、
「……あれ?」
 戻って来たマオが、少し不安そうに首を傾げた。
「おにーさんなら外。電話かかってきたみたいよ。見てきてくれる?」
 円がしれっと嘘をつく。
「電話? エミリさんかな?」
 なんて言いながら、マオが外に行く。
 そうして隆二を連れて戻って来た。
「それで?」
 元通り着席したところで、隆二が話を促すように二人を見た。
「会わせる前にお話しておきたいことがあるの」
「ん?」
「沙耶のことなんだけどね。もしかしたら、あなたのこと覚えていないかもしれない」
「……え?」
 一瞬でマオの顔が泣きそうに歪んだ。
 お前、ストレートすぎるんだよ。隣の従姉を睨む。
「最後まで聞こう」
 ぽんぽんっと隆二がマオの頭を撫でる。
「別にあなたのことを嫌いになったとかじゃないのよ? ね、直」
 だから俺が説明するのかよ。
「沙耶の龍。あれが諸悪の根源なんだが、あれは沙耶の体内に大人しくおさまっている代わりに、代償として沙耶の記憶を喰らうんだ。少し前に暴れたことがあって、それで沙耶の記憶の大部分が喰われてしまった」
「……ああ。厄介そうなもの体内に飼ってると思ったが、そこまで厄介だったか」
 なるほどね、と隆二が呟く。
 その横で、
「えっとね、……沙耶の龍ってなに?」
 マオが首を傾げた。
「は? だから居ただろ。大道寺さんの中に」
「なにそれ?」
「いや、あの時見えて……」
 そこまで言って、何かに気づいたように隆二は口をつぐんだ。
 それから、
「あー、そうか。勝手に見えるんだと思ってたけど、そういえばお前、俺のことも京介のことも見てもわかんなかったもんな」
 なんだか苦々しく呟く。
「何?」
 バカにされていると思ったのか、マオが睨むようにして隆二を見る。
「マオ、お前、霊視能力がないんだな?」
「れーし?」
「幽霊とかそういうのを見る能力」
「んー? でも、あのとき」
 言いかけてマオが躊躇うように口ごもる。そこに、
「茜だろ?」
 軽く微笑んで隆二が言った。マオが小さく頷く。
「茜が見えていたのは同族だから、だろ。幽霊が幽霊を見えても不思議はない。だけど、最初の時、俺のこと普通の人間だと思ってただろ?」
「あら、そうなの? それじゃあ、確かに見えてないんだ」
 意外そうな声をあげたのは円だった。
「……もしかして、おねーさんには隆二が普通の人間に見えないの?」
「そうね。私には、貴方もこのおにーさんも普通の人には見えないわねー」
 直純も一つ頷く。
「まあ、霊視能力もピンキリだから。ちょっと幽霊が見えるぐらいの人にはわからないだろうけど。沙耶も人間じゃないのはわかっていたんじゃないかしら」
「へー?」
 わかっているのかいないのか、マオは小首を傾げた。
「そっか、じゃあ最初から説明した方がいいのかしら」
 円は呟いて、横の直純を見る。
「……俺がするんですね、はいはい」
 視線だけで全てを読み取ると直純は溜息をついた。
「沙耶には生まれつき龍が憑いているんだ」
「龍が憑いている」
 マオが小声で復唱する。
「言い方悪いが、あれはもう飼っているって言った方がいいだろ。完全に内部で癒着している」
 隆二が呟く。
「……まあ、確かに」
 それに苦笑いしながら直純が頷いた。
「だからそれは祓えない。沙耶と龍を分離することはできない。ここまでは、いい?」
 優しく尋ねられた言葉に、こくりとマオは頷く。
「そして分離することは出来ないとはいえども、本来単独で存在しているはずの龍を、沙耶という小さな器のなかに押し込めている状態なんだ。それがどういうことかというと、龍は沙耶からでて自由に動く機会をいつだって狙っている」
「……狭くて嫌だから」
「そう。それを封じ込めるために必要となるものがあるんだ。それが、沙耶の記憶」
「……記憶」
「それを喰わせておけば、とりあえず龍は大人しくなるんだ」
 マオはしばらく考えるように視線をしたに向けた。それから、
「……その龍を大人しくさせるために、沙耶はあたしとの記憶を食べられちゃったかもしれない、っていうこと?」
 ゆっくりと顔をあげると、恐る恐る呟いた。
「うん、そうなんだ」
 それに直純は出来るだけ優しく微笑みながら頷いた。
「可能性は高いよ」
「だからね、沙耶に会わせるのはいいんだけれども、そういう可能性があるっていうことを貴女には知っていて欲しかったの。そして、その上で聞くわ」
 円はマオの瞳を正面から捉えると、ゆっくりと尋ねた。
「それでも貴女は、あの子に会いたい?」
「会いたいよ」
 返事はすぐに返って来た。なんの躊躇いもなく。
「……忘れているかもしれないのに?」
「だって別に沙耶があたしのこと嫌いになったからとかじゃないんでしょう? だったら問題ないんじゃないの?」
「忘れていたとき、どうするの?」
「どうするのって、え、どういうこと?」
 困ったようにマオが隆二の顔を見る。
「……大道寺さんが忘れていたら、会話とかやりにくいんじゃないかっていう話」
 呆れたように隆二が解説する。
「え? なんで?」
「なんでって。初対面っていうことになるんだぞ?」
「だってあたし、沙耶とははじめましてのときから楽しくおしゃべりできたよ? それをもう一回やればいいんでしょう?」
 心底不思議そうなマオの言葉に、一同は沈黙する。
「……え、え、なんか変なこと言った?」
 沈黙に慌てたようにマオは三人の顔を見比べる。
「……うん、まあ、お前はそういうやつだよな」
 最初に口を開いたのは隆二で、小さく笑いながらマオの頭をくしゃりと撫でた。それにすこし、マオが安堵したような顔になる。
「……面白い子ねー。ちょっと、龍一君に似てるかな」
 円が小さく呟き、
「じゃあ、沙耶呼ぶな」
 直純は小さく笑いながら、ケータイを取り出した。


 いいから来て、と行きつけの甘味処に呼ばれた沙耶は、集まったメンバーをみて首を傾げた。
 円と直純はいいとして、あとの二人は、誰だ。見たところ、普通の人間ではないようだけれども、
「沙耶!」
 沙耶の顔をみた瞬間、知らない女の子がぴょんっと跳ねるようにして立ち上がった。とっても嬉しそうな顔。
 ああでも、どうしよう。
 覚えていない。
 覚悟を決めても、決意をしても、慣れない感覚。すぅっと心臓が冷える。
「あの、ごめんなさい。あたし」
「いいのいいの!」
 その子はにこにこ笑ったまま、自分の隣に座っていた青年を椅子から突き飛ばし、そこに沙耶を座らせた。
「……マオ、お前、覚えとけよ」
 椅子からはじきとばされた青年は苦々しく呟きながら、店員が持って来た予備の椅子に腰をおろす。
 円と直純に視線を向ければ、なんだか楽しそうに笑っていて、それを見てなんだかちょっと安心した。このまま流れに身を任せていればいいらしい。
「あのね、あたし、マオ!」
 妙に元気良く片手をあげて、マオが言う。
「あれ、隆二!」
 青年の方を指差して続ける。
「えっと、どうしよう。話したいことたくさんあって何から話したらいいのかわかんないな。えっとね」
 マオが言葉を探している間、他のみんなは何も言わない。だから沙耶も、黙って次の言葉を待っていた。
「そう、まずね、あたしずっとまた沙耶に会いたかったの! この前は本当にありがとうっていうお話とかしたくって」
「……ごめんなさい、あたし、そのこの前ていうのが」
「この前っていうのは、隆二がひとでなしであたしが嫌になってプチ家出したときに匿ってくれたの」
 遮るようにしていわれたことに、覚えはない。
「……語弊だらけだな」
 背後で隆二がそう呟いたから、ちょっと話が盛られているのかもしれない。
「あとね、あたし幽霊だけど実体化したの」
「……それは見て、なんとなく」
「ほんと? やっぱり見てわかるんだー。えっと、それでね。あたしが今日沙耶に会いたかった一番の理由は」
 言いながら鞄からケータイを取り出す。
「メアド教えて!」
 そうしてにっこりと笑った。
 圧倒的な笑顔と、有無を言わせぬ台詞に思考回路がついていかない。ただ、一つだけわかっていることは、沙耶が忘れたことも気にしていないようなことだった。演技とか気を使っているとかではなく、本当に。
「……ごめん、そいつバカだから」
 あっけにとられていると、隆二がそう呟いた。そちらに視線を移す。
「バカなぐらい正直で、まっすぐて、思っていることしか言えなくて、説明とかできないから正直、今なんのことだろうって思ってると思う。ぶっちゃけ、俺もこいつが何考えているのかわかってない」
 だけど、と真面目な顔で隆二が続けた。
「そいつは大道寺さんと友達になりたい、と思っているんだ。もう一度。迷惑だったら断ってもらって構わないんだけど」
 マオに視線を戻すと、笑顔の中に少しだけ怯えの色を交えてこちらを見ていた。
 ああ、そうか。もう一度やり直そうとしているのか。
「……うん」
 沙耶は頷くと、同じようにケータイを取り出した。
「連絡先教えるから、出会ったときのこととか、もう一度ちゃんと教えてくれる?」
 その言葉にぱぁぁっとマオの顔が華やいだ。
「うん! あたし説明とか苦手だけど、する!」
 その笑顔に、ほんの少しだけ記憶が揺さぶられる。確かに、こんな子にあったことがあるかもしれない。よくは覚えていないけれども。
「沙耶も教えてね! えっと、あの男の子とその後どうなったか、とか!」
 龍一のことも知っているのか。そっか、付き合っているって教えたらびっくりするかもしれない。
「もちろん」
 沙耶は微笑んで頷いた。
「友達、よろしくね」
 メアドを交換し合うと、マオがそう言って手を差し出して来た。
 沙耶はその手を躊躇わずに握り返すと、
「よろしく、マオ」


  **

マオって実は見えないんじゃないかな、っていう話。
タイトルは、マオのアドレス帳の話です、隆二とエミリの次。
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