表立って載せるほどではない小噺と、あとがき。 その他キャラ設定などなど、徒然なるままに書き連ねるページ。 

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恵方巻

 きっかけは一月の終わり頃のことだった。
 期末試験まっただ中で、なかには徹夜が続いている人もいて、正常な思考回路が働いていなかったのだろう。あたしも含めて。
 そしてそれは、二月三日のことだった。
 その日は試験の最終日で、終わったから打ち上げ! とかはしゃいでいたあたしたちの前に現れた。
 ぶっちゃけみんな、ソレのことを忘れていたのだ。
「……で、どーすんの、これ」
 治君が小さな声で呟いた。
「どーすんのって」
 郁さんがいつもの面倒そうな声に、少しの呆れをまじえて答えた。
「食べるしか、ないんじゃないの?」
「ですよねー」
 それにあたしも頷いた。
 ローのラウンジで、いつものメンバーでテーブルの上に置かれた恵方巻を眺めた。

 きっかけは、一月の終わり頃のことだった。
 正確に何日だったかはわからないけれども。
 普段はさっさと家に帰って勉強する、という体で生きているあたしだけど、その日はたまたま夕方に民法演習の補講が入っていたので夕飯も学校で食べることにしていた。演習のクラスの皆で、なんとなくラウンジに集まる。コンビニでご飯を買って来たあたしたちの手元には、「まだ間に合う! 恵方巻のご予約は当店で!」と書かれたチラシがあった。
「恵方巻って俺食べたことないなー」
 カップ麺を啜りながら治君が言う。
「あたしもー。サクちゃんは?」
「私もないな。郁子さんは?」
「実家に居た頃は。池田は?」
 しれっとメンバーの中に紛れ込むぐらいには、サクちゃんとの距離感を取り戻した池田君は、
「……ない」
 小声で答えた。
 と、まあそこで話は終わる筈だった。普通ならば。
「じゃあ、予約しようぜ!」
 と、治君がテンション高く言った。
「いいね!!」
 何故かあたしもソレに乗っかった。今思うと、なんでだ。
「二月三日はテスト最終日だろ? 皆でラウンジで恵方巻喰おうぜ!」
「いいね!」
 あたしはさらにソレに乗っかり、
「……ちょっと面白いかも」
 あろうことかサクちゃんまでそう言った。
「青春っぽいわね」
 何故か郁さんまでもそう言った。
「……やってもいいけど」
 さらに言うならば池田くんまでそう言った。
 普段とめるメンバーもとめなかった。それに調子良くした前田君が、
「じゃあちょっと予約しようぜ!」
 とその場で恵方巻の注文票に書き込み、ラーメンをかっこむと注文しにコンビニに行ってしまったのである。
「楽しみだねー」
 なんてあたしは浮かれて言った。
 テスト期間中にもかかわらず補講なんてぶちこんできた教授のせいで脳がちょっと疲れていた。きっとそうだ。


 一本千円もするのである、これ。アホだろ、アホ過ぎるだろ。
 試験が終わったあたしたちは、今とても冷静だ。
 治君がコンビニからうけとってきた恵方巻を見ながら思う。
 恵方巻を食べる文化を否定はしない。
 だがしかし、何故千円もだして、ラウンジで食べようとしているのだ、あたしたちは。なんかこう、恥ずかしい。ビジュアル的に。
「……まあ、うん、だから。食べるしかないでしょう」
 と、郁さんがもう一度言った。
「ええっと、ほら。恵方の方角を向かって、切らずに、無言で、祈りながら」
「……恵方の方角ってどっち?」
「ええっと、南南東?」
「南南東ってどっち」
「……池田、どっち」
「え、なんで俺に聞くの」
 言いながらもスマフォの方位磁石で調べる。
「あっち」
 そして多分南南東の方角を指差した。
「覚悟を、決めましょう」
 郁さんが言った。
 もしかしたらまだちょっと、テストのテンションが残ってるのかもしれない。もっとクールなキャラじゃないっけ?
 治君、あたし、サクちゃん、郁さん、池田君で横にならんで、南南東の方を向く。
「祈りながら?」
「そう」
「何を?」
「なんでもいいんじゃないの? よく知らないけど」
「試験受かりますように?」
「今年じゃないと意味ないんじゃない?」
 受験は来年だ。
「じゃあ、単位がきますように」
「それは、もう、遅いよ」
「そんな憐れむような目しないで!」
「一緒に三年生になれるといいね」
「なれるよ! そこまでじゃないよ!」
 それに、あたしのお願い事なんてもう決まっている。
 当然、勉学のことじゃない。
「じゃあれだ、無病息災」
「家内安全」
「火の用心」
「安産祈願」
「やっぱりあれ? 試験の疲れがまだ残ってる系?」
 意味不明だよ?
 などと言いながらも、恵方巻を見る。
「それじゃあ、喋っちゃ駄目よ?」
 郁さんに釘をさされて頷く。
 いただきます。
 あたしたちは無言で恵方巻を頬張る。
 さぞかしシュールな光景だろう。
 周りの視線を感じる。
 そしてさらには、
「……なにやってんの? いや、見ればわかるけど。なにやってんの?」
 ラウンジに現れたヒロくんにつっこまれた。泣きたい。
「あ、今答えられないか」
 さらにはそう言われた。
 ええ、答えられませんとも。
 あたしは今、あなたとの仲が進展することを祈って恵方巻を食べているのです。
 無病息災でも家内安全でも火の用心でもなくて、恋愛成就。
 **

なんとなく。
オチとかない。
あえていうならば杏子の存在がオチ。


あと、この物語が2013年のものだなんて言ってないんだからねっ! だから節分の日日曜日じゃね? 的なつっこみはうけつけないんだからね!!
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