表立って載せるほどではない小噺と、あとがき。 その他キャラ設定などなど、徒然なるままに書き連ねるページ。 

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31/青春の夏(梓・相模→円・直純)

「先輩に忠告されたわ。たまにはサークルの集まりに顔を出さないと、みんながあまりいい顔をしないって」
「ふーん」
「ふーん、じゃなくて。貴方のせいなのよ、相模」
 並んで歩きながら梓は相模を睨みつけた。
「僕のせい? 違うな、それは責任転嫁だよ」
 相模はひょうひょうと言い切った。
 確かにその通り。
 自分がソレを選んだことはわかっている。
 だが、その言い方はないだろう。
 悔しくて梓は、もっていたスーパーの袋を相手の足に思いっきりぶつけた。
「っ」
 不意打ちを食らって、彼にしては珍しく小さくうめき声をあげた。牛乳パックがはいったそれはとても重いのだ。そして、ぶつけられたらとても痛い。
 大体、なんで持ってくれないのか?
 期待するだけ無駄なことなんてわかっているけれども、彼氏彼女を気取りたいのならば、荷物ぐらい持ってくれてもいいじゃないか。
 そう思いながら、一人ですたすたと先を行く。
 すぐに平静を取り戻した相模は、少し大股で梓の隣へ再びならび、彼女の手からスーパーの袋を奪いとった。持ってもらったら持ってもらったで、驚いた彼女は相模をみる。
「……あれは、痛かった」
 相模は小さく呟く。
「またぶつけられたら、たまらないから」
 他に言いようはないものなのか!
 少しあきれたが、そういう人なのはわかっているので、梓は苦笑するに留めた。
 少し赤くなった左手をさする。
「じゃぁさ、」
「?」
「やめれば、サークル」
「……はぁ??」
「……やっぱり駄目か」
「馬鹿じゃないの……っていいたいところだけど、それもいいかもね」
「は?」
「何よ、自分で言い出しておいて、その反応。もともと付き合いで入っただけだし」
 軽く、リズムをつけるようにして梓は歩く。
「……大学も、やめちゃおうかなぁ」
「え?」
「もう、何よ。貴方ともあろう人がそんな間抜けな顔をさらすなんて」
 梓はそういってくすくすと笑う。
 相模は慌てていつもの少し笑みを浮かべた顔を取り繕った。
「梓ちゃん、」
「ねぇ、相模」
 相模の言葉をさえぎり言葉を紡ぐ。
 足を止める。
 同じ速度で歩いていた相模も、梓から一歩先に進んだところで止まった。

「一緒に暮らさない?」

「…………、え、ちょ……」
 今度こそ、相模の顔から平静は消え去った。
「梓ちゃん、何、いきなり!」
「いきなりじゃないでしょ、ちゃんと私は布石を打ってきたわ。いきなりだと思うなら気づかなかった貴方が悪い」
「梓ちゃん、君は自分が何を言っているのかわかっているのかい?」
「それなりにはね」
 梓は歩き出す。
 相模も慌ててあとを追う。
「私はね、相模。貴方の立場も、私が今言ったことを実行できないことぐらい、よくわかっているわ。だけどその上でそう言ってみたかったの。私の決意を示してみたかった。大学もやっぱりやめる。行ってても意味がないこと、気づいたから」
「……。」
「だから」


「ねぇ、おにーさん」
 梓が口を開きかけたとき、下からそんな声がした。
 二人が少し拍子抜けした表情で声のほうを見ると、気の強そうな女の子とその子の後ろに隠れるようにして男の子が立っていた。
「僕のことかい?」
 相模がいつもの笑顔を取り繕って尋ねる。
「そう」
 女の子の方が頷いた。
 それから、相模の顔を睨みつけるようにしてみる。
「おにーさん、なに?」
「何って?」
「おにーさん、ニンゲンじゃないんでしょ?」
 空気が冷える。
 相模の笑顔の温度が、限りなく低くなるのを梓は肌で感じた。
 この子達は何を言っているの?
「まどかちゃんー、やっぱりやめたほうがいいよぉ。ソウシュにおこられるよぉ?」
 男の子が女の子の袖をひっぱっていう。
「なによ、なお。あんただってギモンなんでしょ? ねぇ、おにーさん。おにーさんって、なに?」
「……どうして、僕が人間じゃない、と?」
「おにーさんにはニンゲンにみえないから。なんだろう? タマシイがね、ない……? しなない? しねない、のかな?」
 品定めするように女の子がいう。
「まどかちゃんー、このおにーさんおこってるよぉ。やっぱりしつれいなんだってばぁ」
 男の子が情けない口調で言う。
「相模」
 自分がその男の子と同じような顔をしていることを感じながら、梓も同じように相模の袖をひっぱった。
 相模が片手でその梓の手に一瞬、軽く触れた。
「僕は人間だ」
 相模は吐き捨てるように言った。
「少なくともそのつもりだ、今は。例え、何に見えたとしても。今は、」
 女の子が首を傾げた。
 そして、再び口を開きかけ、
「円お嬢様! 直純お坊ちゃま!」
「志津子さん!」
「っち」
 走ってくる中年の女性の姿に男の子が安心したような顔をして、女の子は軽く舌打ちした。小さな女の子がするわりには、やけに似合っていた。
「勝手にうろうろしないでください。私が宗主に怒られてしまいます」
「はい」
「はぁい」
 中年の女性に諭されて、二人は頷いた。
「すみません。この子たちが何か失礼なことを……?」
「いいえ、大丈夫ですよ」
 相模は微笑んだ。
 いつもの笑顔で、それに梓は安堵した。
 女性はすみませんすみませんとぺこぺこ頭を下げて、去っていく。
 途中で女の子が振り返って、舌をだしてみせた。
 その姿に相模が苦笑したのがわかった。

「……ふぅ」
 三人の後姿が消えると、梓は息を吐いた。
「何、今のは?」
「たまにいるよ。幽霊を見えるような人には、僕が人間でないことがわかるらしい」
 相模は言って歩き出す。
 梓は慌てて後を追った。
 足が震えている。
「違うわよ」
 軽く目を細めて前を見る相模に、梓は言った。
「貴方は人間だわ。ただ、少しだけ人よりも長く生きて、人よりも頑張らなければならないけど」
 梓の言葉に相模は少し口元を緩めた。
「……ところで、さっき言いかけたのは?」
 相模に促され、梓は言いかけていた言葉をひっぱりだす。
「うん、だから……私をもっと傍において、つかってくれない? ってもっと時間を作るから、もっと手伝わせて、って」
 機会を逃した言葉はこんなところで使っても意味が無いなと感じる。
 何も効力をもたない。あっても薄れている。
 相模はふっと笑った。
「愛の言葉にしては苦いね」
「かもしれない」
「だけど」
 相模はそう言って微笑んだ。
「お願いするよ」


 例えそれが一時であったとしても。

小さい円と直をかくのが楽しかった記憶
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