表立って載せるほどではない小噺と、あとがき。 その他キャラ設定などなど、徒然なるままに書き連ねるページ。 

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夜にまつわる10の話

お題提供サイト様「類人植物園(仮)出張所あらやだ長いタイトル」/リンク切れ


01:月
『今日の月は、赤いのね』
 マオは、毎晩毎晩、飽きることなく窓際で月を見ている。そして、今日は外を見てそう呟いた。
「……。本当だ」
 読んでいた本から顔を上げて頷く。
『怖いわね。血の色みたい』
 その発想が怖いとちらりと想ったけれども、特に何も言葉を返さない。マオも今更返事がないのを気にしたりしない。
『月の裏側って傷だらけなんでしょう?』
 うちの居候猫は時々妙なことを知っている。
「ああ」
『……そっくりだね』
 顔だけでこちらを向く。
「何が?」
『隆二が』
 その解答が不愉快で眉根を寄せる。
『そっくりだよ』
 マオはもう一度そう言うと、柔らかく微笑んだ。

 結局何も言えなくて、俺は再び本と向き直る。マオも気にせず、飽きもせず月を眺める。

只今の時刻、25:30。
02:星
『ここからね』
 マオは窓辺でそう言うと、両手を広げた。
『あの星まで』
 その手で窓の外、ひときわ輝く星を指さす。
『実際にはどれぐらいの距離があるの?』
「……さぁ?」
 そういって、とりあえず俺は肩をすくめた。
「何億光年とかそれぐらいなんじゃないか?」
 一つ一つの星との距離が、どれぐらいあるかなんて俺は知らない。興味もない。
『それじゃぁ、あたしでもあの星まで行けない?』
「そりゃいけないだろう」
 言ってから、考え込む。幽霊は一体何処まで行けて、どこまで存在していられるんだろうか?
 そんな俺に気づかずに、マオはそっかぁと呟いて窓枠に頬杖をついた。
「星まで行きたいのか?」
『だってあの星と』
 さっき言った星を指さす。
『あの星との』
 その指をそのまま隣の星へ移動させる。
『距離はとても離れているのでしょう? 寂しいんじゃないかと思って』
 時々、わからなくなる。何が言いたいのか、何がしたいのか。
『……あれ? あたし、なんか変なこと言った?』
 黙っているとマオがおろおろと両手を動かした。
「……いや。まぁ、らしくていいんじゃないか?」
 そういうとマオは小さく息を吐いた。
『よかった』
 そう言ってまた外を見る。

 しばらくして言った。
『やっぱり、あたしあの星まで行けないわ』
「……何で?」
『だって、あたしがあの星のところまで行ったら、今度が隆二が一人になっちゃうもの』




03:夜景
『安っぽいわね』
 ちょっと散歩してくる。そういってふらふらと飛んでいったマオは、帰ってくると同時にそう言った。
「何が?」
『夜景が』
「まったくです」
 その答えにすぐに相づちを打つ。
『上の方まで行かないと、星が綺麗に見えなかった』
「昔はもっと星が一杯見えたんだがな」
『昔ってどれぐらい昔よ?』
「……そう言われるとわからないんだが」
『隆二の時間の感覚はあてにならないんだから!』
 マオはそう言って頬を膨らませる。
 それから悪戯を思いついたときの顔をした。にやっと笑って、
『賭をしましょう』
「賭?」
 マオは頷き、両手を広げた。
『これから100年後、この辺りの夜景が一体どうなってるか。負けた方が勝った方の言うことを聞く、どう?』
 100年後にその賭の内容を覚えているわけがない。そんなことマオも知っていて、その上で言っているのだろう。
 100年後もこのままで。そういう意味なんだろう。いや、それともそれはただ単に俺の願望か?
「わかった。マオはどうなると思う?」
『ここの明かりが全て消えてしまう。もしかしたら、建物自体ないかもしれない』
「……弱ったな」
『何が?』

「それじゃぁ、俺と同じだ」



04:暗闇
「暗闇の中、本当に自分の手さえ見えないところ。そういうところにいると、自分が暗闇に同化したんじゃないかと思えるの」
 茜が言った。
 困ったことに、俺にはその感覚がわからなかった。なぜならば、暗闇でも光の下と同じぐらい見えるから。
 そう言ったら茜は、笑った。

「それじゃぁ、暗闇の中では、隆二が私の案内をしてね?」



 暗闇の中でうちの居候猫の背中を見ながら、そんなことを思い出した。
 居候猫マオは、突然振り返った。
「どうした?」
『いるならいいの。あまりに静かだから、いなくなったんじゃないかとちょっと焦った』
 そういって再びいつもの日課の空とご対面した。


 暗闇の中でも、光の中でも、みんなみんなよく見える。
 例えば時には、見たくないものも。



05:電灯
『切れそうね』
「そうだな」
 ちかちか、ちかちか
 不規則に消えたりついたりの電灯。
『……こういうのって、見ていて気分が悪くなるわ。早く、替えてよ』
「切れてからでいいだろう。もったいない」
『お金の問題じゃなくて、こういうのは心の問題でしょ? お金がもったいないならば、いっそとってしまえばいいじゃない。あってもなくても変わらないんだから』

ちかちか、ちかちか

「じゃぁ、消すか。とりあえず」
 立ち上がって、電気のスイッチを押す。
 暗闇。
 けれども、外から光が入ってくる。
 ネオンと月と星と。
「……明日、買いに行くか」
『蛍光灯?』
「ああ」
『……。賭けてもいいわ』
「何を?」
『隆二は絶対明日買いに行くのを忘れる』

 新しい照明になったのは、それから5日後だった。



06:眠り
「マオ?」
 静かな居候猫の様子が気になって、本に目を向けたまま問いかける。
 返事はない。
「マオ? マオちゃん。マオちゃ〜ん?」
 数回呼んだところで顔をあげ、ぎょっとした。顔をあげた俺の目に飛び込んできたのは、マオの体半分だけだった。
 窓枠に頬杖をついて外を見ている間に、眠ってしまい上半身が外に倒れたらしい。
 慌てて家の中に引きずり込むと、ソファーの上に横たえる。
 もし、あの状態のマオを見てしまった人がいるならば不幸としかいいようがないだろう。見た幽霊がよりにもよって、宙ぶらりんで眠りこけてるなんて。

「マーオ」
 ソファーの横に座って意味もなく声をかける。一度寝たら、こいつはなかなか起きないのを知っていて。
「マオちゃん」
 ほら、やっぱり起きない。
「……お休み」

 立ち上がると、そろそろ俺も寝ようかと隣の部屋へ移動した。


『お休みなさい』

 背後で聞こえた言葉は、きっと聞き間違いなんかじゃない。



07:夢
 幽霊も、夢は見るのだろうか?


 起こすか起こさないか。
 そんなことを真剣に悩みながら、マオの横顔を眺める。
 眉間にしわを寄せて、マオは眠っている。

 幽霊も、夢は見るのだろうか?
 それも、悪夢を。

 起こすか起こさないか。どちらが一体良心的なんだろうか。

「マオ」
 とりあえず、小さく呼びかけてみる。
 起きるはずがない。べしべしと額を叩く。
「お〜い、マオちゃん?」
 起きない。
「マオ」
 少し強く名前を呼ぶ。
 起きない。
 こんだけ人が親切に、起こしてやろうとしているのに。逆になんだか腹が立ってきて、結局立ち去ることにする。

『……ごめんなさい』

 立ち去りたかった。
 寧ろ、立ち去っていたかった。
 聞こえた寝言に立ち止まり、振り返る。
 相変わらず、眉間にしわを寄せたまま眠っている。
「なぁにが、ごめんなさいだ」
 額を指ではじく。
「寝るならもうちょっと幸せそうな顔をして寝やがれ」
 理不尽な事を口走りながら、結局俺は立ち去れずにマオの隣に腰掛けた。

 うちの居候猫は、何の夢を見るんだろう?




08:夜中過ぎ
 それは夜の真ん中を少し過ぎ、草木も眠りに就くという。

「……なんだ、起きてたのか」
 部屋の中で浮かぶマオに驚いた。マオはこちらをみると、肩をすくめた。
『ちょっとね。……隆二は?』
「眠くない」
『子どもみたいなことを言うのね』
 どっちが子どもなんだか。苦笑してソファーに腰掛けると、マオが隣に座った。そして、人の肩に頭をのせてくる。
「やめろ」
 それをどかすと、マオは少し不機嫌そうな顔をした。
 そして今度は膝の上に
「……お前、頭ん中寝てるだろ?」
 俺の言葉なんて無視して、怠惰な猫のようにマオは人の膝の上で体を丸める。
「マオ?」
『……寝てないもん』
 ふてくされたようにマオは言う。
「……どうかしたか?」
『どうもしない』
「どうもしないわけないだろう」
 そんな子どものように、体全体で“私は不機嫌です”と表現されても困る。
『……隆二は、昔に帰りたいの?』
 何を言い出すのかと思ったら。
「そんなこと、あるわけ……」
『否定できるの?』
 酷く億劫そうに顔だけ持ち上げて、マオは続けた。
『隆二に否定できるの? 言い切れるの?』
 言葉につまる。
 マオは再び顔をおろすと、続けた。
『隆二、さっきうたた寝していたでしょう?』
「……ああ」
 話の展開が、なんとなくわかった。
『何の夢を見たの?』
 それは昔の……。
「……」
『答えられないんだ』
 顔は見えないけれども、マオがふふんと笑った気がした。
『昔に帰りたい?』
 マオはもう一度そう言った。
『もう一度、茜さんに逢いたい?』
「……俺は、寝言でも言っていたか?」
『うん。本当、隆二は冷たいのか優しいのかわからない』
 こればっかりはどうしようもないじゃないか。夢の中のことまで、俺は責任を持てない。
『……寂しいじゃない』
「……ごめん」
『絶対に、あんな優しい顔あたしに対してしないくせに』
「……ごめん」
『……卑怯よ、謝ってばっかりで』
 マオは顔をあげると、言った。
『いつもあたしに言ってるじゃない。謝るよりも先にすることがあるだろう、って』
「……。」
 しばし悩んで、マオの顔をのぞき込むようにして言った。出来る限り微笑んで。
「おやすみ」
『上出来です』
 マオはかすかに笑うと、体を反転させて目を閉じた。例えば飼い猫にするように、マオの髪の毛を撫でながら俺も目を閉じた。

 猫は酷くきまぐれで、酷く我が儘で、だから、懐かれたら手放せない。



09:静寂
 静寂は嫌いではない。

 聞こえてくるのはただ風が動く音と自分が歩く音。後は他に、聞こえてくる音がない。
 そんな状態は、嫌いではない。

 真夜中、道の真ん中に立ってそんなことを思う。
 いつも隣にいるマオは、眠っていたのでおいてきた。
 突然コーヒーが飲みたくなって、でもあいにく豆を切らしていた。今は便利だよなぁ、コンビニなんてあって。そんな年寄りじみたことを考えながら、コーヒー豆と思いつきで買ったチョコの入った袋を振り回すようにして持ちながら歩く。
 かさかさと、袋の音がする。
 静寂は嫌いではない。
 寧ろ、心地よいとも思う。
 家の鍵を出して、開ける。
『隆二っ!』
「のわっ!」
 開けたと同時にマオにとびつかれた。
『もぉ、どこ行ってたのよぉっ!』
 半分泣きそうな顔をして、マオは行った。
「コーヒーを買いに」
 そういって袋をかかげてみせると、マオは頬を膨らませた。
『起こしてよ、誘ってよ。このカフェイン中毒!』
 言いたいだけ言うと、部屋の奥に引っ込む。

 そう、静寂は嫌いではない。
 寧ろ、心地よいとも思う。

 でも今は、騒がしいのも嫌いではない。



10:恐怖
 夜は怖くない。
 怖いのは置いていかれること。
 消されること。
 誰にも見てもらえなくなること。

『隆二?』
 目が覚めて、どの部屋を覗いても隆二がいない。
『……りゅーじ〜』
 なんて言ったらいいのかわからないけれども、胸の辺りがぎゅぅってなる。これを“恐怖”と呼ぶのなら、あたしは確かに今“恐怖”を感じている。
 置いていかれるのは嫌。
『隆二っ!』
 スカートの裾をぎゅっと握って声をあげる。
『隆二っ! どこに、どこに隠れているのか知らないけれど……はやくでてきなさいよっ! そうしないと、隆二の嫌いな歌を歌ってあげるわっ!!』
 ねぇ、どこにいるの?
 本当に、あたしを置いていったわけじゃないよね?
 手に力を入れて、だって、叫んでいないと壊れてしまいそう。
『ねぇっ! 隆二ってばぁ』
 こういうとき、あたしはとても無力なんだと思う。自分の力で何も出来ないから。
 どうしたらいいのかわからない。
『……隆二ぃ』
 しゃがみこむと、小さく呟いた。

 怖い。
 “夜を怖い”と思ったのは初めて。
 これが昼間なら、……まだどこかに救いがある気がするのに。
 夜は敵ではないのに、そのはずだったのに、どうしてか急に掌を返す。

 かちゃ……
 音に顔を上げる。
 ゆっくりと、玄関のドアが開いて

『隆二っ!』
「のわっ!」
 考えるよりも先に、隆二に抱きついた。
『もぉ、どこ行ってたのよぉっ!』
「コーヒーを買いに」
 よりにもよって、そういう。他に、何か言うことがあるでしょうに。
『起こしてよ、誘ってよ。このカフェイン中毒!』
 頭にきて、それだけいうとふぃっと元いた場所に戻る。
「なにふててるんだよ」
 隆二の声が追ってくる。
『別にっ!』
 大声をあげる。

 ああ、でも今確かにあたしは、“安心”している。
 そうして、夜は再び掌を返して、あたしの味方になる。
    23:19 | Top
 
 
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