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表立って載せるほどではない小噺と、あとがき。 その他キャラ設定などなど、徒然なるままに書き連ねるページ。 

流星群

 流れ星に三回、願い事を言うと叶うらしい。
「で、今日は見られるらしいよ!」
 楽しそうに笑いながら茜が言った。
「なるほど。このくそ寒い時期に、先週まで熱を出していて寝込んでいた人間が、たかがそんな迷信のために、縁側で星を見たいと」
 ゆっくりと、丁寧に言ってやる。
「バカかお前は」
「暖かくするから!」
 頬を膨らませる。
「そんな顔をしても駄目だ」
「ケチ」
「ケチじゃない」
「いいじゃん!」
「よくない」
 そんなやり取りを朝からずっと続けて……、続けたはずなのに、結局折れたのは俺の方だった。何故に。
 布団やら上着やらを着込んで縁側に二人して寝転がる。茜がとても嬉しそうな顔をしているから、まあいいか、と思ってしまった俺がいる。弱い。
「あ!」
 きらり、と流れる光に茜が声をあげ、小さく何かを呟く。何を言っているのかは聞き取れないし、正直知りたくもなかった。
 あれからかなりの月日が経って、今でも彼女が何を願ったのかはわからないし、知ることはもう出来ない。機会は永遠に失われてしまった。
 次の日、案の定熱をだした茜が「一緒にいて」と呟いた、あの言葉が、もしも願いなのだとしたならば。そうであるならば、茜の願いが成就しなかったのは、俺のせいだ、と言える。はっきりしている。


 そして、今。
『流れ星が見えるらしいですよ!』
 マオが嬉しそうに言った。何故にですます口調。
「そうかいそうかい」
『隆二、知ってた? 流れ星に三回お願いごとをすると叶うらしいよ?』
 目を輝かせてマオが言う。
「知ってた」
『うっそ、もー、絶対知らないと思ったのに』
 よし、何故知らないと思ったか教えてもらおうか。
「なにか願いでもあるのか?」
『んーっとね、隆二が新しいテレビを買ってくれますように』
 両手をあせてマオが言う。
 視線をずらし、よくまあ動いてるよな、と我ながら思う年代物のテレビを見た。
「なるほど」
 視線をマオに戻す。
「諦めろ」
『だからぁ、流れ星にお願いするんでしょう?』
「流れ星にそんな即物的なお願いをするやつをはじめてみた」
『他にどんなお願いするのよー』
「どんなって」
 言いかけて、口ごもる。嫌な事を思い出した。中身がわからないままの、茜のお願い。
『ほら、言えないじゃない』
 その沈黙をどうとったのか、マオが勝ち誇ったように言った。
「あー、まあ、例えばあれだ。その」
 人間になりたい、とか。
 俺が呟いた言葉に、幽霊であるマオは首を傾げた。
『は? 何ソレ』
「何ソレって」
『なりたくないし、別に。まあ、体があった方がいいかなぁとかは思うけれども。人間になったらいつかは死んじゃうじゃない。そしたら隆二』
 マオは、ゆっくりと微笑んだ。
『一人になっちゃうよ?』
 人間じゃない、不死者。死なない自分。
「……まあ、確かに」
 他にどう言えばいいかわからなくて、それだけ答えた。
『そしたら隆二寂しいでしょう?可哀想だもん、あたしが一緒にいてあげるから』
 何故かとっても優しくマオは微笑み、
『っていうか、あたしから逃げようとかするの許さないから。ずぅっとあたしと一緒にいなさいね?』
 優しい微笑みを浮かべたまま、傲慢な言葉を呟いた。
「……はいはい」
 他にどう言えばいいかわからなくて、その提案を受け入れた。まったく、これだからうちの居候猫は。
『ながれぼしーほっしー』
 わけのわからないことを言いながら、窓の外に顔をすりぬけさせるマオをみて、苦笑いした。
    19:29 | Top
 
 
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