表立って載せるほどではない小噺と、あとがき。 その他キャラ設定などなど、徒然なるままに書き連ねるページ。 

カタルシス(小噺)

「いっつも思うんだけどね」
「?」
「素直で純粋な子に育ちますように、で直純なんでしょ? 佐知代叔母様が前に言ってたけど」
「まぁ、そうらしいな」
 首をかしげながら頷く直純に、円は頬杖をつきながら言い放った。
「なのになんであんたはそう素直じゃないわけ?」
「素直だろ、この上もなく」
 不愉快そうに眉をひそめながら直純は答える。
「どこが、なんで」
「なんでって……。少なくとも、お前よりは」
「失礼ね、私はとっても素直よ」
「お前のは素直っていうか、自分の欲望に忠実っていうかわがままっていうか、そういったもんだよ」
「ふん、どーだか」
 煙草に火をつける。
「ずぅぅっと子どものときからの恋愛を引きずっている人間が素直なわけないでしょ」
「誠実と言って貰いたいね」
「自分の気持ちも表に出来ないくせに」
 煙を吐き出し、嗤う。
「さっさと言えばよかったのよ。なのに、ずっと黙っているから」
「いったら、困るだろ」
「どうかしら? 今は困るかもしれないけれども……、少なくともあの時ならOKだったはずよ」
「堂本賢治と別れたとき?」
「わかっているじゃない」
「正攻法でいきたいんだ。そんな弱っているときに付け入るみたいな……」
「へぇ、純粋ね。可愛いじゃない」
「……五月蝿いな」
 軽く舌打。
「大体なんだよ、急にそんな話してきて」
「佐知代叔母様に言われたのよ。直の方はどうなってるのかって。あんた、自分の母親にも言ってないの?」
「普通言わないだろ」
「言ったらはりきって手伝ってくれるわよ、佐知代叔母様なら」
「だから嫌なんだよ」
 仲人が趣味の母親を思い浮かべて、げんなりしながらため息をつく。
「大体、あんたがそうやっていつまでも素直にならないから――」
 そこまでいって、言葉をきり、円は慌てて煙草を灰皿に押し付けた。


 がちゃ
「ただいまー」
「お邪魔します」
 ドアが開いて、沙耶と龍一が入ってくる。
「あー、また円姉煙草吸って!!」
「目ざといわね」
 隠し切れなかった吸殻を見つけて、沙耶が怒鳴る。
「室内禁煙!!」
「はいはい。龍一君、どうしたの?」
「さっき下であったから、連れてきたの。龍一、座っててお茶淹れるー」
「あ、ありがとう」

 そんな二人のやり取りと、露骨に不愉快そうな従弟を見ながら円はため息をついた。
 あんたがそうやっていつまでも素直にならないから、事態はこんなにややっこしくなって、大切な従弟と妹分にはお互いに倖せになってもらいたい私としてはとても歯がゆい立場になっているわけよ?
 切った言葉を胸中で呟き、呆れたように笑った。

  **

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    12:31 | Top

フォンダンショコラ(小話)

 フォンダンショコラ。割ると中からチョコレートが溶け出てくるケーキ。

 つまり、冷めてしまえば意味がない。
 甘いものが好きな彼のために作ったのに、中のチョコレートはすっかり冷めて固まって。それはつまり、愛と一緒ね、なんて一人で嘯いてみる。そう、醒めてしまえば意味がない。

 作ったときに部屋の中に充満していたチョコレートの甘い香りも、いまや拡散して、香るのは自分の香水の匂い。
 ドーリーガール。馬鹿でかわいい女の子。

 でも、レンジであたためてみれば、また元に戻るから、それは心と一緒ねなんて思ってみる。
 珍しく感傷的?
 うちのお姫様のフォンダンショコラは、固まってしまっているけれど、また少し解けかけているし。

 すっかり冷めて固まったフォンダンショコラをラップにくるんで、タッパーにいれて。事務所に持って行けばきっと誰かが食べるでしょう。
 うちのお姫様のレンジ役にあげるのもいい。ほら、受験生には糖分がかかせないしね。

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    12:30 | Top

散って花実が咲くものか

花は散るからこそ美しい。
――知るか、そんなこと。
散って花実が咲くものか!

 *

「月下美人」
「……まんまですね」
「ご挨拶ね、龍一君」
 好きな花は? と尋ねられ、正直に答えたらこの返答。君の私に対する、脳内イメージはどうなっているのかしら?
「でも少し意外でした」
「何が?」
「月下美人は一夜限りだから、そういうの、円さんは嫌いなのかと」
「嫌いよ。花は散るからこそ美しいとか言うけどね、散って花実が咲くものかってね」
「散ればこその花も実もありますよ」
 しれっと答える龍一君に思わず疑問を投げかける。
「君、本当に高校生?」
「ご挨拶ですね」
 私と同じ言葉を彼は返してきた。だって、私が高校生のときはこんなんじゃなかったわよ? 巽のおぼっちゃまといい、最近の高校生ってみんなこうなの?
「桜は散り際が美しいとかも何言ってくれちゃってんのって思うわね。せっかく満開で咲いてたんだから、そこ見てやれよっていう」
「満開のタイミングって難しいですし……」
「知らないわよ。まぁ、満開を維持できない桜もわるい」
「そんな……」
 龍一君が苦笑した。
「それをいうなら、月下美人なんて……」
「知らないの?」
 私は優越感に浸った顔で笑うと、
「焼酎に漬けておくと、長く持つのよ」
「へぇ……、そうなんですか」
「そうそう、あとは押し花とかもあるじゃない? 美しい姿を残すための努力は惜しまないの、私」
「ああ、それはすっごくよくわかるんですけど」
「……。なんかひっかかるけど、まぁいいわ。すぐに散ってしまうのは、生き急いでいるみたいで凄く嫌」
「……そうですね」
 そういうつもりはなかったけれども、お互いの頭の中に同じ人物が浮かんだだろう。桜が好きなうちのお姫様。
「まぁ、心配しなくても、焼酎漬けにでもして長持ちさせるから」
 軽口を叩くと、龍一君は肩をすくめた。
「嫌いそうですけどね、そういうの」
「散るからこそ美しいと思っているからね。
 そのくせまだ満開も迎えていない。異常よ、ここで散ったら」
「まったくで」
「ねぇ?」
 二人で顔を見合わせて苦笑しあう。

 ああ、なんてばかばかしい。散ってなんになるという? わざわざ自分から散りに行ってどうする。
 私は、頼まれたって散ってやらない。


 **

なんかファイルが出て来たので再掲。なんでこんな話かいたんだっけな??
    12:29 | Top
 
 
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