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表立って載せるほどではない小噺と、あとがき。 その他キャラ設定などなど、徒然なるままに書き連ねるページ。 

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高層冷血都市

 駅の西口発のバス。
 進行方向に向かって、二人がけの席が並んでいる。
 その、左側の後ろ側から二番目に、二人は座っていた。
 窓際に座っている男性は、窓枠に頬杖つきつつ本を読む。
 連れに言わせれば、車の中で本を読む何て信じられない!! だとか…。
 その連れの女性は、彼の肩に頭を載せて眠っている。
 重たい…とか、色々言いたいことはあるけれど、何しろ彼女は乗り物に弱い。これでもかっ!! というぐらい、弱い。
 具合が悪くなられるよりは、眠っていてくれた方がいいと彼は思っている。

 それはさておき…。

 彼らは今、水族館に向かっている。
 理由は簡単、「ねっ、水族館行かない?」という彼女の一言。
 別に暇だし、水族館は嫌いじゃないから、二人一緒に水族館へ向かう。

「……んにゃ?」
 何だか猫みたいな声をあげて、彼女は顔をあげた。
「どした?」
 本から顔をあげ、問いかける。
「…ん~。今どこ?」
 次の停留所の名前を答える。
「そっか…じゃぁ、あと少し?」
「二つ…だな」
 じゃぁ、起きてよう、と座り直す。
 そんなこと言ったって、どうせ酔うに決まっているんだ。
 後二つだろうとなんだろうと、5分以上乗っていると具合が悪くなるらしい。はた迷惑。
「水族館さ、イルカいるよね?」
「だろうな」
「私、イルカ好き」
「それはもう、何回も聞いた。耳たこ」
 そういわれて、むぅっとふくれたが、彼の手元を覗き込み問う。
「何読んでるの?」
 彼は、読んでいる本のタイトル……ミステリーの女王と呼ばれた作家の作品を言う。
「うわ、そんなの読んでるんだ」
 顔を思いっきりしかめる。
「それ、全世界のミステリーファンに失礼だぞ」
 苦笑して、彼は言う。
「あはははは」
 困ったように、彼女も笑う。

 日常。

 幸せは、すぐに壊れると誰かが言った。
 ああ、その通りだな…、と彼は思った。

 バスから降りて、大きく彼女は伸びをする。そして、げんなりしたように呟いた。
「ふぇ……、気持ち悪い…」
「寝てた方がよかったんじゃねぇの?」
「……そうだけどぉ……」
 ともかくっと、彼女をバス停のベンチに座らせて、近くの自動販売機へと走る。
 ちなみに、彼女は炭酸が飲めない。…難儀な奴だ。

「?」
 お茶を片手に戻ってきて…、驚いた。
 バス停の周りには、人だかり。
 道路に止まっているパトカー及び、救急車。
 無理矢理人だかりをくぐる。

 かしゃんっ……

 缶が落ちる。

「……」

 紅。

「っ。おい!!」
 救急隊員が止めるのも関わらず、彼は彼女に駆け寄る。

 紅。
 紅く染まって……。

「おい…」

 通り魔殺人だと、無機質なTVは言った。
 犯人は、あっさり捕まったとも言っていた。

 それがなんだ?

 彼女が帰ってこないのは、誰の目にも明白で……。
 仕事も、ここ一週間休んでいる。
 そろそろ、上司が文句を言ってくることだろう。
 就職難で、せっかく見つけた仕事なのだから…辞めるわけにはいかないが、仕事に出たくはない。
 写真立ての中では、時間が止まっていて…、けれど現実にあるのは、空しい空白感のみ。

「彼女に会いたいですか?」
 誰かが問いかけてくる。
「ああ、あえるものならば」
 それが誰かと言うことは、一切気にせず投げやりに答える。
「例え、そのために……何を犠牲にしても?」
「そうだな」
「…わかりました」
 そこで、初めて彼は後ろを向く。
 ベランダに、黒い服に身を包んだ少女が立っていた。
 名前もわからぬ青い石が、服の裾についている。
 片手に木の杖の様な物をもっていて、それにも数珠のようにつなげられた石がまかれている。
 肩には黒い鳥、足下には黒い猫。
 死神のようだ…と、彼は思う。
「君は?」
「……。人は、魔女と呼びます」
 彼女は、淡々と答えると、
「もう一度聞きます。彼女に会いたいですか?」
「ああ」
「そのためならば、例え…何を犠牲にしても構いませんか?」
「ああ」
 そういって、彼は、椅子に座り直す。
「馬鹿だと思ったか?」
「いえ」
「不思議だな。…君のような…自分を魔女だと言い張る人間にあって、変だと思わないなんて…。いや、それとも…幻をみているのかな?」
 そういって、彼は自嘲気味に笑う。
「それは、ご主人様を愚弄しているのですか?」
「おい、てめぇ、どういうことだ?」
 鳥と猫が、口々にそういう。
「ファントム、シャドー。やめなさい」
 それを、少女が制した。
「私は本物ですし、きっと貴方のその態度は…人として当たり前かもしれません」
「…もう一度聞くが…、君は本当に魔女なんだね?…あの、箒に乗って空を飛ぶ」
「発想貧困」
 ぼそっと、猫が呟いた。
 少女は、猫の頭を杖で叩くと、
「箒で空は飛びませんが、魔女です」
 きっぱりとそういう。
「…じゃぁ、彼女を生き返らせてくれるかい?」
「それは出来ません」
 これまた、きっぱりという。
 ため息をついた彼に、再びきっぱりという。
「けれど、時間を戻すことなら出来ます」
 そこで一回、区切り。
「…やりますか?」
「ああ」
「本当に?」
「ああ」
「…わかりました」
 ため息ともとれる吐息を吐くと、彼女は杖を掲げた。
 鳥が彼女の肩から離れ、猫も数歩後ろに下がる。
 彼女は、その杖で…空中に何かを書いた。
 彼は、目を凝らしてそれを見る。
 数珠の青い残像が残り、かろうじてそれが読めた。
「STRAY SHEEP」…迷える子羊。
 青い光が部屋を包み…、彼は目を閉じた。

 目を開けた。

 そこは、バス停だった。
 彼女が、大きく伸びをしていた。

 過去。

「…。」
 彼は、しばし固まって……、彼女の手を引いて歩き出す。
「え? 何?」
「早く行こう。水族館」
「え……」
 彼女は、気持ち悪そうに喉を押さえつつ、彼を見る。
「…。…どうしたの? 何怒ってるの?」
「いや、…怒ってなんかないさ」
 そこで、彼は我に返り、彼女の目の高さに視線を合わせる。
「水族館に行く前に、喫茶店で休んでいくか?」
「…ん~、いいや。このまま直行でも」
 そういって、彼女は彼の腕にくっつく。
「じゃぁ、行こう」
 そのまま二人で歩き出した。


「ご主人様」
「主」
 少女に声をかけたのは、二人…いや、二匹同時だった。
「何?」
 少女は、彼らを振り返らない。
「そろそろ行きませんと」
「誰か来るぜ?」
「…わかってる」
 そういうと、杖についている石を、1つ握る。
 ころん…
 それは、あっさりと外れ…、けれど色は紅く濁る。
 それを少女は、彼の手に握らせる。
「…すみません、…こんなことしかできなくて」
 彼は…眠っていた。
 椅子に座って、机に突っ伏して。
「…私は……、基本的に…、大人には見返りを求めるんです。…子供の味方なので」
 片膝をつき、…騎士が主にするように頭を下げる。
「貴方が…、まだ10代だったのならば、私も…無報酬で助けたのですけれど」
「ご主人様」
「主」
 これまた、二匹同時に声をかける。
「…わかってる」
 やはり、彼らを振り返らずに、そう言うと、杖で床に何かを書いた。

「STRAY SHEEP」…迷える子羊。
 その横に…書き加える。
「TIME IS SOUL」…時は魂なり。
 その下に
「INFINITY」…無限大。
 少女が彼からもらったのは、時間。
 それも有限である時間。
 だから、彼は永遠に…無限大の時間の中を生き続ける。

「…どうして…、人は幻想にとらわれるんだと思う?」
 少女は、二匹を振り返り問う。
「きっと、意志が弱いのでしょう」
「そうでもなきゃ、生きていけねぇんじゃねぇの?」
 何事でもないかのように言う彼らを見て、少女は…少し、悲しげに笑った。
「そうね、でもね。ファントム、シャドー。私は…」
 そこで口をつぐみ、窓から下を見下ろす。
 高層ビル。
 豆粒大の人。
 例え誰かが、いなくなっても…きっと、気にもとめないだろう。
「私も……」
 そこで、手すりの上に立つ。
 音もなく、猫が少女の肩に乗り、鳥が少女の背中にくっつく。
 そうすると、少女の背中に…漆黒の羽が生えた。

「私も…、魔女である以前に…人なのよ?」

**
 一番最初に書いた魔女。
 設定がいまとは違うのだった(当時、中学生だった。私も、上総も)
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九官鳥(ゴンベイ)の日記(小噺的断片)

10月2日(日)
 雨だった。
 雨だと髪の毛がはねるだのと、慎吾が文句を言っていたが、慎吾の髪の毛はいつもはねているみたいなものなので、そんな些細なことを気にするほうがどうかしている。
 そんなことよりも問題なのは、毎週日曜日は日向ぼっこの日なのにそれができないことだ。
 なんて残念……。
 慎吾は慎吾で、仕事があるとかで硯さんが朝一で帰ってしまって落ち込んでいる。
 嫌な一週間の始まり方だ。

10月3日(月)
 今日は依頼人が二人も来た。
 万年閑古鳥がないている当事務所としては非常に喜ばしく、珍しいことである。
 ただ、「あら、可愛いカラスですね」「九官鳥です」だとか、「名前はなんですか? 黒いから黒ちゃんかしら?」「九官鳥だからキューです」「ゴンベイ!!」だとか、そういうやりとりをするのはとても疲れる。
 あと、夕方に静が来て、慎吾にとても嫌がられていた。
「あ、なぽれおんだー、久しぶりー」
「キューだっつーの」
「ゴンベイ、ゴンベイ!!」

10月4日(火)
 非番だ、といって四月一日老人が将棋をさしにやってきた。
 この四月一日老人と慎吾は将棋仲間だ。
 今日の結果は、慎吾の方から見て二勝一敗。
 通算では59勝80敗だから、今日は調子がよかったと言える。
 そのまま二人で飲みに行った。
 ただ、この四月一日老人はいい人ではあるのだが、私のことを黒吉と呼ぶから嫌いである。
 私はごんべいだ!

10月5日(水)
 毎週水曜日は布団を干す日と決まっているので、今日が曇りで慎吾は切なそうな顔をしていた。
 結局、布団が干されることはなかった。
 この変に家庭的なところはどうにかならないんだろうか……?
 依頼人が来るまでの時間、抱えている仕事もなくて暇だから、という理由で何時もよりも長く、そしてたくさん外に出して遊んでもらえたので私としては何ら異論はないが。
 ただ、「楽しいか、キュー?」と聞くのはやめて欲しい。
 私は、ごんべいだ!!

10月6日(木)
 なんだかんだいってマメだと思うのは、硯さんと慎吾が一日に一回はメールのやりとりをしていることだ。
 朝、慎吾が送って、夜に硯さんが返して来るというサイクル。
 いや、逆か?
 夜に硯さんが送って、慎吾がそれに朝返している??
 いや、まぁどちらでもいいんだが。
 硯さんから来たメールにちらりとかかれていたのは、殺人事件の取調べが難航しているらしいということだった。
 黙秘しているとか、なんとか。
 慎吾がにやりと楽しそうに笑ったのを見て、私は事件の担当者に哀れみの気持ちを持った。

10月7日(金)
 例の事件の担当者は小鳥遊検事だったらしい。
 今朝、慎吾が小鳥遊検事にあってアドバイスというかちょっかいというか、をしてきた。
 もともと、その殺人事件の被害者の方の素行調査をしていたら、その容疑者とたびたびあっていたことがわかった、というだけだが。
 コレで貸しが出来たとか嬉しそうに笑っていた。
 ……かわいそうに、小鳥遊検事……。
 でも、この人は私のことをカラスと呼ぶから嫌いである。
 名前以前に、私は九官鳥だ。

10月8日(土)
「また、小鳥遊さんにちょっかいだしたんですって?」
 11時ぐらいにふらりと現われた硯さんが、頬杖をつきながら言った。
「ちょっかいって……、手伝っただけだよ」
 台所にエプロン姿でたつ慎吾が心外だ、とでもいいたそうな顔で答えた。
 こちらがそうでも、向こうがどう思うかはわからないだろうに。
「手伝っただけ、ね」
 まるっきり信じていない口調で硯さんがいう。
「信用ないなぁ、俺」
「当り前でしょ、ねぇ、くーちゃん?」
「だからキューだって」
「ゴンベイ! ゴンベイ!!」
 いい加減、そういう変な名前で呼ぶのはやめてもらいたい。
「よし、できた」
 そう言って慎吾がカレーを持ってくるころに、ふと外を見てみると大きな虹が出ていた。
「ニジ! ニジ!」
 そう言ってみると、自分で作っておいて辛っとか顔をしかめている慎吾と、澄ました顔で食べていた硯さんがこちらをみた。
「あら、本当」
「久しぶりだなぁ」
 とりあえず、虹にちゃんと名前で呼んでもらえるように祈っておいた。

**
 四周年記念企画
 人気投票でまさかの三位(麗華と同点)ゴンベイ。
 全部同情票でした

麗華の日記(小噺的断片)

10月2日(日)
 雨だった。
 日曜日の癖に雨なんていい度胸してるじゃないの、と悪態でもつきたいところだけれども、別に外に出る用事なんてないので極めて非生産的に家でごろごろしていた。
 買ってきた雑誌をめくりつつ。ファッション雑誌なんてみたところで、いつも同じようなスーツしかきないし、きてみせる相手だっていないのだから意味無いけど。
 そこまで考えて、結局憂鬱になった。
 ああ、仕事をしている方がどれだけ楽か。

10月3日(月)
 裁判所に行ったら、硯さんと廊下で鉢合わせした。
 首筋の赤い痕がものすごく気になったのだけれども、つっこんだら負けだ。かなり。
 ナチュラルで惚気るとはなかなかやってくれると思う。
 それにしても、どうしてもこの子の前では素直になれないというか、無駄な意地をはってしまうというか……。
 硯さん本人はとてもいい子なのに、こうなるのは絶対に、彼女の恋人(趣味悪くない?)の探偵のせいだ。
 彼女の顔を見るたびにあの馬鹿の顔が思い浮かぶ。
 ああ、憎たらしい!!
 なんかやらかしてくれないかしら?
 確実に、有罪にしてあげるのに。

10月4日(火)
 科捜研の楠さんに会った、久しぶりに。
 まぁ、地裁や地検とも近いんだし、会わないほうが不思議なんだけれども。
 同じ、30代仕事仲間としてものすごく親近感を持っている。
 そういえば、二課の鷲頭くんが彼女に憧れているって聞いたけど、そこのところ、どうなのかしら?
 でも、確か彼女には彼氏いるのよね。
 ……一人身が寂しい今日この頃。

10月5日(水)
 曇りっていうのは、傘を持っていくのか持っていかないのか悩むからやめてもらいたい。
 私のところにまわってきた事件、担当刑事が笹倉巡査部長だった。
 人の顔を見るなり嫌そうな顔をしたけれども。
 なんで、私こんなに嫌われてるのかしら?
 なんだかむかつくわね。
 人の気もしらないで、って言うつもりもないけれど。

10月6日(木)
 殺人容疑の取り調べ。
 警察では自白したのに、ここにきてからは「自分はやってない」の後はずっと、黙秘!
 こっちだって忙しいのに。
 確かに権利として認められて入るけれども、何もここにきて黙秘しなくてもいいじゃない。
 ああ、もう!

10月7日(金)
「やぁ、小鳥遊女史」
 なんてにこやかに私の前に現われたのはあの探偵だった。
 朝からなんて憂鬱な!
 用件を尋ねたら、
「そこのスポーツクラブあるだろ? 事件当日の利用者名簿をみせてもらうといい。可能なら遡るのもいいな。今の取調べに、きっとやくに立つはずだから」
 言われたとおりに行動するのもしゃくらしいけど、行き詰まっていることも確かだから、言われたとおりに行って見た。
 ああ、悔しい!
 なんであんな探偵の言うこと通りになるわけ!?
 被害者と被告人の名前がそこにあって、警察も誰も知らなかったこと。二人がそこでたびたびあっていたという事実。
 警察の捜査も穴があるんじゃないの!?
 っていうか、何、あの探偵!!
 もう、最低最悪。

10月8日(土)
 休みになんてなるわけがない。
 結局、利用者名簿とか目撃証言とかつきつけたら、ぺらぺらと自白し始めた。
 っていうか、こんなものも見つからないなんて、警察の捜査ってば本当穴ありまくり!
 そう思いながらお昼を食べにでた先で、笹倉君にあった。
 彼は苦い顔をして、
「聞きましたよ。また、渋谷ですって?」
「そうよ。何よあいつ」
 二人してため息をついた。
 なんだかんだいって、おかげで事件が解決しているところがまたむかつく。
「なんですかね、あいつは。どこにあんな情報網が。こっちの捜査に穴があったことは否めませんけど」
 ああもう、と彼はがしがしと頭を掻いた。
 そして、二人で顔を見合わせて、もう一度ため息。
 なんとなく流れで、二人で一緒にお昼を食べることになった。
 私としてはとても嬉しいシチュエーションなんだけど、話題があの探偵ってありえないわよ。
 二人で暗い空気のまま外にでて、見上げた空に、
「虹ですね」
 笹倉君がそういって笑う。
「本当」
 久しぶりにみた虹に、心が晴れた。
 これを一緒にみれて、私はとても倖せだ。

**
 四周年記念
 まさかの人気投票三位でした。ありがとうございました

円の日記(小噺的断片)

10月2日(日)
 佐知代叔母様から昨日電話があって
「ちょっと円ちゃん明日暇? 暇でしょ? だって事務所休みだもんねっていうことで帰ってきなさい」
 とか一方的に言われてきられた。
 仕事が休みだからこそ家でだらだらしたり、お菓子作ったり、本でも読んだりしたいのに。
 そう思いながらも行かなかったら文句を言われるに決まっているから、しぶしぶ一海まで行って来た。
 雨が降っているのに! 雨の日に外に出るのとか本当嫌。
 相変わらず、実家に帰るのにスーツ(か和服)で帰る私に、父様が呆れた顔をしていたが、私の知ったことではない。
 これは私の意地なのだから。
 まぁ、それはともかく、佐知代叔母様の話は相変わらずお見合いの話だった。
 そうじゃないかと思ったけれども。
 どこかの陰陽師の家系の三男だそうで。とりあえず、顔からして私の好み外れてるんですけど。いや、人間見た目じゃないけどさ。
 佐知代叔母様の趣味ってよくわからない。
 それでいて、結婚相手が直次叔父様なんだからびっくりしちゃう。
 あんなにかっこよくて強い人と結婚しておいて、どうして私には趣味の悪いとしか思えない人をすすめて来るんだか。丁重にお断りしておいた。今はいるし。
 というか、自分の息子の心配をした方がいいんじゃない?
 20代も後半になって10代からの片思いを継続してるなんて呆れちゃう。
 父様は別になにも言わなかったけど、呆れた顔をしていたからやっぱり私にはやく結婚して欲しいのかしらとか思ったけど、こればっかりはどうしようもないしね。
 ああそれにしても、貴重な休みが無駄な形で消えてしまった。
 ……明日からまた頑張ろう。

10月3日(月)
 事務所に言ったら直が
「また母さんがお見合いすすめたんだって?」とかいってきた。
 よく知っているじゃない、あんたがうけなさいよ。
 そう思いながらとりあえず肩をすくめておいた。
 No,050930の報告書を仕上げて、役所に持っていたついでにまたたんまりとお仕事を頂いてきた。
 ああ、世の中不景気なのにいいわね~って不景気だからこそこんなに仕事あるんだろうけど。
 っていうか、こんな商売が繁盛したところで別に景気回復には貢献しないしね~。
 まったくこの仕事を個々に割り振る作業が私は一番嫌い。
 まぁ、説得してどうにかなりそうなの(むしろ説得推奨)が沙耶で、細々と面倒そうな事件(依頼人が偉いとかそういうの)は直で、力技ごり押し系が私になるんだけど。
 今日は一日事務処理。
 デスクワークって好きじゃないのよね、肩凝るから。

10月4日(火)
 今日は一日外。
 午前中はNo,051008の依頼人のところに話を聞きに行った。
 家を建てようと工事中なのに、何故か工事現場で次々と事故が起こって、そのうち死人が出そうで怖いからどうにかしてくれってやつ。
 一応その土地も見てみたけど、下級霊が悪さをしていたみたい。
 小物だし、一匹だし、本当は今日実行するつもりは無かったんだけど、思っていたよりも簡単だからって祓ってきた。
 午後はNo.051004。心霊スポットと化した廃墟ビルの祓え。
 こっちは予想以上に梃子摺ってしまった。
 一匹一匹は雑魚だったんだけど、数だけ無駄に多くて。
 お前らはゴキブリかっていう話。
 かっこつけて一人で行かないで、誰かつれていけばよかった。
 まぁ、こういう数が多いのに沙耶や直は連れて行けないけど。
 沙耶は基本的に何かを説得するのとかそういうのに向いているし、直は数が多いものを相手にするより一つに集中する方だしね。
 「基本的に二人一組」っていう父様のことばを思い出した。
 けどさ、そういうならもっと事務所に人数さいて欲しいわよ。
 終わったら彼氏からメールが来てた。なんとか明日会えそうな感じ。

10月5日(水)
 曇り空でちょっと嫌な感じ。
 別に私は雨よりは曇りの方が好きなんだけど、曇りの日って士気が下がる気がする。
 沙耶とかめちゃめちゃテンション低いもん。
 そう思ってたら、学校帰りの龍一君が来て露骨に機嫌よくなってた。
 本当、わかりやすい子。
 それにしても、この二人はいつまでおままごとを続けているつもりかしら? 見ているほうがいらいらするんだけど。
 まぁ、沙耶が臆病になる気持ちもわかるし、待っててあげられる龍一君だから沙耶を任せられるんだけど。本当、龍一君にはお世話になりっぱなし。
 No,051005を何とか早めに切り上げて、彼氏とディナー。
 久しぶりに会ったけど、やっぱりこの人なんか違うかもなぁ、とかちょっと思った。ごめん。
 なんていうか、ことばの端々に「結婚したら仕事はやめて家に入って欲しい」オーラが出てる気がする。
 うーん、そう出来たら楽なのかもしれないけどね、私家事好きだし。趣味と実益が一緒とかいい感じ。
 でも、そういうわけにはいかなしねー。
 泊まるとかっていう流れになったけど、そんなこと思った後だし気分乗らないし、明日早いからって断った。
 さてはて、私のこういう恋愛模様と沙耶のおままごととどっちがましなのかしら?
 わかんないわねー

10月6日(木)
 今日は巽との合同調査。
 直とどっちがやるかでくじ引きして見事に当りを引き当ててしまったので私だった。最近ずっと私な気がする。
 っていうか、たまには分家同士でやらせればいいのに。
 っていうか、分家同士ってなんであんなに仲悪いのかしらね?
 こうやって本家同士は割と和気藹々やっているのに、分家が邪魔してるって言うかー。
 ああ、そういえば、誰かの恋人が巽に寝盗られてどうのこうのって聞いた気が……。いや、それ思いっきり私怨だし。まさかね……。
 プロなら公私はわけなさいよ、まったく。
 で、巽の方は相変わらず巽のおぼっちゃまを出してきた。
 最近いっつも私たち二人な気がするんだけど。
 最近なんだかちょっと丸くなってきた巽のおぼっちゃまに先ほどの疑問を提示してみたら、彼はあっさりと言った。
「何が原因であるにせよ、あからさまに敵対して公私も分けられないのはプロとしてというか人間として失格ですね。あんな人たちを纏め上げるなんて、正直、自分に出来るかわかりませんよ」だって。
 相変わらず無駄に冷静なこと言ってるわねー。
 まぁ、それについては同感。
 どうにかしろって話。

10月7日(金)
 ありえない。本当ありえない。
 朝起きたら彼氏からメールがきてて「別れよう」ってそれ私の台詞ですから。
 っていうか、何? そんな一行メール送ってこないでよ、鬱陶しいなぁ。
 とりあえず電話してみたら、自分の胸に手を当てて聞いてみろ? 残念ながら私の胸は手を当てて聞いてみたところでしゃべってくれるような化け物じゃないのよ。
 で、よくよく問いただしてみたら、「お前昨日若い男と歩いてただろう」って、はぁ?
 それって巽のお坊ちゃまのことでしょう?
 冗談、あんな年下恋愛対象外だし(まぁ、数年したら見所はあるだろうけど、今はねぇ)いや、逆援助交際とかなにわけのわかんないこと言ってるのあんた?
 まぁ色々思うところあるけど、どうせ別れるつもりだったし、本当のことも言えないしねぇ。
 下手な言い訳だと思われるのがオチだし、そういうの嫌いだし。
「はいはいわかりました、そうやって勘違いしていじけてれば? じゃあね」
 とだけ言ってきった。
 メアドも番号を消去して、ついでに着拒しておいた。
 ああ、もう、ああいう勘違いの嫉妬男って嫌い。
 朝っぱらから嫌な気分に陥ったわよ。まったく。

10月8日(土)
 休みの日だけど、この間の合同調査の報告書を渡すために巽のおぼっちゃまとあった。
 いや、ちょっと、本当勘弁してよ。
 高校生のおこちゃまなんて、私の恋愛対象外なんだけど、本当。
 まぁ、多少頭が固いところあるし、冗談通じないけど、巽のおぼっちゃまのことは信頼してるし、それなりに尊敬しているわよ? 同じ時期宗主として。
 でもねぇ、沙耶じゃあるまいし。
 とか思ったら機嫌が悪いのが見抜かれた。
 沙耶ほどじゃないけど、私だって十分わかりやすい。
 とりあえず、面白おかしくその元彼の話をしてみたら、巽のおぼっちゃまったら真剣な顔して「じゃぁ、僕のせいなんですね、すみません」だって。
 もう本当冗談通じないんだから。
 可愛らしい。
 くすくす笑ってそれを否定する。
 ああやっぱり、弟みたいなものなのよ、巽のおぼっちゃまって。
 いらいらしていた気持ちが少し和らいだ。
 ああ、そうそう。それからお昼に降っていた雨がやんでみたら、虹が出ていた。
 それもきっと、気持ちを和ませてくれたもの。
 ああ、私が虹に気づいたのは沙耶から「虹!」とだけ書かれたメールがきたからなんだけど。
 私の可愛い妹は、本当に虹とか雪とかそういう神秘的なものが好きなのね。
 愛らしいなぁ、もう。

***
4周年記念企画もの
人気投票2位です、ありがとうございました

マオの日記(小噺的断片)

10月2日(日)
 今日は、隆二のバイトもお休みだったから、本当はお外に行きたかったんだけど、雨が降っていて、あたしは雨が嫌いじゃないけど、隆二は雨は好きじゃないから、だからしょうがないからお家でごろごろしていた。
 なんて非生産的なんだろうとかちょっと思ったけれども、別に何かを生産したところで何にも意味をなさないことなんだから別にいいんだけど。
 それにちょっといいものが見れた。
 ソファーにねっころがってテレビを見ていた隆二は、気づいたらそのまま眠っていて、あたしはテレビをそっちのけでその寝顔を堪能することが出来たからだ。
 隆二が寝ているのにあたしが起きているなんてこんなこと、だって滅多にないもの。
 いっつもしかめっ面をしているけれども、寝ているときはあど……あどけない? 顔をしているから本当に可愛らしい。
 しかも今回は誉められたことに、隆二は……茜さんの名前を呼んだりしなかった。
 隆二ってへたれだからいっつも寝言で茜さんの名前を呼ぶけれども今日は呼ばなかったから誉めてあげていいと思う。
 そう思ってちょっといい子いい子してあげた。
 本当はあたしがして欲しいんだけど。
 でも、気づいたらあたしも眠っていて、あたしが起きたら隆二はすまし顔でコーヒーなんか飲んでいてちょっとむかついた。

10月3日(月)
 今日は隆二がお昼からバイトだった。
 ので、あたしは大人しくお留守番。
 この間お客さんの前でうろうろしていたり悪戯していたら隆二はそれが気に入らなかったらしくて、自宅謹慎? を命じられてしまったのです。
 隆二ってばテレビも消して行っちゃうからあたしつまらなくってずっとごろごろ眠っていた。
 そしたら嫌な夢を見たりもして、あたしを置いていった隆二が恨めしかった。

10月4日(火)
 今日も隆二はバイト。
 でも、隆二がバイトにいくちょっと前にエミリさんが遊びに来たので、隆二がいない間はエミリさんに相手をしてもらった。
 でも実はエミリさんはちょっと苦手。
 でも最近は今までよりもお話できるようになったからいいんだけれども。
 エミリさんにここぞとばかりに隆二の悪口をまくし立てたら、珍しくエミリさんが笑っていて、「本当に仲がいいんですね」とか言うからなんだか恥ずかしかった。
 途中でエミリさんのケータイとかいうのに電話がかかってきたからエミリさんは帰っちゃったので、隆二が帰ってくるまで一人でお昼ねして待っていた。

10月5日(水)
 ちょっと曇り空でご機嫌斜め。
 雨が降るなら降って欲しいなぁとあたしは思うの。
 だって白黒はっきりつけていたほうが気持ちがいいもの。
 隆二のバイトは朝だったので帰ってくるまでお昼寝(でも朝だから朝寝かもしれないかも)して待っていて、隆二が帰ってきてから、あたしはお腹すいたってごねてみた。
 だってその通りなんだもん。
 隆二はあきれてため息ついて、それでも外に連れて行ってくれた。
 お外に出るのは久しぶりだと思う。
 最近隆二はあたしに構ってくれない気がする。
 今度からもっと構ってもらえるようにアタックしてみよう。
 ってこれはエミリさんの助言だけど。
 隆二と二人でうろうろしていたら綺麗な女の人が隆二に声をかけてきた。
 あたしがいるのに!
 隆二ったらへらへら笑いながら相手をしているからとってもむかついた。
 勿論それがあたしがお腹すいたってごねたからで、あたしのご馳走にっていうことで逆ナンとかいうのをしてきた人を捕まえたってだけのことだし、最初にそれを提案したのはあたしだし、あの女の人にはあたしが見えないことなんて知っているけれども気分がとても悪くなった。
 だから、必要以上にその女の人の精気をとってみた。
 隆二には「殺すな」って言われたけれども、でも、あたしから隆二を奪う人なら皆皆死んじゃえばいいと思う。
 だって、あたしの敵だもの。
 あたしは敵には容赦するつもりはないもん。

10月6日(木)
 最悪。
 隆二なんて大嫌いっ!!
 またいつかみたいに隆二が居眠りしていたからわくわくしながらそっちにいったのに、隆二ってばまた寝言いってた。
 なんでいつも茜さんなの?
 なんでいっつもいっつもそうなの?
 最低最低最低。
 隆二なんて大嫌い!
 もう居ない人のことをとやかくいってもしょうがないかもしれないけど、あたしは茜さんなんて大嫌いだ。
 あったこともないけれども。
 殺してやりたいぐらい、もう死んでいるけど。
 隆二の記憶の中にいつまでも居座ってないで早く出て行って、そこはあたしの場所なんだから。あたしの場所を盗らないで!
 死人の癖にでしゃばらないでよ。
 最低最悪。
 こんなこと考えるあたしが一番最低で最悪だ。
 茜さんを殺したりしたら、決定的に隆二に嫌われることわかっているのに。
 でも、あたしは悪くないもん。
 むかついたから今日は一日隆二とは口をきかないでふて寝していたら、隆二も怒ってあたしに黙ってバイトにいっちゃったけれども、
 でもそんなこと知らない。

10月7日(金)
 ケンカ続行中。
 でもケンカだと思っているのはあたしだけみたいで、隆二はへらへら笑いながらあたしに「おはよう」とか言ってきたから無視した。
 別に隆二は悪くないのかもしれないけれども(そりゃ夢の内容にまで隆二は責任をもてないだろうし)それでももう少し気をつけてくれればいいのに。
 デリケートが足りないのよ。
 ……あれ? なんか違うかも? デリバリー? デリ……?
 もうなんだかわからないけどっ!!
 あたしが目の前にいたっていっつも違うことばっかり考えてるんだもん、本当最低。
 別にあかねさんと同じ立場になりたいわけじゃないけれども(大体そんな甘っちょろい考えなんて反吐が出るし)だからってあたしをないがしろにするのって違うと思うの。
 ああもう、なんだかものすごく気持ち悪い。
 そしたら、エミリさんがまた来た。
 この間の用事の続きらしいけど、あたしには何にも言ってくれなかったからもっとむかついた。
 いっつもあたしはのけ者で邪魔者なんだ。
 前は敵対していたエミリさんの方がいいんだ、
 とか思ってものすごくむかついたから大きな声で歌って逃げた。
 どうなったかしらない。隆二が謝りにくるまであたしは帰らない。
 へらへら笑いながら街を腕を組んで歩いているカップルを見てたらもっともっとむかついてきた。
 あたしに無いものをもっている彼らがむかつく。
 どうしてあたしには肉体がないのにあの人たちにはあるんだろう。
 消えちゃえばいいのに。
 隆二は神様なんていないって言っていたし、あたしもそう思うけれども、でももし神様がいるならあたしに肉体をくれればいいのにとか思う。
 でもやっぱり神様なんていないんだろうけど。
 ああもう、誰が悪いんだっけ? わかんないけど。
 皆皆大嫌い。
 あたしの敵に回るなら神様だって容赦しない。

10月8日(土)
 怒られた。
 隆二にめちゃめちゃ怒られた。
「アレだけ歌うなって言ったのになんであんな風に歌うんだ! 何が気に入らないのか知らないが、言いたいことがあるならはっきりいえ! 勝手にどっかに行くな!」とかなんだか色々言われた。
 隆二が悪いのにとか思ったけれども、でも探しにきてくれたのが嬉しかったから素直にごめんなさいって謝ったら、隆二は一瞬ひるんだ顔をして結局ため息をついてあたしの頭をいい子いい子してくれた。
 茜さんの名前を呼んでいたり、あたしを仲間外れにしてエミリさんと話していたことはものすごくむかつくけれども、でも本当にあたしのこといらないなら探しになんてきてくれなかっただろうし、っていうか隆二なら探しに来てくれるだろうなんていううぬぼれがあったのも事実だけど。
 「帰るぞ」って隆二は手を出したからあたしもそれにつかまった。
 あたしには肉体がないけれども、でもとりあえず(隆二に主導権が握られているとはいえ)あたしは隆二には触ることが出来るんだからこれはこれでありかなぁなんて思ったりもして。
 うんってあたしは頷くと隆二の腕にしがみついた。
 だってね、あたしは思い出したの。
 今日は隆二、朝からバイトのはずだったのに。
 さぼったのかな? 聞けないけど。わかんないけど。
 でも隆二がバイトを休んでまで来てくれたならあたしとっても嬉しいから。
 だからね、もしもあたしから隆二をとりあげようとする人が居るならエミリさんでも、エミリさんのお父さんでも(名前忘れちゃった)神様でも、茜さんでも、京介さんたちでも、勿論それが隆二本人でも容赦しないの。
 だってそんなこと許さないもん。例え殺しちゃっても構わない。
 もし、エミリさんのお父さん(エミリさん本人だったらどうなるかわからないんだけど)や茜さん(死んじゃってるけど)や京介さんたち(そう簡単に死なないけど)を殺したら隆二はあたしのことを嫌いになって今度こそ本当に捨てられるかもしれないけれども、でも何もしないでとられちゃうよりはましだし、もし捨てられそうになっても強引についていくからいいんだ。
 あ、それからちょっといいこと。
 お昼にちょっと雨がふって、止んだら虹がでていた。
 虹とかそう言うもの、あたし大好き!

***
 四周年記念企画もの
 人気投票で1位でした。ありがとうございます。

追憶(小噺)

 午後四時半。
 時計はそう言っていた。

「相模様」
 彼の忠実なる使い魔が、声をかけてきた。
「今日は上総様のところへ行かないのですか?」
「ん、ああ」
 ぼんやりと机の上に頬杖をついていた相模は、気のない返事を返した。
「相模様?」
 いつも冷静だの冷酷だの冷徹だの言われている主人の、らしくない反応にシオンは首を傾げる。
「いかがなさいましたか? お体の具合でも悪いのですか?」
「いいや」
 相模は目の前に置いた夕日色した液体を眺めながら答える。
「ただ、少しばかり考え事をしていてな」
「考え事、ですか?」
「ああ」
 グラスを持ち、その液体を軽く揺らす。
 波が立つ。
「なぁ、シオン。僕が長になってから何年が経つ?」
 シオンは少しの間目をつぶり考え、答えを出す。
「312年と3ヶ月と10日ですね」
「細かいな」
 使い魔の正確な答えに、思わず相模は笑う。
「何もそこまで正確に出すことはなかったのに」
 そう言うと、笑いをひっこめ夕日色をした液体を飲む。
「こんな時間からお酒を飲むことはおすすめしかねます」
 シオンはあくまで控えめに言う。
「酔えないんだ。水のようなものだよ」
 自嘲気味に相模は嗤う。
 シオンは何も言わない。
「なぁ、シオン。もう300年以上も経ったんだ。はやいものだな」
「……そうですね」
「僕もいい加減隠居して暮らしたいものなんだがなぁ」
 ため息混じりにそう言うと、グラスにもう一度夕日色した液体を注ぐ。

「……なぁ、シオン。彼女が消えてからもう20年ぐらい経って、彼女の子どもも、今16。はいやもんだよなぁ」
「相模様。失礼な言い方ですが、年寄りじみた言い方ですよ」
「はは。そうだな。だが、僕ももう300年以上生きてるんだ。年寄りだよ。」
 そう言って、2杯目に口をつける。
「あと、どれぐらいこうしているんだろうな」
 シオンは何も答えなかった。

「シオン」
「はい」
 相模は振り返り、滅多に見せない優しげな微笑みを浮かべた。
「いずれにしても、君はこうして僕の記憶からこぼれ落ちそうなことまで覚えていてくれ」
 シオンは鼻先を地面につけるようにして頭をさげた。
「おおせのままに」


 グラスを空にする。
 そうして相模は立ち上がった。
「さて、上総ちゃんのところへ行こうか」
 そうやって口元に冷ややかな笑みを浮かべたのは、シオンのよく知るいつも通りの主だった。
「はい」

**
古すぎて誰だこれ

一問一答設定集:硯茗

名前と年齢は?
「硯茗(すずり めい)。27です。」

誕生日は?
「4月1日。嘘つきの日です」

職業は?
「弁護士。上泉法律事務所でイソ弁やってます」

周りからはなんと呼ばれていますか?
「硯さん、が多いかな。先生とか呼ばれるのはちょっと苦手。シンは茗ちゃん、とか呼びたいように呼ばれてる」

座右の銘は?
「十人の真犯人を逃すとも一人の無辜を罰するなかれ」

長所は?
「こういうの苦手なんですけど……」

短所は?
「だめな男にひっかかるところ」

好きな食べ物は?
「チーズケーキ」

嫌いな食べ物は?
「給食によくでてきた、ポークビーンズ。存在の意味がわからない」

お酒は強いですか?
「あんまり。好きなんだけど……」

煙草は?
「大嫌い」

好きなことは?
「仕事」

嫌いなことは?
「……マスメディア。カメラ」

苦手なものは?
「小鳥遊さん」

好みのタイプは?
「優しい、年上。子どもの頃にお世話になったお兄ちゃん」

恋人はいますか?どんな人ですか?
「社会不適応でやくざな仕事をしていて、女たらしの探偵さん」

後悔していることはありますか?
「後悔だらけ、です」

愛読書、はなんですか?
「女には向かない職業。コーデリア・グレイが好き。ペリィ・メイスンシリーズも好き」

倖せを感じるときは?
「依頼人が笑ってくれたとき」

夢は?
「誰も間違えない司法制度を確立すること」

もしも一つ願いが叶うなら?
「幸せでいたい、です」

これだけは許せないことは?
「有罪率99、9%に潜む欺瞞」

守りたいものは?
「依頼人」

この世で一番大切なものは?
「不本意ながら、私の探偵さん」
 
 
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