表立って載せるほどではない小噺と、あとがき。 その他キャラ設定などなど、徒然なるままに書き連ねるページ。 

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あとがき

01/体感温度(隆二&マオ→茗)
不毛な会話の人たち。。
「暑いな」『暑くないでしょ』がやりたかったのです。
あと、マオの好みはまんま私です。

02/夏バテにはご注意を(茗→スイリ)
微妙にいちゃつく人たち。
何かと慎吾はご飯を作っている気もしますが……。

03/夏の来客(スイリ→円)
慌てるスイリちゃん。
慌てながらも法律馬鹿っぷりを発揮。

04/見えない来客(円→三浦)
お仕事円。
店長の恋愛相手がまさかこんなところに繋がるとは、
私も思っていませんでしたよ。

05/夏の幻(三浦→京介)
霊感少年。
三浦殿は絶対に見えそうだな、というお話。
そして彼が怪しい人にあう話。

06/同類相憐れむ(京介→武蔵)
怪しい人の話。
自分で書いておいてあれですが、とことん怪しいと思います。

07/記憶(武蔵→茜)
記憶力の無い人。
こんなおまけ的な話で魔女の組織がどうなっているのかとか、
そういうものを書くってどうなんだろう?
なんて、少し思いながらも。

08/彼女と猫(茜→相模・シオン)
猫好きの話。
そして、そんな猫好きが好きだという話。
ほのぼのしているこの人たちが好きですよ。

09/猫と彼女(シオン→朝陽)
気まぐれ長と使い魔。
とりあえず猫がいると目で追いかける私。
バイト先にいる猫は大人しいので、触るけど。

10/お仕事見学(桜子→麗華)
闘志を燃やす桜子さん。
そして、とても眠い朝陽ちゃん。
父親が新聞記者なのは、苗字が設楽だから
(設楽デスク、でわかって笑ってくれる人がいるのかどうか
↑マニアックすぎるという自覚はありますが)

11/夏ボケにはご注意を(麗華→直純・巽)
幻覚をみる女検事。
なんだかんだ言って、それなり茗のことも認めている人。
というか、認めているからああなのか……?

12/暴走自転車の怪(直純・巽→エミリ)
優しい騎士と冷酷お坊ちゃま。
この二人はとてもとても馬が合いません。
女王はとてもはまり役だと思う。

13/暴走自転車と怪(エミリ→シャドー・ファントム)
やけになったエミリ。
研究所にはろくな人間がいないらしいですよ。
この子がどうかわっていくかも話としては重要なところ。

14/真夏の夜のお仕事(上総→譲)
仕事をする魔女と使い魔。
冒頭の二人(一匹と一羽)の会話が、それぞれの性格がでていると思う、

15/真夏のお仕事(譲→探偵同好会)
お忙しい捜査一課。
実はこの辺から地理とかそういう矛盾が出てきていますが、
パラレルストーリーなので気にしない方がいいと思います。うん。

16/真夏のお仕事ごっこ(生徒会長→小春)
横暴生徒会長とお子ちゃま探偵同好会。
生徒会長が書いていてとても楽しい。
ろくな人間がいない学校ですよ。

17/小春日和の夏(小春→颯太)
夏なのに小春日和な喫茶店。
高校生だけで成り立っている喫茶店ってどうなんだろうか、とも思う。
けど、きっと小春は土地を持っていたりするんだと思いますよ。

18/珈琲論(颯太→新・店長)
珈琲マニア。
コーヒーについて教えてくれた友人に感謝!
ちなみに、本当に豆についてきかれたことがあります。

19/変な来客(新・店長→沙耶)
暇すぎる喫茶店。
お盆は本当に暇でした。

20/紅茶論(沙耶→上泉)
紅茶マニア。
ティーバックは赤いポットのアレ。
あ、あんまり美味しくないと思うんですけどぉ。

21/アツサニマケズ(上泉→隆二&マオ)
走る、ミス・マープル。
どう扱っていいのかわかりにくい人。
何の意味が〜のくだりが気に入っていたり

22/真夏のコンビニ族(隆二&マオ→高校生三人組)
バイトをする不死者と邪魔をする幽霊。
愛想の無い店員がいたもんだ。
「お二人とも」の三浦殿の台詞がやりたくてやりたくてしょうがなかった。

23/図書館ではお静かに(高校生三人組→静)
結局は高校生な三人組。
凸凹ですがいい感じにこの人たちはおさまっていると思います。
主は背が低いので本を取るのに苦労しています。
ええ、それは私もですが。

24/図書館ではお勉強を(静→龍一)
優等生、静。
この子は叔父様があいつなことを知らないわけですが、
知ったときにどれだけ彼女の価値観が揺らぐのか……。

25/決戦は夏(龍一・円→英輔)
受験生とおねーさん。
この二人のコンビもなかなか面白いと思っています。
色々とね。

26/甘いのがお好き(英輔→ホーセイ)
恐るべし甘党の話。
甘いもののためだけに生きているのです。
そして、九州男児という名前をつけた店主が凄いと思う。
彩果の宝石は浦和土産らしいっすよ
私はあんまり好きじゃないんですがね(え)

27/浮気調査(ホーセイ→慎吾)
頑張るスウリ探偵。
お盆云々は白夜行とかその辺がネタ元(確か)

28/素行調査(慎吾→探偵同好会)
いい性格している渋谷探偵。
慎吾の方がホーセイよりも探偵の腕は上です。
うん、年齢的にもね!

29/仕事調査(探偵同好会→和広)
頑張れ太陽君。
どんなに振り回されてもついていく、子犬みたいな子です。
朝陽ちゃんと並ぶと子犬が二匹、みたいな感じです。

30/メモリアル(和広→梓)
憂えるおやっさん。
書いているときは人間関係狭いなぁと思ったけれども、
意外と世の中そういうことあるんだなぁと思ったり。
(バイトの先輩の妹の元彼が同期の子の友達だったり、とか)

31/青春の夏(梓・相模→円・直純)
愛の告白と見える人達。
正直、チビ円と直純が書きたくてしょうがなかったのです。

32/怪談(調律師→裁判委員長)
憑きやすい少年と祓う女性(と大きくなった人々)
龍一に憑いてきた男の子を祓う、というのは前からやりたかったネタ。
ビルは怪談の噂になってます。

33/いざ、一勝負(裁判委員長→四月一日)
将棋好きな高校生。
桜子さんのところの裁判委員長。
まともな人間はやっぱりいません。

34/さぁ、一勝負(四月一日→沙耶・龍一)
将棋好きな鑑識。
九官鳥の鑑識さん。
慎吾とはとても仲良しです。

35/ドッグディズ(沙耶・龍一→?)
再会した人々と総括。
さぁ、皆さん声を揃えて「またこのネタかよ」
好きなんですよ、この組み合わせ。
というわけで、続「Stray cat」です。
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35/ドッグディズ(沙耶・龍一→?)

「お腹がすいた」
「……それで?」
「外は暑そうね。ここはクーラーが利いていて、とても涼しい。わかる? つまり」
「あたしにお昼ご飯を買って来い、そういいたいんでしょ? 自分で買いに行くのも、自炊するのも暑くていやだから」
「当然」
 沙耶の言葉に円は満足そうに頷いた。沙耶が呆れた、と呟いた。
「何がいいの?」
 軽くため息をつきながら、手近なメモ用紙を引き寄せる。
「冷やしうどんとか冷やし中華とか」
「はいはい。清澄と直兄は?」
「何でも。強いて言うなら、ご飯系」
「あー、じゃぁ、ラーメンで」
「了解」
 鞄を掴むと立ち上がる。
 それかふっと、隣に尋ねた。
「龍一はどうする?」
「え?」
 まさか聞かれるとは思っていなかった龍一は少しほうけた顔をして、それから立ち上がった。
「じゃぁ、俺も行くよ。荷物もち」
「そう? ありがとう」
「えっ……」
 ひそかに一緒に行くタイミングをはかっていた直純は小さく声をあげたが、それに気づいたのは隣の円だけだった。
「じゃぁ、行ってきます」
「いってらっしゃい」
 その円は直純の声を黙殺して、片手をふり……、
「あ、ついでに煙草も」
 そう付け加えた。
「覚えていたらね」
 最初から買ってくるつもりのない沙耶は、そう返事をした。

 ぎしぎし、
 相変わらず今にも壊れそうな音のする階段を下りる。
 2階まで降りたところでちらりと、噂の将棋クラブを覗いてみた。
 そしてまた降りていく。
 全部降りきったところで、沙耶は言った。
「お客さん、2人しかいなかったね」
 その言葉に龍一は頷き、
「また、つぶれちゃうかな?」
 肩をすくめて尋ねてみた。
「そうねぇ……、まぁ、こればっかりはしょうがないわ」
 沙耶は苦笑して答えた。



「10月の第四日曜だっけ?」
「そうよ、見事に学園祭とかぶってるけどね。ちょっと、これってどういうこと?」
「どれ?」
 向こうから歩いてきたカップルらしき男女二人組みは立ち止まり、女性が持っていた本を男性が覗き込んだ。
「げ、こんなの知らないし。俺の受けたところは地上波デジタル放送の問題なんてでなかったから」
「もう、この役立たず!」
 女性は一方的にそういいきると、また本を見ながら歩き出す。
「スィ、転ぶぞ」
 男性がその隣に並ぶ。
「法令は大丈夫なのよ。6割どころか8割とる自信がある。うん」
「法律馬鹿だもんな」
「五月蝿い、ホーセイ。でも、一般教養が駄目。何、地上波デジタル放送なんて行政書士に必要?」
「知らないよ。だから、俺が受けたころにはそんなものなかったし」
「ああ、そうよね、ごめん。もう、『走査線525本のアナログ放送に対し、デジタル放送では走査線1125本の高精細な映像が視聴できる』合ってるか合ってないかどころか、意味すらわからないわよ。走査線って何? あー、今年こそ受かりたい。もう落ちたくない」
 女性が一人で憤りながら歩いてくる。
 すれ違うとき、沙耶と肩がぶつかった。
「あ、ごめんなさい」
「いえ。すみません」
 女性はそういって何度か頭を下げると、また本を見ながら歩き出す。
「すみません」
 連れの男性が沙耶に向かって一度頭を下げ、
「スィ、わかったからお前どこかで座ってやれよ。珈琲代ぐらい出してやるから」
 女性に向かってそう話し掛けた。
 そんな二人を見送りながら、沙耶は軽く肩をすくめた。
「大丈夫?」
「別に、掠っただけだし」
 それから龍一の方をみて、少しだけ悪戯っぽく笑った。
「大変そうね、受験生」
「……」
 龍一は明後日の方を向いた。



「暑いわね」
「そうだね」
「でも、提案」
 隣よりも一歩後ろを歩く龍一に言った。
「この次の角を曲がればそこにコンビニがあるわ。でも、あと10分ぐらいかかるけど、別のコンビニがあっちの方にあるの。そっちまで行かない?」
 その提案を却下するだけの理由を龍一は持っていなかった。
 微笑んで頷くと、沙耶は安堵したように息を吐いた。
 ガードレールの傍に止めてあったバイクの上でまどろんでいた猫が、にゃーと一度鳴いた。
 バイクの持ち主らしき男性が道の反対側から、道路を渡ってこちらへ歩いてくるのが見えた。



 二人で何も言わないでただ歩く。
 ほんの十数分のその道を、ただ黙々と。
 この沈黙が心地よいと、僅かに沙耶は笑った。
 そして、そのままを言ってみようかと口を開きかけたときに、
 ききぃっ!
 大きな音がして、二人はそちらを見た。
 それがブレーキ音だと気づいたのは、そこにあったのがバイクだったからだ。
「シン、ありがとう、助かった」
 後ろに座っていたスーツ姿の女性が、転げるようにしてそこから降りると、ヘルメットを投げた。それを片手で受け取り、男性は
「帰りは?」
「あー、出来たら送って」
「じゃぁ、終わったら電話してくれ」
「うん、ホントありがとう」
 女性は走り出そうとして、振り返ると、
「愛してる」
 ヘルメット越しに男性に軽く口付けて、本気なんだか冗談なんだかわからない口調でそう言うと、正面のビルへかけこんだ。
「こういうときだけ愛してるとか言われてもねぇ、俺は便利な足か」
 男性が自嘲気味に呟いて、じっと自分を見ている二人に気づいた。
「……何か?」
 目の前であんな光景を繰り広げておいて“何か?”もへったくれもないと思ったが二人は声を揃えて答えた。
「「いえ、別に」」
 電線にとまった鴉が、一声カァと鳴いた。



「今日はおかしな人に会うわ」
 沙耶がぼそりと呟いた言葉に龍一は苦笑した。
「暑いからね」
「ああ、暑いから」
 その言葉に沙耶は納得したかのように頷いた。
 その傍を高校生ぐらいの男の子が二人、かけていった。
「暑いのにご苦労なことね」
 沙耶がそう呟くと、龍一も一つ頷いた。



 目的地のコンビニについたとき、沙耶は軽く眉をひそめた。
 店先で三人の女の子がたむろっていたからだ。
「マンバメイクっていうんだっけ?」
 隣の龍一に耳打ちする。
「山姥に失礼だよな。まだ見たこと無いけど」
 龍一は答えた。
「意外といい人よ」
「え、会ったことあるのっ!?」
 龍一の驚きの声に軽く微笑み返し、さてはてどうしようかと、僅かに思案して、面倒だから関わらないでおこうかと思ったそのときに、
「あー、またあんた達!」
 後ろから甲高い女の子の声がした。
「昨日に引き続き今日も店先でたむろって居るなんていい度胸じゃないの!」
「魔女さん、昨日注意されたばっかりでしょう?」
 一緒にいた女の子がそう言った。
「今日は三浦君もいないんだから、程ほどにしておきなさいよ」
 そんな忠告なんぞに耳を貸さず、注意した方の女の子は続ける。
「昨日も言ったと思うけれどもそういう、貴方達みたいな子どもがいるから大人に馬鹿にされるのよ。わかっている? だいたいね」
「……あまり厄介ごとに首をつっこまない方がいいと、昨日忠告しなかったか?」
 女の子の言葉をさえぎるように、呆れたような男性の声がした。
「あ、」
 だまって成り行きをみていた沙耶は、小さく声をあげた。
『あれ? 沙耶じゃんっ!!』
 その男性の後ろにいた幽霊が顔中を笑みにして手を振ってきた。
「知り合い?」
「ええ」
 幽霊を指さしながらの龍一の問いに頷き、微笑み返す。
「あ、あなた、昨日の。ここ、貴方の勤務先じゃないんじゃないの?」
「今日は休み。コンビニでバイトしているからって自分のバイト先に行くと思ったら大間違いだ」
 女の子の言葉に青年はそれだけ返すと、沙耶の方を見て、会釈した。
「あのときはお世話になりました。……ええっと、大道寺さん?」
 忘れてたのか、とも思ったが、彼と話したのは少しだけだし、彼が人間ではないという事実を除いてはたいしたインパクトもない出会い方だった。それは向こうも同じだろう。
「はい。お久しぶりです」
 そもそもそう言って笑った沙耶だって、彼の名前をすぐには思い浮かべられなかった。
「神山さん」
 記憶から引っ張りだしてきたその名前に、青年は一つ頷いた。
『沙耶、久しぶりー』
 神山隆二の背中にへばりついていた幽霊はそこからひらりと離れると沙耶に抱きついた。
「久しぶり、マオ」
 マオにだけ聞こえるようにそういうと、マオは満足そうに頷いた。
「ここに用?」
「ええ、お昼の買出しに。職場のみんなの分も」
「ああ、この辺なんだ」
 そう言いながら隆二はマンバと女子高生を放置して店内に入る。
 そのあとに続きながら、沙耶は首を傾げた。
「放っておいていいんですか? お知り合いなんじゃ?」
「まさか。昨日も見かけた正義感の強いじゃじゃ馬女子高生だ。そもそも放っておいても店員が対処しに行くさ」
 そういった隆二の隣を店員がかけていく。
 外に出て行ったその店員は彼女たちに何かを言っているようだった。
 納得いかない顔をしてマンバと女子高生がその場を立ち去る。ただ、女子高生の連れの方は、晴れ晴れとした顔をしていたが。
「ホントだ」
「な?」
 隆二は肩をすくめる。
「神山さんは何を買いに来たんですか?」
「天気がいいから外で飯でも喰おうと思っておにぎり」
「……天気がいい?」
 龍一がその言葉に眉をひそめた。
「些か良すぎるように思いますけど」
 沙耶もそう言って苦笑する。
 無論、彼が人間ではないということを踏まえての言葉だが。
「暑くないし」
『そうよねー』
 沙耶の周りをくるくる回りながらマオが頷いた。
「大道寺さんもよかったら一緒にどう? こいつも喜ぶし」
「せっかくですけど」
 沙耶は微笑んで辞退した。
「仕事中ですし、何よりも、あたしには暑すぎるので」
 そういうと隆二は今気づいたかのように、ああ、と呟いた。
「そうかも」
 隆二は苦笑しておにぎりを二つとる。
 沙耶は頼まれていたものと自分の分のお昼ご飯をかごの中にいれた。
「龍一は? 奢るわよ、500円ぐらいまでなら」
「でも」
「頑張ってる受験生にご褒美」
「じゃぁ、お言葉に甘えて」
 サンドイッチをかごの中に入れると、沙耶は満足そうに笑った。
『ねぇ』
 マオが沙耶の肩越しに龍一を見ながら尋ねた。
『この人が沙耶の大切な人?』
「なっ!」
「マオ」
 顔を真っ赤にして固まる沙耶をみて、隆二はため息混じりにマオをたしなめた。
「失礼だろ」
 そうだったとしても、違ったとしても。まぁ、あの反応を見る限り当っているのだろうが。
 沙耶の後ろで龍一も同じような顔をして固まっていた。
『だってだってだって』
 マオは頬を膨らませながら、隆二の背中にしがみつく。
『この間は上手いことはぐらかされたのよ?』
「だったら尚更だ。はぐらかされたっていうことは言いたくないってことだ。すまないな、この通り中身はお子様なんでな」
 最後の台詞は沙耶と龍一に向かって苦笑しながら言った。
 沙耶は落ち着きを取り戻し、微笑んだまま首を横に振った。
「彼は」
 曖昧な笑顔を浮かべている龍一をしめしながら続ける。
「榊原龍一。あたしの働いている事務所で手伝いをしてくれている人です。あたしの……」
 右手で肩を掴む。
「あたしの、これ、も知っている人なんで」
「ああ、なるほど」
 低く押し殺した声で沙耶が紡いだ言葉にも、隆二はあっけらかんと言葉を返した。
「大道寺さんの理解者ってわけだ。そういう人は大事にした方がいい。いなくなってから後悔しても、どうしようもない」
 微笑みながら隆二は言う。
 マオが軽く唇をかんで隆二から離れた。
「……それは、経験から、ですか?」
「ああ」
 一人で棚の商品を見るふりをするマオに一度視線をやり、沙耶は続けた。
「でしたら、その言葉そっくりそのままお返しします。……いなくなってから慌てて探しにでても、遅いんですよ? いつかみたいに」
 そこでくすりと笑う。
 隆二はきょとんとした顔をして、それからすぐに微苦笑を浮かべた。
「ああ、確かにな」
 そういって横目でちらちらこちらを伺いながらもデザートなんて眺めているマオの右腕を掴んだ。
『……。』
 マオは少しだけくすぐったそうな顔をして笑った。そのまま、また隆二の背中へくっつく。それをみて、沙耶も微笑んだ。
 そして、そんな沙耶をみて、龍一が少しだけ微笑んだことを、本人以外誰も知らない。



 かごをレジに出し、それから隆二は店員に告げた。
「あと、マルボロ」
『隆二! 禁煙!』
 背中にはりついていたマオがわーわー叫ぶ。
 それを無視して隆二は会計を済ませる。
 隣のレジで会計を終えた沙耶に、その買ったばかりの煙草の箱を投げた。
「大道寺さん」
「うわ」
 慌ててそれを受け取る。
「これは?」
「もう一人のねーちゃん、なんだっけ? 名前、確か聞いてないと思うんだけど」
「円姉?」
「そう、その人へ。なんだかんだいってあの時は世話になったし」
 出来れば禁煙を勧めたい沙耶は少しだけ渋い顔をして、それからすぐに笑った。
「ありがとうございます。この上もなく、喜ぶと思いますよ」
 隆二は少し笑うと、沙耶の隣の並ぶ。
 歩きながら、袋をあさり
「あとさ」
 肩でドアを開けながら、目的のものをとりだすと沙耶ではなく龍一に渡した。
「お二人でどーぞ」
「あ、ありがとうございます」
『それねー、あたしが選んだんだよ〜』
 何時の間に買ったのか、二つのソフトクリームを龍一は受け取っていた。
「ありがとうございます」
 ぺこりと頭を下げる沙耶に、
「だから、この間のお礼だって。じゃぁ、まぁ、元気で」
 そう言って笑うと、さっさと歩き出す。
『えー、ちょっと隆二』
 マオが慌てて隆二についていこうとして、もう一度沙耶と龍一の前に戻ってくると二人の手を気持ちだけでも掴んで言った。
『喧嘩しちゃ駄目よ』
「マオもね」
 苦笑しながら沙耶が言葉を返すと、マオはにっこりと笑った。
『大丈夫。喧嘩するほど仲がいいって言うから。ええっと、龍一さん?』
 マオに名前を呼ばれて龍一は慌てて頷く。
『沙耶のことよろしくね。じゃぁ、またね』
 マオはそれだけいって手を振ると、一度も振り返らずに歩いていく隆二を追いかけた。
『隆二ー、待ってよ〜』
 そう言いながらも、時々こちらを振り返って手を振る。
 そして、隆二の背中に再びしがみつくと、もう一度大きく手を振った。
 彼らが角を曲がると、沙耶はくるりと向きをかえて歩き出す。
 慌てて龍一がその隣に並んだ。
「はい」
 そして持っていたソフトクリームを片方渡す。
「あ、ありがと」
「それで、どういう知り合いなの? 仕事上?」
 そのソフトクリームを食べながら龍一が首を傾げる。
「ん〜、前ねマオが神山さんと喧嘩して、あたしの家の前まで家出したことがあるの。そのときに、ちょっとね」
「仲良くなったんだ」
「そう、なんだか放っておけなくて」
「似ているよ」
 真夏の太陽にさらされて勢いよく溶けていくアイスに慌てながら龍一は言った。
「……何が?」
「沙耶が」
「……何に?」
「あの二人に。うわ、溶けるのはやいって」
 真夏の太陽に文句をいいながら、龍一はアイスを消費していく。
 同じように溶けていくアイスに格闘していた沙耶は続きを促さなかった。
 大体食べ終わったところで、もう一度尋ねる。
「神山さんとマオに? あたしが?」
「そう、なんとなくだけどね」
 最後のコーンの欠片を口に放り込みながら龍一は頷いた。
「今日は随分と、誰かに似ているって言われる日なのね」
 おどけて笑う。
「でも、あたしはマオみたいに可愛げがあるわけでもないし、神山さんみたいに落ち着いているわけでもないわ」
「でも似ているよ。なんとなく、だけどね」
 もう一度そういうと、龍一は黙る。
「なんとなくね」
 最後の一口を飲み込むと、
「なら、龍一もなんとなく似ているわ。あの二人に」
「え、なんで?」
「特に、マオにね」
「なんで!」
 沙耶は微笑んで
「さぁ、なんででしょう?」
 それだけいうと少しだけ歩くスピードを速くした。
「沙耶?」
 沙耶は微笑んだまま、黙っていた。
 それを見て、龍一も結局ため息をついて追求するのをやめた。

「それにしてもよく非番の日に会いますね、小鳥遊さん?」
「別に貴方をつけているわけじゃないわよ、笹倉さん」
 二人の横を、そんなやりとりをしている男女が通り過ぎた。

「暑いね」
「でも、さっきよりは涼しいわ。早く戻りましょう。円姉とか遅いとかいって怒りそう」
「円さんなら、大丈夫だよ。煙草があるなら」
「ああ、そうね」
 そういって沙耶はくすくす笑った。



「あたしが何かをして、貴方が怒って離れていっても、またすぐに心配して戻ってきてくれるところ、とかね」
 声にはしないで、口の中で言葉を転がした。
    00:33 | Top

34/さぁ、一勝負(四月一日→沙耶・龍一)

 非番の日。
 妻とは3年程前に死別したし、一人娘は成人して会社の近くで一人暮らしをしている。
 よって、非番とはいえ日常ためていた家事をするぐらしかない、わたしは一人町をうろうろしていた。
 わざわざ都内まで足を伸ばしたのに、特にすることもない。
 そこで、たまたま見つけた将棋クラブにふらりと足を踏み入れた。
 そう、暇だったからだ。
 将棋は仕事が生きがいのわたしにとって唯一の趣味といえる。
 しかし、この将棋クラブで暇を潰せたかといわれたら、まったく潰せないわけで、わたしの他に客が一人も居ないこの店で、店主と二人で他愛も無いおしゃべりをするぐらいしかすることがない。
 正直、わたしは将棋がしたかったわけで、店主としゃべりたかったわけではない。
 そもそもわたしは無口な方だし、職業を聞かれて「鑑識だ」と答えてもなんら話は発展しないし、下手するとひかれるのだ。よって会話は弾まない。
 こんなことならば、探偵のところに行けばよかったかもしれない。
 何かと事件に巻き込まれたり、首を突っ込んできたりする探偵、名前は渋谷慎吾。
 あいつとは将棋仲間なのだ。
 そんなことを思っていると、ぎぎぃと音を立てて扉が開く。
 高校生ぐらいの男子がきょとんとした顔でこちらをみていた。
 ああ、そりゃこの閑古鳥の鳴き具合をみたらな。
「坊主、客か?」
 そう尋ねてみると、坊主は近頃の若者にしては珍しく、
「はい」
 といい返事をした。
「やっと客が来たか!」
 ばしっと、膝を叩いてみせる。
 これで退屈とはおさらばだ。
「珍しいな、高校生か?」
「ええ」
「そうか、じゃぁお相手願おうか」
「是非」
 坊主は店主に使用料を支払うと、わたしの前に座った。
 この若者がどれぐらいの腕前かしらないが、年長者の意地にかけて負けるわけには行かない。

 さぁ、一勝負!

    00:25 | Top

33/いざ、一勝負(裁判委員長→四月一日)

 おお、なんと!
 わたしは心の中で歓声をあげた。
 いつも通っている道で、いつも見慣れたビルをたまたま見上げたのは、何か予感があったからかもしれぬ。
 2階に入っているのは、将棋クラブじゃないか!
 なんだかやけに寂れたビルだが、そこがまた情緒があってよい。
 1階の暇そうな花屋の隣の階段に足をかける。
 ぎしぎし、
 なんだか気味の悪い音を立てる階段。しかし、この階段にもおんぼろビルにもなんら罪は無い。だから、彼らは悪くない。もし、悪かったとしても、将棋クラブがはいっているなんて情状酌慮の余地がある。
 そう思いながら扉を開けて、わたしは愕然とした。
 店内にいた暇そうな店主と思しき女性と
 客らしき男性一人の視線がわたしに集まった。
 ……なんと!
 客が一人しかいないとは!
 前言を撤回しよう。
 なんと罪深き店なんだ。
 極刑か!
「坊主、客か?」
 男性がそう尋ねてきた
「はい」
「やっと客が来たか!」
 男性はばしっと、膝を叩いた。
「珍しいな、高校生か?」
「ええ」
「そうか、じゃぁお相手願おうか」
「是非」
 わたしは頷き、財布から800円出すとカウンターにおき、男性の前に座った。

 いざ、一勝負!
    00:24 | Top

32/怪談(調律師→裁判委員長)

「そういえば、また、変わったんですね。2階」
 ふらりと現われた龍一が、椅子に腰掛けながら言った。
「2階? ああ。将棋クラブになってたわね」
 宣言通りに現われた彼に嗤いかけながら、円は頷いた。
 龍一はその笑みに居心地の悪さを覚え、僅かに身じろぎした。
「はい、どうぞ」
 心なしか軽い足取りで沙耶は近づくと、テーブルの上にグラスを置いた。
「ありがとう」
「ストロベリーとシャンペンで香り付けをした紅茶。水出しアイスティーよ」
「ふーん。ん、おいしい」
「よかった」
「沙耶、私にも」
 円が言葉とともに差し出してきたグラスにアイスティーを注ぐ。
「直兄と清澄は?」
「俺はいい」
「ちょっとだけ」
 清澄のグラスにも少し注ぐと、自分の分に口をつけた。
「ころころ変わりますね、2階」
 この事務所が入っている5階建てのビル。この事務所は5階にあるが、他の階のテナントはころころ変わっている。龍一が知っている限り、2階は行政書士事務所、喫茶店、何かの事務所、そして今回の将棋クラブへと変貌を遂げている。
 ちなみに、今1階は花屋、3階、4階は空き部屋になっている。
「ん〜、そうね」
 円は机の中からクッキーの缶をだすと、それをみんなに配りながら答えた。
「まぁ、一種の怪談の元ネタみたいなものね。この事務所のせいなのよ、それって」
「え?」
「怪しいでしょ、調律事務所、なんて」
 沙耶はクッキーを片手に、ブラインド越しにかすかに見える窓の文字を指さした。
「それはもう」
 龍一はここぞとばかりに頷いた。
「だからね、ほかの階にはあんまり人がいつかないのよ。お客さんが不気味がって来ないから」
「……ああ、なるほど」
 なんとなく足を踏み入れることを躊躇う気持ちはわかる。事実、龍一自身も慣れるまでここへ足を踏み入れるのを躊躇っていた。
 今ではそんなことはないが。
 もっとも、また別の意味で躊躇うときはあるが。
「ま、私たちが商売柄あやかしをひきこんじゃうときもあるし、それを見た人がこのビルは出るっていったりしてねぇ」
「大変ですね」
「……他人事みたいに言っているけど、龍一」
 沙耶はグラスを両手で抱えながら呟いた。
「貴方が霊媒体質で色々連れてくるから、っていうのもあるのよ」
 そしてそのまま、じっと彼を見る。
 正確には、彼の肩の辺りを。
「……今度はどこで何に同情してきたの?」
 低い声でそう尋ねる。
「……なんかいるの?」
 見えない代表佐野清澄が眉を思いっきりひそめてきいた。
「ああ」
 龍一を睨んでいる沙耶の代わりに直純が答えた。
「男の子、かな。3,4歳ぐらいの」
「……大方、交通事故ね」
 頬杖をついて事の成り行きを見守りながら、円も付け足した。

 龍一は少し体を後ろに引く。沙耶からそれを守るかのように。
「あ、あのさ、この子は」
「龍一」
 彼の言葉をさえぎり、沙耶は鋭く彼の名前を呼ぶ。
「霊は生きている人間を連れて行きたがるものだと、言ったはずでしょう? これで何回目? 軽々しく何かに同情するのはやめなさいと言ったでしょう? 大体、簡単だけれども祓える方法、教えたでしょう? 何か憑いているのぐらい自分でもわかるでしょう? それでやれば大体祓えるはずよ」
「でも」
「遅いのよ、何かあってからじゃ」
 唇を軽くかんで、沙耶は龍一を睨むように見つめた。
「……ごめん」
 それに耐え切れなくなって、龍一は呟いた。
 沙耶が軽く息を吐いた。
「こっちに来て」
 グラスをテーブルに置くと沙耶は手招きする。
 龍一は素直にそれに従った。
「しゃがんで」
 膝を床につける。
 龍一の頭を沙耶は軽く抱えた。
「ねぇ、痛かったよね。つらかった?」
 すぐ近く、本当に耳元で聞こえる声とか、自分の頭を撫でる腕とか、そういったものに心地よさを感じるけれども、でも、それが自分に向けられたものじゃないことを知っている。
 とても、切ない感情。
 彼女は、自分に対してはこんな行動はとらない。
「でもね、もう痛いのも辛いのも、終わったから。……うん、そうね。パパともママともしばらくお別れだけど、貴方がいい子にしていれば、迎えにきてくれるわ」
 他のメンバーは黙ってことのなりゆきを見守っている。
 直純でさえ。
 彼が目に浮かべているのは沙耶を心配している、そんな気持ちだけ。
 少しでも、自分に嫉妬していてくれればなんて、思ってしまう。そこに救いを欲しがる。
「だから、今は、もうおやすみなさい。貴方が次に目覚める時にはパパもママもきっと、そこにいるわ」
 この子をだしにしていることぐらい、自分でわかっている。
 ここに来る途中で、見つめた交差点の花束。
 そこに立っている男の子。
 彼が自分に気づいて、憑いてきたことぐらい知っている。
 それを自分からおとす方法だって聞いたから覚えている。
 それでも、そのままここに連れてきたのは沙耶が祓ってくれることを望んだからだ。少しだけでもいいから、自分のことを心配して欲しかったからだ。
 ただ、それだけ。
「うん。じゃぁ、おやすみね」
 沙耶がそう言って笑った。
 少し待ち、
「はい、終わり」
 事務的にそう告げると何の感慨も残さず彼から離れた。
 再びアイスティーに口をつける。
「どうも」
 龍一もそれだけいうと立ち上がり、再び元の椅子に座った。
 一時の自分の欲求を満たしても、結局残されるのは隔たりだけ。

「今、急に思い出したんだけど」
 黙ってそれを見ていた円が唐突に言った。
「直、昔さ、変な男の人みたことあったわよね?」
「変な?」
「ほら、すごく小さかったころ。あんたと二人で土手を歩いてたら、男の人と女の人が前からやってきて……、そう、その人には魂がなかった」
 直純は視線を一瞬上にやり、
「ああ、思い出した」
 すぐにそう言った。
「俺はやめようって言ったのに円がその人に、貴方は何? とか聞いたときだろ」
「そんなことしたのっ?」
 非難を込めて沙耶が言う。
「危害を加えられでもしたらどうしたんですか?」
 龍一にまでも責められて、円は肩をすくめた。
「昔は自分の力が絶大だと思っているお嬢様だったからどうにでもなると思ってたのよ。今考えるとすっごい危なかったけど」
「そうだったんですか?」
「ええ。昔の私はかなり嫌な奴だった」
「ああ」
 円の言葉に1歳違いの従弟は思いっきり頷いた。
「ちなみにこいつは私の影に隠れてびくびくしているような子どもだったわ」
 そういって円は従弟を指す。直純は肩をすくめた。従姉と同じように。
「それで、その人は?」
「さぁ、本人は人間だって言っていたけれども……もし、人間として暮らそうとしている人だったら、悪いことしたかもね」
 そういって、グラスを手に取る。
「でもね、多分あの人は今でも元気に暮らしているわ。そんな気がする。人間だろうとなかろうと、魂があろうとなかろうと、きっとそんなことあの人には些末だったのよ。今思うとね、少し沙耶に似ている」
「あたしに?」
 沙耶は首を傾げる。
「小さなときの記憶だから、あれだけど。地上に降りてきて、みんなが自分の絶大なる力に恐れをなして近寄ってこなくて、それに涙している神様みたいな人だった。寂しくて寂しくて本当はしょうがないんだけど、
それは言わないでただ自分の仕事をこなすの。自分の力とかそういったもの、本当は捨てたいのだけれども、それで得た大切なものもあるから、捨てられない。あの人は、そんな顔をしていた」
「……円姉はあたしのこと、そんな風に見てたわけ?」
 自分の姉のような人間の、審美眼は殆ど間違わないことを沙耶は知っていて、それでいて、だからこそ、そう問い掛けた。
 それはなんだか、かいかぶりのような気がしたのだ。
 自分はそんなに綺麗に生きては居ない。
「ええ」
 そういって円は軽く微笑んだ。
 そして、絶大なる自信を持って、付け加えた。
「信念のある強い人間だと誉めているのよ、きっとね」
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